経営者対談

株式会社てっぺん 代表取締役
和田裕直×ワクセル

2003年に設立された株式会社てっぺんは、渋谷や中目黒で鉄板・焼鳥居酒屋『てっぺん』を運営しています。
てっぺんで毎日行われる朝礼は名物となっており、そのノウハウを生かした研修事業を手掛けているのも特徴的です。

今回のゲストは、同社に入社してわずか6年で代表取締役に就任した和田裕直(わだひろなお)さんです。

和田さんは1987年に長野県で生まれ、2007年にエコール辻調理師専門学校に入学しました。卒業後はフランスの三ツ星レストランで修行をされました。

ワクセル総合プロデューサーの住谷とメディアマネージャーの三木がMCとして、和田さんが株式会社てっぺんに入社した経緯や、人を育てる極意などをお聞きしました。

父が叶えられなかった夢を引き継ぐ

住谷: まず和田さんが飲食業を選んだ理由をうかがいたいです。

和田: 父から言われた言葉がきっかけでした。
僕の父は建築会社の専務をしていて、ゆくゆくは会社を継ぐだろうと言われていたのですが、その会社の社長が婿を取り社長に就かせたので、父は社長になれなかったんです。

当時僕は中学2年生で、バスケの大会終わりに父が運転する車の中で「俺は社長になる夢を諦めた男だから、お前は夢を叶えなさい」って言われて、それから父が叶えられなかった「社長になる」が自分の夢になりました。

そして、一番手っ取り早く社長に登り詰める方法を考えた結果が料理だったんです。

住谷: 社長になるために飲食業界に入られたんですね。

フランス料理の修行をされていたのに、『てっぺん』に入社されたのはなぜでしょうか?

和田: フランスから帰ってきて恵比寿のレストランで働いていたのですが、そこのシェフが独立することになり、ついていくことにしたんです。
お店ができるまでの3か月間ほどアルバイトをして待つことになったんですが、その間に自分の誕生日を迎えたんですよね。そのお祝いに、知り合いが連れて行ってくれたのが『てっぺん』で、そこで人生が変わるくらいの衝撃を受けました。

三木: どのような衝撃を受けたんですか?

衝撃と憧れを感じた「てっぺん」との出会い

和田: スタッフみんなが輝いていたんです。
てっぺんのスタッフはみんなお客さんの顔を見て仕事をしていて、その姿を見て自分は切り付けが合っているか、接客に問題がないかなど、シェフの顔を見て仕事をしていたことに気づきました。
衝撃と憧れを感じて、その日にここで働くと決めましたね。

住谷: その日に!?
フランス料理から居酒屋に転向することに抵抗はありませんでしたか?

和田: 親戚には反対されましたね。
例えが悪いですけど、その当時の居酒屋はどこにも就職できない人が働くというイメージがあったので、「せっかくフランスまで行って、居酒屋で働くなんて」と言われました。
でも最終的には両親が、背中を押してくれました。

住谷: 和田さんはスタッフの働きぶりに人生が変えられるほどの衝撃を受けていますが、てっぺんではどのようなモットーを持って営業されているんですか?

和田: てっぺんが提供する価値は、「どれだけ人の欲求を満たし、貢献できているか」と定義付けています。
目の前にいる人のどんな欲求を満たせるのか、どんな貢献ができるのか、常に意識して営業するようにしています。

住谷: その意識を持つために工夫されていることはありますか?

和田: 人材教育についての話になりますが、僕は「自分で決める」ことを大切にしています。

例えば子供の頃、親から無理矢理行かされていた習い事って続かないけれど、自分でやりたいと思って始めた習い事は続くし、一生懸命練習しますよね。
それって自分で決めているから、言い訳ができないことが大きいと思うんです。
だからこそ、うちの会社でも「自分で決める」という意識をみんなが持っています。

住谷: 会社員の経験を経て思うんですが、言われたことをやる人の方が圧倒的に多く、自分で決めるってなかなかできることではないと思うんです。
どうやってみんな自分で決められるようになるんでしょうか?

安易に納得しないからこそメンバーと喧嘩

和田: 「安易に納得はするな」と伝えています。
最近、僕も色んな店長と喧嘩するようになったんですけど、それって僕が言ったことに対して安易に納得していないってことだから、嬉しいんですよね。
納得もしてないのに「やります」って言うから愚痴や不満が増えると思うので、その人が「よしやるぞ」と決めるまで徹底的に話し合うことが大切だと思っています。

住谷: たしかに言われるがままで、納得しないまま行動すると続かないですよね。

和田: 実はうちの会社は入社も自分で決めさせるので、採用に対して合否をつけていません。
3時間くらいかけて入社希望者と面接するんですが、その時間の8割は「君はうちでは難しいよ」って話をしています。

三木: 3時間も!?
しかもはっきり難しいと伝えるんですね。

和田: 入社するということは会社に命を使ってもらうということなので、そのメンバーと共に自分も命を張れるのかを考えると最低3時間はかかるんです。
思い切り向き合って、残りの2割の時間はこの会社に入ったらどんな未来が待っているのか、人生がどう変わっていくのかについて話します。

そして最後に朝礼を受けてもらって、やるかやらないかを自分で決めて、後日僕に連絡してもらうようにしています。

住谷: 自分で決めて働いているから、みなさんイキイキとされているんですね。
和田さんはてっぺんに入社されて1年で総料理長になり、そこから6年後には取締役になっていますが、通常では考えられないスピードだと思います。

責任は自分から掴み取るもの

和田: 責任って「取らされる」と考える人が多いと思うんですけど、うちの会社では責任は「自分から掴み取るもの」という考えが浸透しています。
その考え方はてっぺんの創業者である大嶋会長の時代からあったので、僕もどうせやるなら料理長より総料理長だなと思って役職を取りにいったんです。

三木: 役職を前のめりに取りにいったんですね。
そういう前のめりさが伝染していくんでしょうね。

和田: ただ僕が社長になった1年目は本当にポンコツでした。
リーダーには、コントロール型とメンター型の2種類あると言われていて、コントロール型は権限や威圧、立場などを使って強制的に人を動かすのですが、メンバーのエネルギー持続性が低い。
メンター型は、尊敬と憧れを使って人を動かすので、永続力のあるエネルギーが生まれます。

大嶋会長はまさにメンター型なんですけど、僕は完全にコントロール型でみんなを支配しようとしていました。

住谷: 今では想像がつきませんね。
コントロール型からメンター型に変えられたんですね。

和田: 人生が変わるきっかけがあったんです。

ある一人の女性店長に「和田が言っていることが正しいことはわかる。だけど怖いという感情が一番に来て、何も入ってこなくなる。もう辞めたい」って言われて、これは自分が変わらないといけないと気づきました。

その日から「感情であたらない」「不機嫌な顔を絶対に見せない」「誰もが笑えない時に誰よりも笑えるリーダーになる」と3つの誓いを立てたんです。
そして自分を変えてから、見る見るうちに業績が上がっていきました。

三木: その女性店長は辞めずに残られたんですか?

和田: 今年結婚を機に退職しましたが、自分の務めを全うして次のメンバーに託していってくれました。

時代を生き続けるために自分を変異させる

三木: 家族みたいですね。
和田さんはどういう人と仕事をしたいと思うんですか?

和田: 僕はヘッドハンティングをすることもよくあるんですが、誘うメンバーとは必ず夢を語っていますね。

夢を語った時に、この人となら面白い人生になるんじゃないかと感じて声をかけるんです。

住谷: 僕は会社員をしている時に夢を語ることなんてありませんでした。
大人になってからも夢を語り合えるって素敵ですね。
和田さんの夢を聞いてみたいです。

和田: 夢って誰かから引き継がれていくものだと感じていて、僕は社長にはなれましたけど、まだまだ大嶋会長の夢の途中にいると思っています。

僕の今の夢は、日本に貢献できる人を育て続けることなんです。
一国一城って言葉がありますけど、百国百城というビジョンを持って、てっぺんを中心に、つながりのある社長を100人育てたいですね。
ようやく今年その第1号のメンバーが出ました。

住谷: このトークセッションを聞いている人は20代、30代の方も多いと思いますので、夢を達成するために大事にしていることなど、メッセージをお願いします。

和田: 今、コロナもありとんでもない時代になったと感じているんですが、こういう時代を生きる20代、30代の人こそ変異していくことが必要だと思います。
てっぺんは創業19年目になるんですが、これからも在り続けるために変えるべきことはバンバン変えていこうと思っています。

みなさんもこのタイミングで何かに挑戦して自分を変異させ、40代、50代になった時には日本の経済を牽引するリーダーになっていてほしいですね。

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