日本と台湾をつなげる架け橋に。サイコロの目から始まった起業物語

御堂 裕実子

御堂 裕実子

アイキャッチ画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_ 御堂裕美子さん - コピー

合同会社ファブリッジ代表の御堂裕実子さんは、日本企業の台湾進出のサポートや、日本と台湾の企業間マッチングなどを行っています。日本と台湾の架け橋になるため奔走する御堂さんに、台湾の魅力や日本との違い、日本と台湾のつながりをより強固にしていくためのビジョンを伺いました。

偶然行った台湾で人の温かさに触れた

見出し1画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_ 御堂裕美子さん

学生時代から海外旅行が好きで、社会人になってからもいつか日本と海外をつなげられるような仕事がしたいと思っていました。たまたま1週間ほどの長期休みが取れたときにどこか海外に行きたいと思いましたが、行き先は決めていませんでした。

どうやって行き先を決めたかというと、サイコロ型の消しゴムの各面に行ったことがない国を思い付くままに書き、振って出た目に書かれた場所に行くことにしました。そのときに出たのが台湾だったんです。

実際に行ってみると台湾は非常に親日で、田舎の大学に訪れた時は、日本語を学ぶ学生たちに熱烈な大歓迎を受けました。目を輝かせて熱心に日本語を勉強していました。日本語ガイドブックを片手に困っているとカタコトの日本語で話しかけてくれたり、道を歩けば日本のテレビ番組が流れていたり、日本文化であふれていました。

台湾の方は日本のことが大好きなのに、日本人はあまり台湾のことを知らない“片想い”状態だなと実感しました。「両想いになるきっかけをつくれたらいいな」と思いながら帰国しました。そこから日本と台湾をつなぐ仕事がしたいと考え、当時の会社を辞めて台湾に留学を決意しました。

台湾では日本語教師をしながら、中国語を勉強し、日本企業と台湾企業をマッチングするコンサルティング会社でアルバイトもしていました。その後に帰国しましたが、その当時日本には台湾と日本をつなぐような会社がありませんでした。無いなら作るしかない!ということで合同会社ファブリッジを設立しました。

200社を超える日本企業の台湾進出支援をする中で、見えて来たものがあります。台湾には日本の文化や食習慣を受け入れる土台ができているので、海外進出のファーストステップとして、他国と比べるとハードルが低くなっています。

台湾の人口は約2,330万人なので、市場性が高いというわけではありません。台湾進出をファーストステップにして、別の国へ進出する準備を進めることができるのがメリットですね。また、台湾ではクラウドファンディングが定着しているので、スタートアップでクラウドファンディングを検討している企業は、台湾にアプローチするのも有効な手段だと思います。

日本企業の台湾への進出事例としては、モスバーガーのフランチャイズ権を台湾企業が取得して、今では中国の厦門や東南アジアにも拡大しています。

また明光義塾を運営する明光ネットワークジャパンは、台湾の中小塾6社と台湾教科書会社が手を組み合弁会社を設立し、明光義塾運営のマスターフランチャイズ権を得て、2022年時点で109校にまで成長してきました。

台湾と日本の根本的な違いとは?

見出し2画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_ 御堂裕美子さん

台湾と日本の違いはたくさんありますが、私がビジネスをしていて最も感じるのは『スピード』と『合理性』ですね。

台湾企業はトップダウン式が主流なので、社長がやろうと決めたらすぐに担当者が付いて話が進みます。日本企業側は社長同士が話していても、「持ち帰って検討します」というように決まらずに延びて行くことが多々あります。

合理性で言えば、会議にその特徴を見ることができます。日本だと会議のための資料をつくりますが、台湾だと資料は不要だと考えています。日本だと会議の開始時間は守りますが、ダラダラ続いて、終了時間をオーバーすることが多いと思います。台湾では報告と今後の動きを話して、何か意見があれば聞いて終了という流れで、非常にシンプルです。

男女平等という概念は台湾の方が進んでいて、女性優位な社会だと感じます。現在の台湾の総統は、台湾初の女性総統の蔡英文(さいえいぶん)氏です。日本における女性の社会進出のモデルとなるのではないでしょうか。

教育についても考え方が大きく異なります。日本は海外に出なくても危機感なく一生を日本で生活することができます。しかし、台湾内だけではビジネス規模が小さいため、事業を拡大するには海外との取引が不可欠です。中国の脅威も常に感じています。いつでもグローバルな視点が念頭にあるんです。

そういった背景から台湾は英語などの語学教育にも力を入れています。自分の子供を海外の大学に留学させて、そのまま海外で働く方もとても多いです。海外生活拠点をつくり、親は台湾で何かが起きたら、いつでも海外にいる子どものところに行けるようにしています。

2023年1月に『成長戦略は台湾に学べ 日本人が知らない隣人の実力』という著書を出しました。台湾の経済やビジネスのことだけでなく、台湾と日本の習慣の違いや、働き方、漢方や女性の産後ケアのことなどさまざまな角度から台湾の魅力を紹介しています。

今まで以上に台湾の魅力を伝えたい

見出し3画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_ 御堂裕美子さん

新型コロナウイルスの流行前で、日本から台湾への旅行者は年間250万人程度と日本人の20人に1人が台湾に行っている計算になります。反対に台湾からは480万人近く来日しており、台湾人の5人に1人の割合です。数値的に見ても親日の国ということがわかります。まだまだ台湾の片思い状態です。

もともと私が起業したきっかけは、「日本と台湾を両想いにしたい」と思ったことでした。今は企業間のマッチングの他に、台湾の国や自治体レベルでのプロモーションのお手伝いもさせていただいており、ビジネス上はかなり両想いに近づいていると感じます。

もっと民間レベルで親密になったらいいなと思い、私の出身校である明治学院大学で海外インターンシッププログラムを始めました。学生が3週間ほど台湾に行って、語学を学びながらビジネスを学ぶ機会をつくっています。私の母校の高校でも毎年10名を私の留学先だった大学と交換留学を行っています。

台湾に行った学生はみんな、私が台湾に初めて行ったときと同じように台湾の大ファンになって帰ってきます。日本に帰って来てからも台湾の学生との交流は続いているのを聞くと、私がやりたい両想いはこういうことだなと実感します。人と人と交流をもっと増やしていきたいです。

著者をもっと知りたい方はこちら