もたざる者

和嶋 俊光

和嶋 俊光

2026.04.07
column_top_(Wajima Toshimitsu)

元プロボクサーで、現在は『脳機能改善ストレッチ』で経営者やアスリートをサポートしている和嶋俊光(わじま としみつ)さんの連載コラムです。何も持っていないことは、不利なのか。それとも武器なのか。貧乏、家庭環境、選べない現実。普通とは違う環境の中で育ったからこそ見えたものがある。“もたざる者”として生きた原点を綴っていただきました。


それが普通だと思っていた

正直、当時はしんどいと思ったことはなかった。

なぜなら、他の家庭を知らなかったから。

それが“普通”だと思っていた。

父親の怒号。
ガラスや鏡が割れる音。
母親の悲鳴。

それが、どこの家でも起きている
“よくある夫婦喧嘩”だと思っていた。

疑うことすらなかった。

家は貧乏だった。

でも、それも特別なことじゃない。
それが当たり前の生活だった。

だから、小学校3年生の頃には
新聞配達のバイトをしていた。

毎日配ると、月に1万2000円ぐらいになる。

そのうち2000円だけを自分の小遣いにして、
残りの1万円は家に入れる。

それも当たり前だった。

「偉い」と言われたことはない。
「大変だね」と言われたこともない。

だって、それが普通だったから。


13歳、一家の稼ぎ頭になるという選択

見出し2画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_和嶋俊光さん

中学に入って、その“普通”は大きく変わる。

父親が、いろいろあって逮捕された。

気づけば、
母親と3人兄弟の4人家族。

そして自分は、
一家の稼ぎ頭のひとりになっていた。

家賃は5万円の借家。

その5万円は、
自分がアルバイトで稼いでいた。

当時の時給は680円が相場。

その中で、
700円のバイトを必死に探したのを覚えている。

少しでも高いところで働く。
それがそのまま生活に直結するから。

22時までしか働けない。

その中で5万円以上を稼ぐには、
ほぼ毎日働くしかない。

学校が終わったら、そのままバイト。

休むという選択肢はなかった。

やらなきゃ、生活が回らない。

ただそれだけ。


失うものがないから、すべてを賭ける

見出し3画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_和嶋俊光さん

今思えば、
この時に完全に決まったと思う。

“自分の人生は、自分でなんとかする”

誰かが助けてくれるわけじゃない。
環境が整うのを待つ余裕もない。

だったら、自分でやるしかない。

もたざる者には、
最初から“守るもの”がない。

だからこそ、全部を賭けられる。

普通の人は、失うことを恐れる。

でもこっちは違う。

そもそも、失うものがない。

だから踏み込める。

やるか、やるか。この感覚が、
この先の人生すべてのベースになっていった。

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