現役サッカー選手からクラブの代表取締役社長へ就任「60人の人生を背負う」

ワクセル編集部

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アイキャッチ画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_渡部博文

山口県をホームタウンとするプロサッカークラブ『レノファ山口FC』で、プロサッカー選手として活躍していた渡部博文さん。2022年10月に現役を引退し、その後同クラブの代表取締役社長に就任しました。現役選手が引退後すぐにクラブの幹部に就任するのは、日本サッカーの歴史のなかでも異例の出来事。前例のない挑戦をする渡部さんに、これまでの経緯を語っていただきます。

小学生の時に「サッカー選手になる」と決めた

見出し1画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_渡部博文さん

私は現在、山口県を本拠地に置く『レノファ山口FC』というプロサッカークラブで代表取締役社長をしています。その前は、プロサッカー選手として13年間活動していました。

私がサッカーをはじめたのは小学校2年生のときです。当時は野球にも興味があったのですが、5歳年上の姉から「これからはサッカーの時代がくるからサッカーにしなさい」といわれて、サッカーを選びました。

初めてプロサッカーの試合を見たときは、身体中に衝撃が走りましたね。それは『モンテディオ山形 vs 浦和レッズ』の試合でした。初めての体験でとても興奮したのを覚えています。その時、夢ノートに「サッカー選手になる」と書きました。

私は身長が186㎝と高いため、動きが鈍いという弱点があります。それを改善するために、小さな頃から、自主練でいろいろなトレーニングをしていました。それはプロになるための身体づくりに大いに役立ったと感じています。

「どうしたらプロになれますか?」という質問をいただくこともあるのですが、その答えは「決めたから」です。「なりたいな〜」ではなく、「なる」と決める。私は小学生のときに「サッカー選手になる」と決めたからプロになれたのだと思います。

引退報告で「社長にならないか?」と誘われる

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去年の5月頃から目に違和感がありました。ヘディングなどの脳震とうの影響で、脳に障がいが残り、視界が二重に見えるようになってしまったんです。そのためボールがダブって見えるようになり、引退を考えるようになりました。そして2022年10月23日の試合を最後に、私の13年間のプロサッカー選手人生は幕を閉じました。

引退を発表したのは、前月の9月です。発表してから一週間後に前社長に引退報告に行き、そのときに「社長をやりませんか?」と声を掛けていただきました。まさに寝耳に水という感じで「え?本当ですか?」というのが、最初の返答です。

そこから「今クラブの財政はこんな感じで、いずれはこうしたい」というプレゼンを受けました。そこで「これならいけるかも知れない」という漠然としたイメージが湧いたんです。その後、だんだんと「やってみたい」と思うようになり、代表取締役社長に就任しました。

Jリーグには、現在57クラブがあります。その中にある1つのクラブの社長をさせてもらえる機会は、めったにありません。就任してからは、本当に新鮮なことばかりです。また運営側に入ることで選手時代には見えなかった、たくさんのパートナー企業やスポンサー、サポーターがいるのが分かりました。本当に多くの方に支えられているのだと肌で感じたのは、心から良かったと思っています。

『レノファ山口』をJ1に定着させたい

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今は、どのような環境で選手や現場が成り立っているのか、サポーターとどのようにかかわっているのかを、理解しようとしているところです。知らないことが多すぎるので、まずはきちんと全体を把握し、そのうえで合理的な判断ができるように、いろいろとインプットをしている段階です。

これまでは選手という立場で社員のような役割でしたが、今は「60人の人生を背負っている」という覚悟があります。選手の苦労に寄り添うことはもちろんですが、それだけではなく、社員の生活がかかっていることを念頭に置き、みんなを鼓舞しながら先頭に立って行動し続けることが自分の役目だと感じています。

まずはクラブがJ1入りし、定着することを目指しています。そのためにも売上規模を20億円にするというのがひとつの目標です。現在の売上規模は11億円なので、達成するためには『レノファ山口』だけではなく、たくさんのパートナー企業やサポーターのみなさんに、どれだけ応援してもらえるのかが鍵だと思っています。

まずはスタジアムの入場者数が平均1万人になるよう、社員一丸となってさまざまな取り組みを行う予定です。小さな子どもから高齢者まで、いろいろな方がスタジアムに集まって楽しんでもらえたらうれしいです。私もスポーツ事業は初めての試みなので、目の前の課題をコツコツとクリアし、着実に積み上げていきたいと思っています。