夜のまちと行政の架け橋に。夜のまち専門行政書士が描くビジョンとは

高村 直

高村 直

column_top_Takamura Nao

高村直(たかむらなお)さんは、五反田で10年以上風俗案内所を経営した後に、行政書士の資格を得て、風俗アダルト業界に特化した『ごたんだ行政書士事務所』を開業しました。「夜のまちと行政との架け橋」となるべく生涯をかけて活動する高村さんに、現在の活動と今後のビジョンについて伺いました。

優秀論文に選ばれ、大学院を総代で修了

見出し1画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_高村直さん_夜のまち専門行政書士

私は現在、「夜のまち専門行政書士」として、五反田で夜の業界に特化した行政書士事務所を経営しています。夜の業界に携わって20年が経ちました。

20代前半から、経営の世界に携わり、その多くの時間、歓楽街の風俗案内所を運営し、当時は夜の世界の最前線で生きていました。しかし、SNSが急速に発展した影響で案内所の利用が減少し、このビジネスが下火になってくることは目に見えていました。

今は亡き恩師から「次の道に進め」という助言もあり、新たなチャレンジを決意しました。どんな困難にも打ち勝っていく知識、技術、能力を身につけたいと思い、新しいビジネスを探すために大学院に入ることにしたのです。

多摩大学大学院のMBAコースで2年間学び、「歓楽街を持つ地域の安心なまちづくりモデルの創出」という論文を書きました。これが優秀論文に選ばれ、学位授与式では、50人のMBA修了者の総代に選ばれました。

夜の業界の研究をしている自分を卑下したり、人に馬鹿にされた経験もあったりして、本当にこのままでいいのか考えたこともありました。それでも、今までのキャリアから「夜の業界に貢献し、還元していきたい」という思いが打ち勝ち、私の人生のテーマとなった論文が生まれたのです。

市民と行政の架け橋になる「街の法律家」

見出し2画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_高村直さん_希少なスペシャリスト

風営法は、キャバクラなどの「飲食店」と、デリヘルなどの「性風俗」に大別されます。「飲食店」に強い行政書士は多いものの、「性風俗」に特化した行政書士は少なく、私はその希少なスペシャリストです。

私は夜のまちに特化した行政書士として、クライアントの95%以上が夜の事業者です。専門性を高めることで、仕事をこなすたびにスキルが向上し、口コミでの評判も広がっています。その結果、依頼が増えて単価も上がり、効率的に仕事が進んでいます。

特に依頼が多いのは、アダルト動画の配信に関する手続きです。コロナ禍の影響で、アダルト動画の配信を始める方が増えましたが、性的コンテンツを配信するには警察への届出が必要です。この手続きの専門性を頼られ、全国から多くの方が相談に訪れます。私は過去3年間で450件以上の案件を担当し、圧倒的なシェアを誇っています。

行政書士は、市民と行政の間に立って手続きを代行する「街の法律家」とも呼ばれます。以前経営していた夜遊び情報館では、客引きやボッタクリからお客様を守ることが使命でした。これもまた、地域社会をより良くするための活動の一環です。

さらに、夜の業界で働く人たちと共に、タバコのゴミ拾いや客引きを無くす運動を行い、行政に訴えてきました。区役所や町の議員と連携し、私の思いに賛同してくれる方々が増えています。目に見える資本だけでなく、信頼資本や関係資本、評判資本といった無形の資本が基盤となり、徐々にですが夜のまちの印象も変わりつつあると感じています。

毎月約150人以上が集まるイベント等も

見出し3画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_高村直さん_ごたんだ行政書士事務所

風俗案内所を手放した5年前、そして行政書士事務所を立ち上げた3年前から、私の目指すゴールは一貫して「夜のまちと行政の架け橋になること」です。コロナ禍において、夜のまちがメディアや行政から後ろめたい印象を持たれたこともありましたが、これは誤解に過ぎません。

行政が夜のまちを卑下しているわけではなく、夜のまちが果たすべき義務を十分に果たしていなかった側面もあります。このような誤解を解き、夜のまちと行政の関係を改善するために、私は風営法を専門とする行政書士として、今後も誇りを持って仕事を続けていきます。

さらに、夜のまちを変えるための活動として、2年前から風俗アダルト業界同士がつながる機会を提供するイベントを発起人として立ち上げました。このイベントには毎月約150人が参加し、税理士や弁護士などの有識者が登壇するトークセッションでは、風俗業界のインボイス問題、確定申告といった課題を取り上げています。

私一人では成し遂げられないこともありますが、生涯をかけて夜のまちと行政の架け橋としての活動を続けていきます。