発達障がいのある子供たちの支援を通して
酒井千晶さんは、日本初のユニバーサルモルックチーム『Team Kids”7”House』を立ち上げ、ユニバーサルスポーツを通して障がい有無・年齢・性別関係なく、すべての人が分け隔てなく参加できる居場所作りにも積極的に取り組んでいます。今回のコラムでは、目に見えない障がいの存在や、それを支援する活動について語っています。
皆さん、初めまして。私は障がい児通所支援事業所である放課後等デイサービスを運営しながら、ユニバーサルスポーツの普及推進にも取り組んでいる酒井と申します。ふだん、発達障がいのある子供たちの支援を通して私が見ている世界を、皆さんにもお伝えできたらと思い、コラムを書かせていただけることになりました。どうぞよろしくお願い致します。
障がいは目に見えるものだけではない
皆さんは、「障がい」と聞くとどんなイメージを思い浮かべるでしょうか?手や足に欠損のある方や、視覚、聴覚に障がいのある方、難病のある方、医療的ケアが必要な方、近年、発達障がいや神経発達症とキーワードが急速に広まっているものなど様々です。
特に近年、メディアでも少しずつ聞かれるようになってきたのではないでしょうか?これまで、目に見える障がいがクローズアップされることが多く有りましたが、一見、目に見えない障がいが沢山あることも、是非コラムをきっかけとして皆さんに知っていただきたいと思います。
さて、私がふだん仕事をしている『放課後等デイサービス』とは、児童福祉法に位置付けられた障がい福祉サービスの一つです。主に障がいのある就学児童(小学校1年生から高校3年生)が放課後や学校休業日に通所することができます。
『これって、学童と同じじゃない?』と思う方もいらっしゃるかも知れませんが、放課後等デイサービスでは、障がいのあるお子さん一人ひとりに対して個別の支援計画を立て、その支援計画に沿って専門的な知識や技術・経験を持った職員がチームを構成し、日々子供たちの支援をしていきます。
現在、私がいる放課後等デイサービスでは主に、発達障がい(神経発達症)のある子供たちが通所しています。知的障がい、自閉スペクトラム症、ADHD、限局性学習症など様々です。
厚生労働省の令和4年2月時点の統計では、日本全国の放課後等デイサービスを利用している児童は27万人弱おり、事業所数は約1万7千8百か所有ります。数字で見ると決して稀有な存在などではなく、地域の中に溶け込み、ふと周りを見渡してみると近くにあるかもしれませんよ。
多岐に渡る支援
我々の世界での「支援」は、子供たちが安全に過ごせるような環境を整備したり、一人ひとりが社会の中で心地よく生活していけるために、地域との連携を図ったり、困ったときに周囲にヘルプサインを出す練習やソーシャルスキルのトレーニング、遊びや興味の幅を広げてもらうための活動…と多岐に渡ります。
そして、子供たちだけでなく、保護者の方にも「何かをしてあげる」ということではなく、一緒になって「今日はこんなことができた!」と喜んだり、「こうしてみたら上手くいった!」と、伴走する役割を担っていると自負しています。
ですから、「うちの子、迷惑ばかりかけて申し訳ありません!」とおっしゃる保護者の方がいらっしゃいますが、そんなときは、「いえいえ、お子さんも保護者の方も、支援を受ける権利があるからここに来ていただいているんです。迷惑ではなく、当然の権利ですよ」とお話しています。「障がいがあること」が問題なのではなく、社会生活上の「障壁が沢山あること」が問題なのです。
このコラムを通して、どんな場所で、どんな子供たちがいて、どのように地域の中で活動しているのか、皆さんに知っていただくきっかけになればと思います。