映画を愛する実力派の舞台役者が明かす野望「後世にも影響を与える役者になる」
光永勇輝さんは熊本県出身で京都の大学を卒業後、役者の道に進みました。『さくらが咲く前に』『地球空洞説』『歌唱戦隊ライブレンジャー special stage』など、数々の舞台作品に出演しています。舞台役者を中心に映像やラジオドラマ、ナレーションなど多方面で活躍中の光永さんに、役者を目指すきっかけや、今後の展望についてお話を伺いました。
人生が激変するほど影響をうけた映画
小学生のころ、家族内で「映画は年に2本しか観てはいけない」というルールがありました。物事を制限されると逆にやりたくなる衝動に駆られ、映画が観たいという意欲が高まりました。実際に映画・舞台の役者を目指すきっかけとなったのは、1988年に公開されたイタリアの映画『ニュー・シネマ・パラダイス』を、高校生の時に観たことでした。
映画の内容は、中年を迎えた映画監督が自身の過去を回想する物語。それから3年間は主題歌『愛のテーマ』を聴くだけで涙が出るほど感動し、映画にのめりこみました。初めて人生に大きな影響を受けた衝撃から、「こんなに人を感動させられるものがあるのか。その一部に自分がなれたらどれだけ幸せか」と思うようになりました。
夢を追いかけたい一方、親からは猛反対。藝大を受験しましたが、実家がお寺だったこともあって、京都にあるお寺関連の大学に通うことになりました。近くに、京都撮影所があるので、映画の勉強ができるのではないかと考えていました。
音楽に興味があったこともあり、大学では音楽活動に没頭。音楽サークルに入って月に3回ライブをするくらい熱中し、映画のことはすっかり忘れていました。
その後、就職活動も比較的順調にいって、内定をもらった企業もありました。それでもふと我にかえったときに「本当に自分がやりたいのは映画だった」と思い出し、映画を仕事にする道に進むことを決意しました。
元々は映画を撮る仕事に就くことを考えていましたが、制作側としていきなり現場に入るのには怖さがあります。役者なら勉強しやすいと考え、まずは事務所に入り、京都の松竹撮影所で殺陣をやったり、水戸黄門を手掛けた監督に習う機会をいただいたりもしました。
「映画や舞台が好き」が原動力
いざ決意したものの迷いはありましたし、今でもそれはあります。今でこそ応援をしてもらっていますが、当時は親からも猛反対されていました。大学まで行かせてもらいながらも親の期待を裏切ってしまい、辛い思いをさせているかと思います。
役者を目指すと生活基盤が安定しないこともありますし、たとえば家庭を築く幸せなどを考えると、全部を叶えていくのは難しいのではないかという不安や葛藤はあります。
それでも目指し続けたいと思うのは、シンプルに映画や舞台が好きだからです。週にだいたい映画は2〜8本、舞台は1〜4本観ます。何度観ても面白いと思えます。そのなかで本当に良い作品に出会ったときは、芝居を好きで良かったなと思います。
芝居は生ものなので変わり続けますし、正解もありません。自分に出せる最適解を出すための模索が難しく感じることもありますが、だからこそやり甲斐がありますし、ちょっとした中毒状態です。感動を生み出すものの一部に、自分がなれる可能性があるのはとても魅力的です。
世の中には、映画だけでなく、音楽や芸能、山に登ったり、海の景色を見たり、感動できるものはたくさんあります。それでも僕が選んだのは役者の道なので、極めていくために続けていきたいと思います。
後世の人にも影響を与える役者になる
そんな僕がロールモデルとしている役者は、吹越満(ふきこしみつる)さんです。数多くのテレビドラマに出演されて、これまでに出会った演出家や監督さんに「一番演技がうまい役者さんは誰か」と聞いたときに、吹越さんの名前が何度かあがっています。同じ業界の人から好かれて、一目置かれる存在になることは素敵なことだと思います。
僕が目指すところは、後世に残る名作にいきつくような役者になることです。高校生の時に衝撃を受けた『ニュー・シネマ・パラダイス』は30年近く前の作品ですが、この作品のように時代に関係なく、いつまでも人に影響を与える存在に憧れています。
芝居ってとても奥が深いので、一朝一夕でできるものではありません。自分の人生を賭けてどこまでも極めていきたいですね。