就労継続支援B型事業所『アトリエSUYO』の代表が取り組む障がい者支援と環境保護

伊藤 寿佳子

伊藤 寿佳子

2023.06.14
アイキャッチ画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_伊藤寿佳子さん_アトリエSUYO(スヨ)

伊藤寿佳子さんは、一般社団法人『惣』の代表理事として、染物や織物の就労継続支援B型事業所『アトリエSUYO』の運営を行っています。また、『大阪チャチャチャバンド』を主宰し、全国のイベントでも活躍。多種多様な活動をされている伊藤さんに、活動のきっかけや今後のビジョンについて伺いました。

継続し続けたものが大切なものへ

見出し1画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_伊藤寿佳子さん_大阪チャチャチャバンド

元々は個人事業主として活動していたところから法人を複数渡り歩き、最終的に自分で法人を立ち上げました。紆余曲折あったところから、ようやく自由に気を使うことなくスタッフと協力して取り組んでいます。現在は主に障がい者の就労継続支援B型事業所『アトリエSUYO』の運営を行っており、染物・織物・音楽の3つの柱で成り立っています。

織物の会社に勤めていたときに、障がい者の親子さんが来るようになり、自分が担当するようになりました。当時、個人的にバンドをやっていたので、クリスマス会でコンサートをやったらとても喜んでもらえました。騒いでも良い音楽会が今まであまりなかったみたいで、一緒に歌ったり太鼓を叩いたりしました。それが、現在の『大阪チャチャチャバンド』の始まりです。

震災のときは、東北にある織物教室への応援としてバンドへお声がかかったり、海外で障がい者のイベントがあるときにも呼ばれたりしました。そして教室から独立し、今の就労継続支援という大阪市指定事業の社会的システムに組み込ませてもらいました。何か志があって法人化をしたというよりは、楽しんでいたら自然と今の形になった状態です。

バンドをやり始めたのはご縁が大きかったです。一緒にギターをやるって頼んだ人が、あのコータローさんでした。バンドメンバーはオーディションで選んだ人たちではなく、普通に織物の教室に通っていた子供たちと結成。特別すごい才能に恵まれていたわけではありませんでしたが、長く続けていくなかで、今となっては欠かせない存在になりました。

リーダーだった子が昨年に亡くなってしまったのですが、亡くなる前に自力では歩けない状態になっていました。その子の母親から聞いた話ですが、何よりもバンドに行けなくなったことが残念で泣いていたそうです。私としては当たり前にしていたことが、いつの間にか周りの人にとって大事な存在になっていることに気付かされました。

相手の希望を聞くことが人間関係のコツ

見出し2画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_伊藤寿佳子さん_就労継続支援事業

ようやく独立できた法人は、なんと1年目が無借金の黒字経営でした。スタッフの皆が本当に頑張ってくれた結果です。実は、うちに来てくれたスタッフはほとんどやめません。就労継続支援事業は出入りの激しい業界ですが、私の会社では学校の先生も退職をしたら再就職をしたいと言われるほどです。

織物をしたくて転職しても、障がい者の子どもたちとの活動を嫌がるかと思ったらその逆で、やりがいを感じていただいてます。障がいを持っている人たちの純粋なパワーもあります。対等な感じが良い居場所となっていると実感しました。

また、バンドがイベントに呼ばれることも多く、イベント活動が仕事の一貫となっているのも秘けつなんじゃないかとスタッフとも話をしています。

就労継続支援に関しては他と競合しないように、人がやっていないベンガラ染のようなことにあえて取り組んでいます。ビジネスを行っていくうえでの苦労はありませんが、自分が好きなことをやってきたタイプなので、自分とまったく違うタイプの人と一緒に仕事をするときはうまくいきませんでした。

人間関係で悩んでいた時、真面目に石橋叩くタイプとうまくやっていく方法は「ちゃんとミーティングをすること」だと教わりました。コミュニケーションは当たり前かもしれませんが、話す時間をすごく大切にするようにしました。

また、自分の希望だけを伝えるのではなく、相手が何を希望しているか聞きました。すると、自分のためというより、会社のためとなる内容ばかりでした。

希望をすべてかなえられるわけではないですが、「希望を聞いた」という時点で味方になります。自分が苦手としていた石橋を叩くタイプにも、自分の意見が理論的に納得いかないことだとしても、お互いがうまく回る体制が築けました。変な敵がいなくなって、みんながすごい力を出してくれる体制になったことが本当に有難かったです。

「大阪のおばちゃんパワー」で良いことを発信

見出し3画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_伊藤寿佳子さん_日本の自然環境保護活動

立ち上げた法人の定款には、「日本の自然環境保護」を入れています。私が住んでいる大阪は緑もないような場所ですが、尼崎の中学生が作った自然環境団体の活動を支援しています。彼らの活動は素晴らしいのに伝える能力がないため、代わりに“大阪のおばちゃん”が発信しているんです。

私からしたら、言いたいことをすぐ隣の人とか知り合いに言うのは当たり前ですが、東京の人や兵庫の人は違います。良い活動をしているのに発信できていないことにびっくりして、私たちで広めたら一気に会員が2,000人増えました。

日本の環境を守るには森林を守る必要があります。ヨーロッパは自然環境保護が進んでいますが、それはもう手遅れで絶滅している動物も多いからです。日本には、ツキノワグマがまだ生きています。自然も水も豊富な国の環境保護を怠らずに、多くの人が知ることに価値があります。

このまま環境問題が進めば、10年後には他国から水を買わなければならなくなります。世界で水が飲めるのは十二カ国しかなく、アジアでは日本だけです。染色でもゼロウェイストを心がけ、捨てることをできるだけなくして、無駄のないものづくりをしています。

世の中にはこんな大事なことをまだまだ知らない人がいっぱいいます。伝えるのがちょっと苦手な人がいたら、大阪のおばちゃんの出番ですね!