『トクさんTV』でも紹介!名古屋の野球ユニフォーム専門メーカー・エイビス代表に聞いた事業継承にまつわるエピソード

伊藤 文典

伊藤 文典

2022.10.03
アイキャッチ画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_伊藤文典さん_プロフィール

伊藤文典さんは、祖父の代から続く株式会社エイビスに27歳で入社。営業として活躍した後、家族間の事業承継で紆余曲折を経て、10年後に父から代表を引き継ぎました。野球ユニフォーム専門メーカーとして名高いエイビスは、『関東エイビスリーグ』の開催や、野球YouTuber『トクさんTV』に紹介されたりと、幅広く活躍しています。そんなエイビスの”ひげ社長”として愛される伊藤さんに、事業承継のいきさつや、今後のビジョンなどを伺いました。

事業承継で父・兄・自分の三つ巴

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子供の頃から、父の会社を引き継ぐものだと言われて育ってきました。小学校の文集では、「打倒MIZUNO」なんて書いていましたね。ただ、伊藤家の次男だったので、父の会社に関わることはあっても、継ぐ気はありませんでした。父も自分には継がせないと言っていましたし、結婚する時に妻へも「自分は継がない」と話していました。

何年間かは親に奉公するのが筋だと思って、27歳に親の会社である株式会社エイビスに入社しました。実は、入社当時には「10年したら別の道に進もう」と考えていました。37歳で自分の道を見つけることを意識して、社員とも距離をおき、経営層に関わらず、営業一辺倒でしたね。10年経って初めて父に退社の意向を伝えた時に、「お前が会社を継ぐんだ」と父から言われました。

ここで三つ巴です。

・父は私に会社を継がせたい
・兄は会社の代表になりたい
・私は継ぐ気はない

兄は優しくて真面目で、波風立てないタイプ。ただ、従業員は自分についてきていました。三つ巴の状態で、経営者が誰なのかわからない状態が半年以上も続きました。指示系統がバラバラなので従業員も混乱状態。経営陣が会社の足を引っ張るわけにはいかないので、自分が父の意思を継ぐと決意しました。

代表になる条件として提示したのは「父が兄を放出するなら」でした。兄弟で経営がコロコロ変わることは会社の方針がブレることになります。父は兄をかわいがっていましたが、兄が「自分が会社を継ぐ!」話しても、父は私を代表にする意思は固かったのです。

会社を継がないと伝えていた妻には土下座して「仕事をやめて一緒に働いてほしい。私の片腕になってほしい」と伝えました。そこから、今まで9年間ずっと一緒に頑張っています。

30対0で負けてる試合の監督を任された気持ち

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私が代表になる前の数年間、経営権が1本化していないことから売上が下降気味でした。兄は代表権を持たない社長、私は代表権を持った社長。資金繰りも任されるようになりました。

父が引退すると、父の時代にいた社員が次々と辞めていきました。正直不安にかられましたが、他の経営者の方々と相談していくなかで、「改革が進んでいる証拠だ」と言われました。そのあたりから「親の会社を守っていく」というところから「自分の会社を経営していく」という気持ちに、徐々にシフトしていきましたね。

社長になって3年がたったある日、「兄を戻してくれ」と父から言われ、元社長の兄が平社員として入社。ところが入社6年後に兄は自分から退社をしました。そのことをきっかけに、逆に会社を変えるチャンスだと思い、初めて私自ら採用活動をはじめました。

取引先の従業員にお声がけをして、その方が今は工場長として活躍しています。また、工場長から「自分の部下を入れてほしい」と紹介してもらい採用したところ、今や営業のトップにまで成長しています。そうやって体制を整え、「さあ、今から改革するぞ!」となった矢先に、コロナが流行りだしました。

事業を継承した当初から悪戦苦闘を繰り返していて、たとえて言うのであれば「30対0で負けてる試合の監督を任された」ような気持ちです(笑) それでも私の性格上、順風満帆なら社長にはなっていなかったと思います。こんな私を信じて、人生を私に託してきてくれた人たちに応えていくぞという思いで、常に前を向いて進んでいくことができています。

目の前にいる人を「ただ笑わせたい」

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心掛けてきたのは目の前にいる方を「ただ笑わせたい」ということです。そして、「お前がいてよかった」と、出会えたことを喜んでもらえるような人間になりたいと思います。

これからチャレンジをする人には、諦めなければ方法がきっと見つかることを伝えたいです。たとえば会社の課題に直面したときには、補助金を得ることによって新しいサービスが展開できるようになりました。

「効率化」が重視される昨今、大手でもやらないことが増えてきています。私たちは既製品を作るのではなく、チームにとって、その人にとって価値のあるもの、「世界にひとつだけのオリジナルウェア」を作っていきたいと思います。効率化にデジタルは割けて通れませんが、だからこそ人と人の接点をサポートしていけるような仕事をしていきたいです。

そして、目の前にいる人を幸せにすることが私のゴールだと思っています。社長としては失格かもしれませんが、「こんな会社があってくれてよかった」と思ってくれる人がひとりでもいたら幸せです。杓子定規でドライな仕組みばかりではなく、泥臭く暑苦しくてもいいじゃないか。そんな思いを大事にしていきたいです。

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