飯髙 裕子
ビューティータッチセラピスト

グルテンフリーのお菓子づくりをされている飯髙裕子(いいだかひろこ)さんの連載コラム第4弾です。アレルギー体質として生まれ、薬にも頼れなかった。そんな自分の身体と向き合う中でわかってきたのは、「心と腸の深いつながり」でした。今回は、お菓子作りの失敗からも学ばれた体験を交えて綴っていただきました。

それは、小さな勘違いだった。
材料を全部計量し、混ぜてから気づいたのだ。
油の量が違う…
お菓子を作る際に材料の計量は重要なポイントである。その数グラムの差が出来上がりを左右するからである。
どうしよう…心の中でもう一人の私がつぶやく。
やり直す?いや、これは試作だ。分量の違いがどう左右するかを確かめなければ。
そうはいってもオーブンに入れるまでの作業が少し緊張する。
分量を書き留めたメモを見間違えるなんて。ありえない失敗に落ち込む気持ちと、これがどう転ぶかへの期待がないまぜになる。オーブンに入れた型の中の生地はゆっくりと膨らんできている。
セットした時間が来て扉を開けると…そこには私が今まで自分の焼いたシフォンで見たことのない形が見えたのだった。
「花割れ」とは、シフォンケーキを焼き上げたときにできる表面が花が咲いたように割れて広がる現象である。
実を言うと、私は今まで、シフォンを焼いてそんな景色は見たことがなかった。
私には無縁のものだと半ばあきらめていた感もあった。
それが、である。
レシピ本や動画でキラキラとしている花割れが目の前にあった。
何が起きたのかよくわからないまま、型をオーブンから取り出し逆さまにする。
1時間ほどして冷めたケーキを型から外すと、焼き上がったときの形そのままに、試作のお食事シフォンが微笑んでいた。
けれど、問題が一つ。
この形ホールではすごい存在感だけど、包装するのにちょっと困る…

さてどうしたものか。
まずは、試作のシフォンの食感を確かめるところから取り掛かる。
お食事シフォンは、甘いシフォンケーキのふわふわで軽く、でも米粉のしっとりとした食感を生かしつつ、パンのもちもちした重さを軽減し、2,3日経ってもそのままでおいしく食べられる新食感を目指したものだった。
ケーキとパンのいいとこ取りを目指して試作をしたので結果的にそれは十分成功だった。トースターで表面をこんがり焼きバターをつけるとほんのり甘さのある朝食にも軽食にもなるまさにお食事シフォンだった。
このシフォンは、甘いケーキのシフォンと違って米粉だけではなく他の粉をブレンドしている。さらに、油の量を増やしお砂糖を少なくし、生地の重量感と香ばしさで食べ応えを付随させたのである。
この黄金比を見つけるために、試作を繰り返すのは、購入したお客様の笑顔が見たいからなのであるが、それと同時に、私自身のこだわりもまたそれを後押ししているのである。
それは、米粉のお菓子を小麦粉の代用ではなく、米粉の良さを生かした独自のものとして提供したいと思っていることである。
小麦を使ったお菓子やパンに慣れている私自身、同じものを米粉で作った時に小麦粉と同じような食感や特徴をそこに無意識で重ねていることに最近気づいたのである。
けれど、それはどう考えても不可能なことだった。
なぜなら、小麦粉と米粉は全く性質の異なる粉なのであるから。
そして、同じ作り方では望むようなものはできないから。
少し離れてみると、米粉を主体にしてその特徴を生かしたお菓子を作る方法はいろいろあることに気づく。
そのために米粉と他の粉をブレンドして、またはほかの材料との配合を変えて新たな食感と味わいのあるお菓子を作ることが私の目指すところなんだと改めてわかったのである。
それは、米粉のお菓子単体ではなく、おいしい飲み物や、自然の恵みである素材、そういう食材とのコラボもまた私たちの体や心を調えてくれる素敵な栄養素となるのである。

今回の試作は、以前と少し違った視点で基本の考え方はそのまま、でも、それをどんなふうに広げていくかというこれからの私の目指すお菓子の方向がまた修正された出来事であった。
小麦粉を使わないお菓子って、最初はどんな感じなのか、うまくできるのかいろいろ調べたり、試作したり、材料を変えたり今までその時間を手探りで使ってきたと思う。
それは、思うようにならなかったり、自分ではいいかなと思っても私以外の人にはそうでもなかったり。
食べ物の好みは人それぞれだから当然のことではあるのだけど。
それでも、私は自分の作るお菓子が誰かの夢につながればいいなと、いつも思っている。
食べたときに、おいしいのはもちろん、なんだか嬉しくて笑顔になる。
そんな小さな夢が叶った時の喜びにつながるようなお菓子を作りたくて、私は今日もオーブンの前に立つのである。