浜崎あゆみや倖田來未の楽曲を手掛ける作曲家がビジネス業界へ参入したワケ

伊橋 成哉

伊橋 成哉

2024.05.27

伊橋成哉(いはしなるや)さんは、日本大学芸術学部を卒業後、バンド活動を開始。その後、作詞・作曲家としての道を進み、2004年にhitomiへの楽曲提供を皮切りに、浜崎あゆみや倖田來未など、さまざまなアーティストの楽曲を手掛けました。現在は、株式会社WAGOONの代表取締役として、企業の採用ブランディングや海外事業など、幅広く活躍しています。音楽とビジネス両方の視点を持つ伊橋さんに、現在までの経緯と今後のビジョンを伺いました。

才能は周りの応援があってこそ活きる

見出し1画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_伊橋成哉さん

学生時代、僕は役者になる夢を抱いて日本大学芸術学部の演劇学科に入学しました。しかし、実際に演技をしてみると自分には合わないと感じ、レッスンにも熱が入りませんでした。

そんなとき、ある人から「人の歌や曲だから面白くないんじゃないの?」と言われたことをきっかけに、作曲に挑戦してみることに。作曲経験はゼロでしたが、思い切って曲を作ってみたところ、「そっちの方が才能あるんじゃない?」と評価されました。このひと言で、自分で曲を書く楽しさに目覚めたのです。

大学卒業後は就職活動をせず、バンド活動に打ち込みました。25歳までの数年間、音楽一本で生計を立てようと頑張りましたが、現実は厳しく、バンドだけでは生活していくことができませんでした。

そんな中、エイベックスの方が僕のCDを聴き、曲の提供に興味を持ってくれました。そして27歳のとき、hitomiさんの『steady』が僕の作曲家デビュー曲となったのです。

しかし、デビューが決まってから29歳までの2年間は、なかなか仕事に恵まれず、苦しい日々が続きました。転機が訪れたのは、SNSでm-floのトラックメーカーの方と出会ったことからです。

その方が僕の曲を音楽関係者に広めてくれたおかげで、それまで4年間で1曲しか決まらなかった状況から一変し、わずか1年間で13曲も採用されるようになったのです。これがきっかけで一気に仕事が増え、この出会いがすべての始まりとなりました。

これらの経験からビジネスを含めたキャリア形成において、自分ひとりの力だけでは限界があることを実感しました。たとえ優れた才能を持っていても、周囲の支えや応援がなければ、成功への道のりは険しいものになるでしょう。

僕の場合、4年間必死に努力しても実を結ばなかった作曲家としてのキャリアが、ひとつの出会いをきっかけに大きく花開きました。真正面だけが突破する方法ではなく、キーパーソンを見つける方が上手くいくのかもしれないです。

音楽とビジネスの視点を持つクリエイターに

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音楽家として順調にキャリアを重ね、40歳頃までにエイベックスをはじめとした大手レーベルとの音楽制作、広瀬すずさんの映画音楽にも関わらせていただきました。一流アーティストの音楽制作を手がけ、自分なりにやりきった感覚がありました。

しかし、その後のキャリアのステップが見えず、家族と話し合った結果、自分の価値を高く評価してくれる場所で挑戦したいと思い、台湾で新しい事業を始める決心をしました。台湾に移り住んでからは新たな人脈が広がり、有名なプロデューサーとも親しくなりました。

そこからある出来事がきっかけとなり、アパレルビジネスに参入することに。帰国中にテレビで見た、日本の衣料品の売れ残りが環境に悪影響を与えているという番組がそのきっかけでした。

台湾にいる社長さんが、そうした売れ残り品を安く買い取って販売するエコな取り組みをしていると知り、すぐにその話をしました。実際に会ってさまざまな提案をした結果、台湾にアパレルショップを開くことになったのです。僕自身は実務経験がありませんでしたが、経営者として人脈を生かし、面白そうだと手を差し伸べてくれる仲間が自然と集まってきました。

音楽からビジネスの世界に転身したとき、ビジネスの勉強に時間がかかることは理解していました。それでも音楽で大事にしてきたものとビジネスで重要なものには共通点があります。事業を立ち上げ、音楽家としての仕事も続けることで、両方の視点を持つクリエイターとしての強みを感じています。

自身の経験を活かして企業のブランディングをサポート

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現在はクリエイティブブランディングの事業に力を入れています。多くの企業が採用ブランディングに悩んでおり、そのニーズに応えるべく、SNSを活用した戦略を提案しています。僕自身が音楽からビジネスへの転身を経験しているため、独自の視点で企業のブランディングを支援しています。

従来の広告代理店とは異なり、採用ブランディングに特化したサービスを提供しています。ホームページやランディングページの制作、SNSでの情報拡散など、長期的な視点で企業の採用力を高める施策を実施します。社員の方々が継続的に運用できるようにサポートすることで、将来的には採用コストをゼロにすることも可能です。

また、台湾でのビジネス経験を活かし、日本企業が台湾市場に進出する際のコンサルティングも行っています。日本の商品を台湾で売るだけでなく、現地の商習慣や文化を理解したうえでの支援が求められていることを実感しています。

今後も、このアプローチをさらに発展させ、多くの企業が自社の魅力を最大限に伝える手助けをしていきたいと考えています。これからの時代に必要とされるサービスを提供し、共に発展していくことを目指します。

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