オーダースーツで人生が変わる!? “おじさんに優しい”スタイリストの挑戦

中根 大樹

中根 大樹

2024.05.29
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中根大樹(なかねだいじゅ)さんは日本大学を卒業後、新卒でAOKIホールディングスに入社。新規事業立ち上げのプロジェクトメンバーとして店長を任され、6億円の売上をあげるなど活躍しました。45歳の時に一念発起して起業し、『OTOKO Style Lab』という会社を立ち上げ、ミドル世代にオーダー服をご提案しています。「おじさんに優しいスタイリスト」として活動する中根さんに、ファッションへの情熱と、独立までの経緯を伺いました。

AOKIでスーツとお客様をつなぐ接客の極意を学ぶ

見出し1画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_中根大樹さん_オーダー服ブランド『OTOKO Style Lab』

僕は今、『Bespoke By WALKER』というオーダー服のブランドを運営しながら、スタイリストとして活動しています。今は、合同会社の代表社員として起業していますが、これまでは、会社員として25年間働いていました。

僕は幼少の頃から、洋服がすごく好きな子でした。姉が伊勢丹で働いていたり、母もブティックで働いていたり、洋服に関係する仕事が、いつも身近にあったのです。そんな環境で育ったので大学を卒業するときに「就職する業界はアパレルしかない」と考えていました。

選考を受けた企業のひとつに、スーツの『AOKI』を運営している『AOKIホールディングス』がありました。会社について調べていくと、競合他社と比較して”モノづくりが秀でている”という点に惹かれ、新卒で入社しました。これが僕とスーツの出会いでした。

AOKIでは、モノづくりのノウハウだけではなく、接客のスキルも学ばせていただきました。「お客様にどうやって喜んでいただくのか」「お客様と生涯お付き合いしていくにはどうすれば良いのか」という教育が、とてもしっかりしていたので、ここで学んだ接客スキルは、今も生かされています。

26歳のとき、社内公募で新規事業立ち上げのチャンスが訪れました。都心部に店舗を出店し、AOKIの名前を出さずに運営するプロジェクトです。「これは自分のやりたいことだ」と思い、応募しました。

そこで立ち上げのメンバーとして選ばれ、店舗の運営からオペレーションの作成、コンセプトづくり、採用まで行いました。池袋の1号店では店長として働き、1年目で4億円の売上を達成しました。新宿伊勢丹近くに出店した2号店でも店長を務め、年間6億円の売上を上げました。今は、オーダー服のブランドを経営している身ですが、スーツとお客様をつなぐ接客の極意は、すべてAOKIでの経験から学んだと言っても過言ではありません。

30歳になったとき、店舗で待っているのではなくて、外に出向く営業にチャレンジしたいと考えるようになりました。また、アパレルとは異なる業界で活躍したいという思いも芽生えてきました。そこで転職したのが、京都の老舗企業『島津製作所』のグループ会社でした。「世の中に役立つ企業でBtoBの営業がしたい」という僕の希望にマッチしていたのです。

オーダースーツの世界に足を踏み入れ独立

見出し2画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_中根大樹さん_ファッションアドバイス

営業の仕事をしているときも、変わらず洋服はずっと好きなままでした。AOKI時代は、社内ブランドしか着用できなかったため、その反動としてあらゆるブランドの洋服を着ました。ただ、高額の洋服でもワンシーズンでダメになってしまうものも多く、モノづくりの難しさを体感しました。

すごく素敵な中小企業の社長さんでも、洋服に興味がない方を見ると、「もっとシャキッとした洋服を着れば印象が変わるのに……」と思うようになりました。あるとき、どうしても我慢できなくなってしまって、勝手にアドバイスをはじめちゃったんですよ(笑)

そうしたら「お金払うからネクタイ買ってきて」と頼まれたりするようになり、今でいうパーソナルスタイリストみたいな活動を楽しんでやっていました。

40代に入り、少しずつ「自分で事業をやりたい」という思いが芽生え始めました。大企業にいたので、役職につくことで年収7〜800万円も可能でしたが、60歳を超えてもイキイキと働くのは難しいと感じていました。そこから、「後悔しないように今やりたいことをやろう」と決意。事業をするなら、ファッションの道で人々に役立つことがしたいと考えました。

独立への思いはあっても何をすれば良いかわからなかったので、メンズファッションの重鎮が開催する養成講座に参加し、1年間学びました。副業は認められていなかったため、ツテを頼ってアパレルのコーディネートやディレクション、本のスタイリング協力など、できる範囲で経験を積んでいきました。

事業を継続するには物販も取り入れる必要があると考え、オーダースーツの世界に足を踏み入れました。体にぴったりと合ったオーダースーツは着心地が格段に良いのです。

20代で数多くの接客経験を積んだおかげで、既製スーツの補正などは習得していましたが、オーダースーツは未経験の分野でした。サイジングなどの知識を学び、信頼できる縫製工場との提携も進めました。

3年ほどかけて入念に準備を進め、17年間勤めた会社を47歳で退職。ファッションへの情熱を原動力に、独立という新たな一歩を踏み出したのです。

オーダースーツを通じてミドル世代にワクワクを届ける

見出し3画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_中根大樹さん_ミドル世代を幸せに

スーツの魅力は、着ることで”違う自分”へとスイッチを入れられるところにあります。かつては「スーツは戦闘服」と言われていましたが、今の時代でもその言葉は当てはまるでしょう。

カジュアル化が進むなか、シャツにネクタイ、ジャケットを着用することは、もはや非日常的な行為になりつつあります。だからこそスーツを着ると自分自身にスイッチが入り、気持ちがピシッと引き締まるのです。スーツには魔法のような力があると信じています。

一般的に、女性はファッションに興味を持つ方が多いと言われますが、男性は絶対数が少ないのが現状です。ファッションに興味がない方に服の良さを体験していただくには、スーツやジャケットに勝るものはないでしょう。

僕は25年間の会社員経験があり、アパレル業界から離れていた時期も長くありました。そのため、経営者の方やアパレル以外の業界で働く方の気持ちは理解できているつもりです。「立場上、ある程度きちんとした服装をしなければならないが、誰に相談すればよいか分からない」という方に、専属スタイリストのような形でお役に立てることが僕の強みです。

人生100年時代を迎え、働く人の年齢は上昇し続けています。その中で、「自分をどのように見せていくか」「自分をどう見せたいのか」というブランディングの意識は欠かせません。そのブランディングを実現するツールのひとつが、ファッションなのです。

これからは、特に自分と同じようなミドル世代の男性に向けて、オーダースーツを通じて、今まで経験したことのないようなワクワクを届けていきたいと思います。

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