障がいの有無に関係なく楽しめる『ユニファイドサッカー協会』の会長が目指すビジョンとは
福井宏昌(ふくいひろまさ)さんは、関西大学を卒業後、柔道整復師・鍼灸師の資格を取得し、約15年間、地域医療に貢献してきました。現在では、株式会社LIGの代表取締役や、ユニファイドサッカー協会の会長を務め、主に発達障がいと診断を受けた子どもたちを対象とした児童発達支援・放課後等デイサービスや、地域を巻き込んだイベントなどを展開しています。多岐にわたって活動する福井さんに、福祉の世界に飛び込んだきっかけや、今後のビジョンを伺いました。
障がいの有無に関わらず楽しめるユニファイドサッカー
私は現在、株式会社LIGという会社で、運動に特化して障がいを抱える子どもたちの成長をサポートしています。この仕事に就く前は、整骨院とサッカーに関わる仕事をしたいと考え、大学卒業後は就職せずに整骨院でアルバイトをしながら、夜間の専門学校に通う生活を続けました。
時給が安いアルバイト生活は厳しかったですが、将来的には自分の治療院を持つという夢があり、組織に縛られず、自分の責任で自由に仕事を進めたいという強い思いがあったのです。
整骨院で勤めた後に鍼灸整骨院を開業して7年が経った頃、子どもが発達障がいと診断を受けた友人からの提案がきっかけで、障がい福祉の世界に関心をもつようになりました。
しかし、当時の私は障がいに対して理解もなく、障がい福祉を仕事にすることに正直不安がありました。そんな私にこれを仕事にしたいと思わせてくれたきっかけが、ユニファイドサッカーとの出会いでした。ユニファイドサッカーは、障がいのある人とない人が一緒にチームを組んで楽しむスポーツです。
この活動を通じて、相手を理解することができ、逆に自分も多くを学びました。ユニファイドサッカーが「相手を理解し、一緒に楽しむ」という精神を育む場であることが、私にとって大きな魅力でした。
もともと何事も3日坊主になりがちな性格ですが、好きなことや楽しいことなら続けられるのが私の特徴です。発達障がい者や知的障がい者と出会い、もっと彼らのことを知りたい、関わりたいと強く感じるようになりました。
“ワクワク”が行動の原動力
行動を起こす際には、相手にとっても自分にとっても良いことでなければ意味がないと考えています。私が何かを始めるときの判断基準は、自分がまずワクワクするかどうか、そしてそれが他の人々にも喜んでもらえるものかどうかです。
現在は、さまざまな活動をされている企業や団体、個人の方にご協力をいただいて、子どもたちに多様な体験の機会をつくるワークショップを開催したりしています。また、乗馬クラブの協力を得て、ホースセラピーを実施するなど、多様な活動を行っています。
さまざまな方々の強みと、私たちの強みを掛け合わせることで、単独では難しいことも実現できると感じています。すべてを一人でやろうとすると時間がかかるため、できないことは人の力をお借りして、一緒に創り上げることを大切にしています。
具体的には、ハリガネを作られている企業のハリガネで桜や紅葉をつくるワークショップを開催したり、大阪プロレスさんにプロレス体験教室をしていただいたり、厨房でのラーメン作り体験など、さまざまな経験の場を提供しています。
淡路島では、高齢化による担い手不足や価格の低さなど、さまざまな農業の課題解決や、農業で障がいも含め多様な人々が集える場所つくりを目的として、直売所(MUKU Marche)や畑(MUKU FARM)の運営を行っています。
また、地域を盛り上げるためにレンタル電動キックボードを始めたり、炭を活用して地球にも人にも優しい農業と動物介在・ボディケアをひとつの場所で行える『リトリートビレッジ』の構想も進めています。
子どもの可能性を最大限に発揮する社会をつくる
現在の日本社会では、発達障がいという診断に過度にとらわれていると感じます。みんなと同じことができるのがいい子で、そうじゃなければダメな子、障がい者とみなされる風潮が広がっているのが現状です。
私は、子どもたちが好きなことや得意なことに出会う機会や、仲間と一緒に成長する環境が十分にないことが、問題の根本にあると考えています。
できないことを無理にできるようにするのではなく、その子の長所や好きなことを活かせる場がまだ見つかっていないだけかもしれません。だからこそ、さまざまな機会を提供することで、その可能性を見つけるきっかけをつくりたいと考えています。
私は、子どもたちの長所を伸ばし、一人ひとりに寄り添いながら、彼らの可能性を最大限に広げることを目指しています。これは私のビジョンであり、楽しみながら子どもたちが自立できるよう支援していきたいと考えています。