令和の虎で3,000万円の融資を獲得。出前館の創業者が語る「殺処分ゼロ」への思い

花蜜 幸伸

花蜜 幸伸

2023.01.23
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昨今、ますます市場拡大しているデリバリー業界のトップランナーとして牽引する『出前館』。その創業者である花蜜幸伸さんは、現在、ペットの“殺処分ゼロ”を掲げる『ZEROJAPANプロジェクト』を立ち上げています。無一文になりながらもチャレンジを続ける花蜜さんに、プロジェクト立ち上げの経緯や、令和の虎に出演したときのエピソードなどをお話しいただきました。

世界最大クラスの保護施設『ペットの里』

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出前館を創業後に始めた事業のもうひとつが、犬猫の殺処分ゼロを目指す保護施設『ペットの里』の運営です。2014年に当時あったお金をすべて使って、東京ドーム9個分の土地を岩手に購入し、保護施設をつくることにしました。

もちろん施設をつくって終わりではなく、その後の運営もしなければなりません。とは言え、保護事業はお金にかえることがなかなか難しい事業です。「この団体だったらきっとやってくれる」と期待される団体にしようと思い、東京ドーム9個分という世界最大クラスの大きさにこだわりました。

犬猫の保護施設を立ち上げたいとは言っても、この保護団体をつくることは、元々は私の夢ではありませんでした。ペットの里代表である田中亜弓は、出前館時代からずっとサポートをしてきてくれた人で、私が経営者の団体をやっていたときも、初代事務局長になってもらいました。その彼女が昔からずっと経営者仲間に「殺処分をゼロにしたい」と言っていたんです。

当時の殺処分数は15万匹くらいだったので、「保護しきれない、無理だ」と私を含めみんなに言われていました。しかし彼女は「わかっているけど、何かアクションしないと気が済まない」と言うんです。長年手伝ってくれていた恩もありますし、それなら全力で応援しようと決め、全財産をつぎ込んでやる覚悟をしました。

日本を元気にする『ZEROJAPANプロジェクト』

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しかし保護事業を始めた3カ月後に、出前館の株価が大暴落。全資金をつぎ込んでいたので無一文になってしまいました。自分の生活もままならない状態だったので、たくさんの知人から「もうやめた方がいい」と言われましたが、私は出前館時代から諦めだけは悪い人間です。

友人・知人で犬猫が好きな人を見つけては、「力を貸してほしい」と頼み込んで、この8年間はなんとか維持してきました。だいぶ時間はかかりましたが、やっと光が見えてきたところです。

近年、ご年配による動物の引き取り要請が多くなってきているので、飼い主さんが万が一に備えるということを常識にしたいです。『ペットの安心信託』という、ペットのその後を護る保険をつくっていて、ご年配の方を中心に広げていこうと思っています。

関われば関わるほど、これは単なる殺処分ゼロではなく、日本を元気にすることができるプロジェクトになるような気がしました。シニアペットブームを巻き起こして、ご年配の方たちをどんどん元気にしていこう。そうすることによって、そこにお金がどんどん生まれて大きな事業になると感じたんです。これが『ZEROJAPANプロジェクト』として現在まで活動しています。

保護業界協会では、「生涯飼育できない可能性のある方には譲渡をしてはいけない」というのが暗黙のルールとしてあります。そのため、基本的にご年配の方には譲渡をしてはいけないのです。しかし我々は、万が一の事態に備えているご年配の方には、積極的に譲渡しようと呼びかけをしています。これを全国の保護団体に呼び掛けていて、今は30ほどの団体が賛同してくださっています。

『令和の虎』に出演し、融資を募る

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保険がらみもあったので、ペットの里とはどんなところなのかと保護施設へ見学に来てくださる方が増えてきています。ところがこの施設はかなりボロボロで、直さなければいけない箇所がたくさんあります。誰かまとまったお金を出してくれないかなと探していたときに、「令和の虎に挑戦してみたらどうか」と、知人から提案いただきました。

『令和の虎CHANNEL』主宰者の岩井良明さんを紹介いただき、今までの最高額を越える3,000万円を狙いたいと伝えました。しかし我々は非営利の団体なので、投資ではなく虎たちが嫌がる融資の話になります。

経営は赤字だったので、「1年間据え置きをさせてほしい」とお願いしたので、虎たちは絶対に融資を出したくないだろうと感じました。融資を得られるようにするためには、この案件をダメにしたときに視聴者たちから何を言われるかわからないような、そして虎たちが融資を出さざるを得ない雰囲気をいかにつくるかだと考えました。最終的には750万円×4人で決着をつけることができました。

そのおかげで現在もペットの里は運営できており、多くの犬猫が新しい飼い主の元で元気に暮らしています。ZEROJAPANプロジェクトの活動をこれからも広めていきたいと思っています。

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