障がい者への旅行支援サービスで「医療従事者の固定概念をこわす」

吾妻 勇吹

吾妻 勇吹

2023.10.09
アイキャッチ画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_吾妻勇吹さん

理学療法士として働きながら、一般社団法人tsunagari Aoi代表として障がい者の旅行支援をするプロジェクトに携わっている吾妻勇吹さん。今回は理学療法士になったきっかけや代表となっている『AOiプロジェクト』についてお聞きしました。

病院の外に出たことで視界が広がった

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理学療法士を目指すようになったきっかけは、バスケ部でのケガが原因で理学療法士と出会ったことでした。中学時代はキャプテンを務めていたのですが、ケガが多くてなかなか試合には出れませんでした。周りの友達がうまくなる中でのメンタル的なサポートや、リハビリを担当してもらったことから「かっこいいな」と思い、理学療法士を選びました。

通っていた高校はバスケ部が強かったので補欠でしたし、勉強も中の下くらいでした。どこでも真ん中のポジションにいたのですが、PTになって初めてのめり込みました。勉強した分、患者さんを良くできる引き出しも増えましたし、やりがいがとても感じられていました。

家に帰ると勉強できないので、病院だと論文があったり先輩にも聞けたりするので、周りの目を気にせず日をまたいで勉強していました。

ただ外の世界に出る機会が増えると「病院の先輩もすごいけど、もっとすごい人がたくさんいる!」ということに気がつきました。

自分以上に頑張っている人もたくさんいる中でも共通した悩みは「お金と時間がない」ことでした。医学書ってすごく高くて、普通の本よりも倍以上します。頑張っても頑張っても報われていないという現状を変えたくて、『近畿アウトプット会』をつくりました。

忙しくてもアウトプットをすることに価値があると感じていましたが、準備に時間がかかることもあり、3カ月に1回くらいの開催しかできませんでした。相談内容も3カ月前の相談になってしまいます。会場を借りてやっていてもほとんど赤字になってしまい、講師代も払えない状況でした。

頑張っている理学療法士が報われるようにするためにも、リアルタイムで熱い理学療法士たちの前で相談をしたかったので、聞いたことをパッと応えられる状況にするためにも、オンラインサロンにしようと決めました。

オンラインサロンを始めようとした当初は、リテラシーが低い方から反対されました。新型コロナウイルスが蔓延したことで外出に規制がかかり「むしろオンラインでやろう」との動きが出たことを追い風にして立ち上げました。

患者さんの「旅行に行きたい」を支援する

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『AOiプロジェクト』を始めるきっかけは、医療業界全体の課題である「どうやって稼ぐか」について考えたことでした。医療業界は、保険という税金の仕組みでご飯を食べていますが、これだと経済圏は広がりません。

政治で変えていくという角度もあり、一時期は「政治家になったらどうか」と言われたこともありますが、間違いだと感じました。もちろん理学療法士から政治家を出していくのはビジョンにありますが、保険の枠と医療業界内で取り合うのではなく、保険以外でキャッシュを生むことが大事です。

最初は働いている病院で靴の販売をしようとしましたが、利権の問題などもあり続けることが難しいと感じました。病院で行うことが難しいなら、病院以外の場所でキャッシュをつくるという考えを持った医療従事者を増やすためにも、メディシェアJAPANというオンラインサロンへと形を変えていき、啓発活動をしていくなかで『旅行支援事業』があると知りました。

患者さんが目標にすることとして、「孫に会いに行きたい」「⚫︎⚫︎に行きたい」など移動のことを目標にする方がとても多いです。保険としては出来ないサービスですが、求められていることだと感じました。

実際に北海道で旅行支援サービスの話なのですが、別の病院で入院している奥さんに会いたいという方を、看護師が間に入ることでオンラインで会うことができたというエピソードを知りました。これは、看護師だからこそできたことだなと感じ、医療従事者だからもっとできることがあると気づきました。

それまでは啓発活動が中心でしたが、「ためになった」で終わるセミナー活動ではなく、行動する人を生み出すためにも、「コンテンツ・イベントづくり」をスタート。その中で、一般社団法人tsunagariの松川力也さんから、テーマパークへの旅行の話をもらいました。医療従事者と障がい者で行く旅行がいいなと思い、『AOiプロジェクト』ができました。

イベントを開催する際は、医療従事者と障がい者が1:1になるように気を配っています。朝に集合してその場で自己紹介をしてから始まります。これまでに東京ディズニー・リゾートやユニバーサル・スタジオ・ジャパンに行きました。

未来の自分たちのためにできること

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『AOiプロジェクト』は仲間と共につくっていますが、理念に共感してもらっているかを大切にしています。自分はトップダウンが好きではないので、どうやったら『AOiプロジェクト』がよくなっていくのかについて、一緒に考える人が中心メンバーとなって共につくっていきたいです。

医療従事者の悩みとして、もともとは時間やお金の解決について焦点が当たっていましたが、大事なことは「やりがい」や「好きでやっている」ことだと気づきました。お金が必要なのは、幸せになるためだという考えがあったので、そういった手段を提供するのではなく、ワクワクややりがいを見つけ出すきっかけになればと思います。

自分自身のあり方として、固定概念を壊すことを大事にしています。違うことをする人をたたくのは、各々での固定概念があってぶつかることがあるからだと思っています。やれないと思っていることがやれるようになることで、もっと温かい世界になるのではないかと思います。

健康寿命と平均寿命には10年くらいの差があります。つまり10年くらいは、障がい者として誰かのお世話になるということです。障がい者のためだけでなく、未来の自分たちのためにも活動を広げていきたいです。

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