モラハラ上司への究極の対処法!アドラー心理学の「目的論」で相手の攻撃の意図を見抜く

アドラー心理学を用いた、子育て・起業・自己実現サポートを行う、あいさんの連載コラム第9弾です。「お前は本当に使えないな」「こんなこともできないの?」「みんなの前で恥をかかせるぞ」職場でのモラルハラスメント(モラハラ)は、厚生労働省の調査によれば、パワハラ相談の約4割を占めるといわれています。精神的な攻撃に日々さらされ、自尊心が削られていく苦しみ。しかし、アドラー心理学の「目的論」を使えば、相手の攻撃の裏にある「本当の意図」が見えてきます。そして、その意図を理解することで、関係性が劇的に変わるケースもあるのです。実際の相談事例をもとに、モラハラ上司への対処法を解説します。
アドラーの「目的論」とは?攻撃の裏にある意図を見抜く

アドラー心理学の核心概念の一つが「目的論」です。これは、フロイトの「原因論」と対照的な考え方です。
原因論:「過去の出来事が現在の行動を決定する」
例:「上司は幼少期に虐待されたから、部下にも攻撃的になる」
目的論:「人は何らかの目的のために、今の行動を選んでいる」
例:「上司は『部下を支配したい』という目的のために、攻撃的な言動を選んでいる」
一見、冷たく聞こえるかもしれません。しかし、アドラーの目的論には深い洞察があります。人の行動には必ず「達成したい何か」があるという前提に立つことで、相手の行動の意味が見えてくるのです。
私が出会ったAさん(30代女性・営業職)の事例をご紹介します。
Aさんの上司は、毎日のようにAさんを叱責しました。「お前のせいで部署の成績が悪い」「もっと考えて動け」「なぜそんなこともできないんだ」。Aさんは毎晩泣きながら帰宅し、退職を考えていました。
しかし、一緒に、アドラーの目的論を使って分析したとき、意外な事実が見えてきたのです。
「攻撃」の裏にある「良い意図」を探す

Aさんとの対話の中で、私は「上司の行動の目的は何だと思いますか?」と尋ねました。最初、Aさんは「私を追い詰めるため」「支配するため」と答えました。
しかし、さらに深く掘り下げると、別の可能性が浮かび上がりました。
上司の背景:
- 部署の業績が低迷しており、上層部からプレッシャーを受けていた
- 自分も過去に厳しい指導で成長した経験があった
- Aさんには期待していたが、うまくコミュニケーションが取れていなかった
つまり、上司の「攻撃」の裏には、以下のような「目的」があったのではないか、とAさんと一緒に考えました。
①部署の業績を上げたい(組織への責任感)
上司は、部署の責任者として結果を出さなければならないプレッシャーを抱えていた。
②Aさんに成長してほしい(期待)
厳しい言い方ではあるが、実はAさんの成長を願っていた可能性がある。
③自分の不安をコントロールしたい(自己防衛)
業績不振への不安から、部下を叱責することで「自分はちゃんとマネジメントしている」と自分に証明しようとしていた。
もちろん、これは上司の行動を正当化するものではありません。モラハラは決して許されるものではありません。しかし、「相手には相手なりの意図がある」と理解することで、Aさんの心に変化が起きたのです。
「もしかしたら、上司は私を潰そうとしているんじゃなくて、自分も苦しんでいるのかもしれない」とAさんは言いました。
Aさんが実践した「目的論」に基づく対処法

理解することと、行動を変えることは別です。Aさんは、上司の「意図」を理解した上で、以下の3つのアプローチを試みました。
①上司の「目的」に協力する姿勢を見せる
Aさんは、上司との1on1ミーティングで「部署の業績向上のために、私にできることは何ですか?」と尋ねました。これは、「私はあなたの目的に協力したい」というメッセージです。
すると、上司の態度が少し変わりました。「お前は数字の分析が苦手だから、まずはそこを強化しろ」と、具体的なアドバイスをくれるようになったのです。攻撃ではなく、指導に変わり始めたのです。
②「Iメッセージ」で自分の気持ちを伝える
アドラー心理学では、「Youメッセージ」ではなく「Iメッセージ」を推奨します。
Youメッセージ(攻撃的):「あなたは私を責めてばかりいる」
Iメッセージ(建設的):「私は、もっと具体的に何を改善すべきか教えていただけると、成長できると感じています」
Aさんは勇気を出して、上司にこう伝えました。「私は、ご指導いただきたいと思っています。ただ、具体的にどう改善すべきか分からないときがあるので、教えていただけると嬉しいです」と。
上司は一瞬驚いた表情をしましたが、その後「分かった。次からもう少し具体的に言うようにする」と答えたそうです。
③「課題の分離」で自分を守る
同時に、Aさんは「課題の分離」も実践しました。上司がどう反応するかは、上司の課題。Aさんができるのは、自分の仕事を誠実にこなすことだけ。
「上司に嫌われたくない」という思いを手放し、「私は私のベストを尽くす。それで評価されないなら、それは上司の課題」と考えるようになりました。
結果として、Aさんと上司の関係は完全に良好とまではいかなかったものの、以前のような精神的苦痛は大幅に軽減されました。そして半年後、Aさんは社内異動を実現し、今は新しい部署で活躍されています。
モラハラへの対処ーー理解と境界線のバランス
誤解してほしくないのは、「モラハラを我慢しろ」という意味ではないということです。
アドラーの目的論は、「相手を理解する」ためのツールであって、「相手の行動を許す」ためのものではありません。モラハラが深刻な場合は、人事部への相談、労働基準監督署への通報、転職など、自分を守る行動を取ることが最優先です。
しかし、「すべてのモラハラ上司が悪意の塊ではない」という視点も、時には有効です。
私が出会った別のケース、Bさん(40代男性・エンジニア)の上司は、部下の成果を横取りし、自分の手柄にしていました。典型的なモラハラです。
しかし、Bさんが目的論で考えたとき、「上司は、自分の評価を上げて昇進したいのだろう。それは、家族を養うためかもしれない」と思い至りました。これは上司の行動を正当化するものではありませんが、「上司も一人の人間で、何かに必死なのかもしれない」と理解することで、Bさんの怒りは少し和らいだそうです。
そして、Bさんは「成果を文書で記録する」「上層部に直接報告する機会を作る」といった具体的な自衛策を講じました。これが「理解と境界線のバランス」です。
アドラーは「すべての悩みは対人関係の悩みである」と言いましたが、同時に「対人関係の中にこそ、幸福がある」とも言いました。
モラハラ上司との関係は、簡単に解決できるものではありません。しかし「相手の行動の目的を理解する」という視点を持つことで、少なくとも「自分の心を守る」ことはできます。
そして、もし関係性が改善する可能性があるなら、試してみる価値はあるかもしれません。それでも改善しないなら、自分を守るために距離を取る、環境を変える。それもまた、アドラーが説いた「自分の人生を生きる」ということなのです。
今、モラハラ上司に苦しんでいるあなたへ。あなたは一人ではありません。そして、あなたには「自分を守る権利」があります。まずは、信頼できる誰かに相談することから始めてみてください。
【著者プロフィール】 あい / アドラー心理学講師・著者 2児の母。アドラー心理学の実践で、たった3カ月で家族崩壊から家族円満へ変化。2024年起業。「思考のクセ診断」を開発し、100名以上の子育て・自己実現をサポート。関西・大阪万博登壇。国際アドラー心理学会(IAIP ASIA2026)日本代表。10カ月連続ベストセラー著書『アドラー流子育てやってみた』。Instagram: @ai_sensei_0310
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