アドラー流「勇気づけ」で、行動を阻むブレーキを外す究極のマインドセット

アドラー心理学を用いた、子育て・起業・自己実現サポートを行う、あいさんの連載コラム第8弾です。「転職したいけど、失敗したらどうしよう」「起業に興味はあるけど、うまくいかなかったら恥ずかしい」「新しいことに挑戦したいのに、一歩が踏み出せない」――こうした「失敗への恐怖」に縛られた経験はないでしょうか。アドラー心理学では、こうした「行動できない状態」を「勇気がくじかれた状態」と捉え、その回復方法として「勇気づけ」という技法を提示しています。褒めるのでも、叱るのでもない。この第三の関わり方が、なぜ今、教育現場やビジネスの世界で注目されているのか。自身も「失敗恐怖症」を克服した筆者が、その本質と実践法を解説します。
私が「完璧主義」で自分を追い詰めていた頃
恥ずかしながら、私自身が長年「失敗恐怖症」に苦しんでいました。子どもの頃から「失敗=恥ずかしいこと」「完璧でなければ価値がない」という思い込みがあり、新しいことに挑戦する前に「もし失敗したら…」と想像して動けなくなることが何度もありました。
特に起業を考え始めた時、この恐怖は頂点に達しました。「もし誰も来なかったらどうしよう」「批判されたらどうしよう」「家族に迷惑をかけたらどうしよう」。頭の中は失敗のシミュレーションでいっぱいでした。
そんな時、アドラー心理学の「勇気づけ」という概念に出会いました。そこで学んだのは、「失敗が怖いのは、失敗そのものではなく、失敗した自分に価値がないと思い込んでいるから」という事実でした。この気づきが、私の人生を変える転機となったのです。
「褒める」と「勇気づけ」は何が違うのか?

アドラー心理学で最も誤解されやすい概念の一つが「勇気づけ」です。多くの人が「褒めること」と混同しますが、実は本質的に異なります。
「褒める」は、上下関係を前提とした評価です。「すごいね」「えらいね」という言葉は、一見ポジティブですが、「私(上)があなた(下)を評価している」という構造が隠れています。そして問題は、褒められることが目的になると、「褒められないと動けない」「評価されないと価値がない」という依存状態に陥ることです。
一方、「勇気づけ」は、対等な関係の中で、相手の存在そのものや努力のプロセスに注目することです。結果ではなく、「挑戦したこと」「工夫したこと」「続けていること」に光を当てます。
例えば、子どもがテストで60点を取ってきたとします。
- 褒める:「えらいね!(でも次は80点取ろうね)」→結果に対する評価
- 勇気づけ:「苦手な数学、よく頑張ったね。どこが難しかった?」→プロセスと存在への注目
この違いは微妙ですが、決定的です。褒めることは、結果が出なければ価値を認めないメッセージになりかねません。勇気づけは、結果に関わらず「あなたが挑戦したこと自体に価値がある」と伝えます。
私が起業を決意できたのも、ある先輩からかけられた「結果がどうであれ、あいさんが一歩踏み出したこと自体がすごいことだよ」という言葉でした。これは「成功したらすごいね」ではなく、「挑戦すること自体に価値がある」というメッセージ。この言葉が、私の心の中の「失敗への恐怖」を和らげてくれました。
なぜ私たちは「失敗が怖い」のか?――劣等感との関係

アドラーは「すべての人間は劣等感を持っている」と述べました。これは否定的な意味ではなく、「人は自分の理想と現実のギャップを感じる存在である」という意味です。そして、この劣等感が「成長の原動力」になることもあれば、「行動を阻むブレーキ」になることもあります。
問題は、劣等感が「劣等コンプレックス」に変わる時です。これは「自分には価値がない」「どうせ失敗する」という思い込みに支配され、挑戦すること自体を諦めてしまう状態です。
例えば、私が起業前に抱いていた「もし失敗したら、私は無価値な人間になる」という思い込み。これはまさに劣等コンプレックスでした。しかし、アドラー心理学を学ぶ中で気づいたのは、「失敗=自分の価値がなくなる」という等式は、自分が勝手に作り上げた思い込みに過ぎないということでした。
失敗は、あなたの価値を決めるものではありません。失敗は単に「この方法ではうまくいかなかった」という情報に過ぎないのです。
ある日、私が出会ったクライアント(40代・男性)は、長年転職を考えながらも「もし次の職場でもうまくいかなかったら、もう後がない」と恐怖に縛られていました。しかしカウンセリングの中で、「うまくいかないとは、具体的にどういうことですか?」と尋ねると、彼は言葉に詰まりました。
よくよく話を聞くと、彼が恐れていたのは「失敗そのもの」ではなく、「周囲からどう見られるか」という他者評価でした。これはまさに、前回の記事で触れた「承認欲求」と「失敗への恐怖」が結びついた状態です。
私は彼に「もし誰もあなたを評価しない世界だったら、転職しますか?」と尋ねました。彼はしばらく考えて、「すると思います」と答えました。この瞬間、彼は自分を縛っていたのが「失敗」ではなく「他人の目」だったことに気づいたのです。
自分を「勇気づける」3つの実践法

理論を理解しても、実際にどうすれば「失敗への恐怖」を克服できるのか。私自身が実践し、効果を実感した方法を3つご紹介します。
①「失敗」を「学び」に言い換える
私たちは「失敗」という言葉に、無意識に「恥ずかしい」「ダメ」というネガティブなイメージを持っています。しかし、これを「学び」や「実験」に言い換えるだけで、心理的なハードルは大きく下がります。
起業初期、私は「この講座、もし誰も来なかったらどうしよう」と不安でした。しかしある時、「これは失敗ではなく、マーケットリサーチの実験だ」と捉え直しました。すると、「参加者が少なければ、ニーズがない分野だと分かる。それも貴重なデータだ」と思えるようになり、恐怖が和らぎました。
②「小さな一歩」を積み重ねる
大きな目標を掲げると、失敗のダメージも大きく感じられます。アドラー心理学では「スモールステップ」を推奨しています。小さな挑戦を繰り返し、成功体験を積むことで、「自分にはできる」という感覚(自己効力感)が育ちます。
私が起業を決めた時、いきなり会社を辞めたわけではありません。まずは週末に小さな勉強会を開くことから始めました。3人の参加者からスタートし、「できた!」という小さな成功体験が、次の一歩を踏み出す勇気になりました。
③「自分の努力やプロセス」に注目する
私たちは結果ばかりに目が行きがちですが、アドラー心理学では「結果ではなく、プロセスに価値がある」と考えます。
毎晩寝る前に、私は「今日の自分へのメッセージ」を手帳に書く習慣をつけました。「今日は〇〇に挑戦した」「△△を続けられた」「苦手な□□に取り組んだ」。結果がどうであれ、行動したこと自体を認める。この習慣が、自分で自分を勇気づける力を育ててくれました。
「完璧」でなくていい。「勇気」があればいい。
アドラーは「完全であろうとするのではなく、前進しようとすること」の大切さを説きました。私たちは完璧である必要はありません。必要なのは、不完全な自分を受け入れながら、それでも一歩を踏み出す勇気です。
失敗を恐れて何もしないことは、実は「失敗しない」のではなく、「挑戦しないという失敗」を選んでいるのかもしれません。今日、あなたが踏み出せずにいる「小さな一歩」は何ですか? その一歩を踏み出すために、まずは自分に「挑戦しようとしている自分、えらいよ」と声をかけてみてください。
それが、アドラー流「勇気づけ」の始まりです。
【著者プロフィール】 あい / アドラー心理学講師・著者 2児の母。アドラー心理学の実践で、たった3ヶ月で家族崩壊から家族円満へ変化。2024年起業。「思考のクセ診断」を開発し、100名以上の子育て・自己実現をサポート。関西・大阪万博登壇。国際アドラー心理学会(IAIP ASIA2026)日本代表。10カ月連続ベストセラー著書『アドラー流子育てやってみた』。Instagram: @ai_sensei_0310
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