アドラー心理学の「褒めない・叱らない子育て」の本当の意味

あい

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2025.12.17
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アドラー心理学を用いた、子育て・起業・自己実現サポートを行う、あいさんの連載コラム第2弾です。今回は多くの親が誤解しがちな「褒めない・叱らない子育て」をテーマに、その本当の意味と実践方法を紐解きます。理論だけでなく、実体験を交えながら、明日からすぐに活かせるアドラー流子育ての本質をお届けします。

「褒めない・叱らない子育て」と聞くと、多くの親は戸惑います。「褒めなければ子どもは伸びないのでは?」「叱らなければわがままになるのでは?」そんな不安の声をよく耳にします。しかし、アドラー心理学が提唱するこの子育て法は、決して放任主義ではありません。むしろ、子どもの自立心と自己肯定感を育てる、科学的根拠に基づいた方法なのです。2児の母でアドラー心理学講師の筆者が、誤解されがちなこの子育て法の本質を解き明かします。

なぜ「褒める」が、子どもをダメにするのか

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「テストで100点取ったね、えらい!」「お片付けできて、いい子ね!」私たちは当たり前のように子どもを褒めます。しかし、アドラー心理学では「褒める」ことに警鐘を鳴らします。なぜでしょうか。

答えは、褒めるという行為が「上下関係」を前提としているからです。褒めるとは、評価する側と評価される側の関係性。つまり、親が上で子どもが下という上下関係が固定化されてしまうのです。

さらに深刻な問題があります。褒められて育った子どもは、「褒められるために行動する」ようになります。これは心理学で「外発的動機づけ」と呼ばれる状態です。文部科学省が実施した調査でも、外発的動機づけに依存する子どもは、褒められない環境になると急激にモチベーションが下がることが報告されています。

私自身、以前は褒める子育てを実践していました。「すごいね!」「えらいね!」と毎日のように声をかけていたのです。しかし、ある日気づきました。娘が「ママ、これできたよ、褒めて!」と頻繁に言うようになったのです。自分がやりたいからではなく、「褒められたいから」行動していたのです。

アドラーはこう指摘します。褒めることで、子どもは「他者の評価」に依存するようになる。自分で自分を評価できなくなり、常に誰かに認められなければ不安になる。これが、現代社会で問題になっている「承認欲求の過剰化」の根本原因なのです。

では、褒めない代わりに何をすればいいのでしょうか。アドラーが提案するのが「勇気づけ」です。

「褒める」と「勇気づけ」の違い:

  • 褒める:「100点取ったね、えらい!」(結果への評価)
  • 勇気づけ:「毎日コツコツ勉強してたもんね、嬉しいね」(プロセスへの共感)
  • 褒める:「お片付けできて、いい子ね」(条件つきの承認)
  • 勇気づけ:「お部屋がきれいになると気持ちいいね、ありがとう」(貢献への感謝)

勇気づけは、結果ではなくプロセスに注目します。評価ではなく、気持ちに共感します。この違いが、子どもの内発的動機づけを育てるのです。「自分がやりたいからやる」という自律性が、真の自立につながります。

「叱る」の正体は、恐怖による支配だった

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多くの親は「叱らなければ、子どもは言うことを聞かない」と信じています。私もそうでした。3歳の娘が何度言ってもおもちゃを片付けない。イライラが募り、最後には大声で叱りつける。そんな日々を繰り返していました。

しかし、アドラー心理学を学んで気づいたのです。「叱る」という行為の正体は、実は「恐怖による支配」だということに。

叱られた子どもは、その瞬間だけは言うことを聞きます。なぜなら、怖いから。親に嫌われたくないから。しかし、それは本当の意味で理解したわけではありません。ただ、恐怖から逃れるために従っているだけなのです。

児童心理学の研究では、頻繁に叱られて育った子どもに以下の傾向が見られることが報告されています。

  • 自己肯定感の低下
  • 親の顔色を常に伺う行動
  • 失敗を極端に恐れる
  • 嘘をつくことが増える(叱られないために)
  • 思春期以降の反発が強くなる

さらに衝撃的だったのは、アドラーの次の言葉です。「子どもが望ましくない行動をするとき、その目的は『注目を引くこと』か『権力争い』である」

たとえば、娘がおもちゃを片付けない理由。それは単に「面倒だから」ではなく、「ママが怒ることで、自分に注目してほしい」という無意識の目的があるかもしれないのです。あるいは、「ママの言うことを聞かないことで、自分にも力があることを示したい」という権力争いかもしれません。

この視点を知ったとき、私の対応は180度変わりました。叱るのではなく、「どうして片付けたくないのかな?」と質問するようになったのです。すると娘は「だって、まだ遊びたかったんだもん」と本音を話してくれました。

「そっか、まだ遊びたかったんだね。じゃあ、あと5分遊んだら一緒に片付けようか」と提案すると、素直に応じてくれたのです。叱らなくても、対等な対話によって解決できることを実感しました。

アドラーは言います。「子どもを叱る必要はない。ただ、論理的な結末を体験させればいい」

たとえば、朝の支度が遅くて学校に遅刻しそうなとき。叱るのではなく、「遅刻すると困るのは誰かな?」と問いかける。子ども自身が「自分が困る」と気づく。これが「論理的結末」です。親が感情的に叱るより、はるかに学びが深いのです。

実践!明日から変わる「勇気づけ」の3つの方法

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理論はわかったけれど、「具体的にどうすればいいの?」という声が聞こえてきそうです。私が実践して効果を実感した、明日から使える「勇気づけ」の3つの方法をお伝えします。

①「ありがとう」で、貢献感を育てる

褒める代わりに、「ありがとう」を伝えましょう。これがアドラー流の勇気づけの基本です。

子どもがお手伝いをしたとき。「えらいね」ではなく、「手伝ってくれてありがとう、ママ助かったよ」と伝えるのです。この違いは大きい。「えらいね」は評価ですが、「ありがとう」は感謝です。

アドラーは「幸福とは貢献感である」と言いました。子どもが「自分は誰かの役に立っている」と実感できることが、自己肯定感の土台になります。

我が家では、娘が食器を運んでくれたとき、「ありがとう、あなたのおかげでみんな早くご飯を食べられるね」と具体的に伝えます。すると娘は誇らしげに笑います。この小さな積み重ねが、「自分は必要とされている」という実感を育てるのです。

さらに効果的なのは、失敗したときこそ「ありがとう」を伝えることです。息子が食器を運ぼうとして落としてしまったとき。以前なら「だから危ないって言ったでしょ!」と叱っていました。しかし今は、「運ぼうとしてくれたんだね、ありがとう。一緒に片付けよう」と声をかけます。

すると息子は、失敗を恐れずに次もチャレンジしてくれるのです。この「失敗しても大丈夫」という安心感が、挑戦する勇気を育てます。

②プロセスに注目し、一緒に喜ぶ

結果ではなく、プロセスに注目することが勇気づけの核心です。

テストで100点を取ったとき。「100点なんてすごい!」ではなく、「毎日コツコツ勉強してたもんね。頑張ったね」と、努力のプロセスを認めます。

さらに重要なのは、「一緒に喜ぶ」姿勢です。評価者として「えらい」と上から目線で褒めるのではなく、同じ目線で「嬉しいね!」「やったね!」と共感するのです。

我が家では、娘が前転に成功したとき、「できたね、すごい!」ではなく、「できたね!嬉しいね!ママも嬉しいよ!」とハグしました。これは評価ではなく、喜びの共有です。

この違いは微妙ですが、子どもに伝わる感覚は全く違います。評価されているのではなく、「ママは自分の味方なんだ」と感じられるのです。

また、うまくいかなかったときも、プロセスに注目します。「テスト60点だったんだね。でも、難しい問題にチャレンジしてたね。どこが難しかった?」と問いかける。点数という結果ではなく、挑戦したこと自体に価値があると伝えるのです。

③選択肢を与え、自分で決めさせる

命令するのではなく、選択肢を与えることが、子どもの自立を促します。

朝の支度が遅いとき。「早くしなさい!」ではなく、「先に着替える?それとも先にご飯食べる?」と選択肢を提示します。どちらを選んでも、支度は進みます。でも、子どもは「自分で決めた」という実感を持てるのです。

この「自分で決める」経験が、自己決定力を育てます。心理学の研究でも、自己決定感のある子どもは、学習意欲が高く、問題解決能力に優れていることが報告されています。

宿題をしないとき。「宿題しなさい!」ではなく、「宿題、いつやる?今やる?それともご飯の後にする?」と問いかけます。親が決めるのではなく、子どもが決める。この小さな積み重ねが、責任感を育てるのです。

ただし、注意点があります。選択肢は2〜3個に絞ること。そして、どちらを選んでも親が受け入れられる選択肢であること。「宿題やる?やらない?」という選択肢は不適切です。「やらない」を選ばれたら困るからです。

「今やる?後でやる?」なら、どちらでもOK。この前提が大切です。

まとめ:子どもを信じる勇気が、未来を変え

「褒めない・叱らない子育て」の本質は、子どもを一人の人間として尊重することです。評価する対象としてではなく、対等なパートナーとして向き合うこと。そして、子どもが持つ「成長する力」を信じることです。

褒めなくても、子どもは伸びます。叱らなくても、子どもは学びます。なぜなら、人間には生まれつき「成長したい」「貢献したい」という欲求があるからです。アドラーはそう教えてくれました。

明日から、小さな一歩を踏み出してみませんか。「えらいね」の代わりに「ありがとう」を伝える。「早くしなさい」の代わりに選択肢を与える。「どうせできない」の代わりに「一緒にやってみようか」と声をかける。

その小さな変化が、子どもの人生を、そしてあなた自身の人生を大きく変えていきます。子どもを信じる勇気を持つこと。それが、アドラー流子育ての真髄なのです。


【著者プロフィール】
あい / アドラー心理学講師・著者
2児の母。アドラー心理学の実践で、たった3カ月で家族崩壊から家族円満へ変化。2024年起業。「思考のクセ診断」を開発し、100名以上の子育て・自己実現をサポート。関西・大阪万博登壇。国際アドラー心理学会(IAIP ASIA2026)日本代表。10ヶ月連続ベストセラー著書『アドラー流子育てやってみた』。Instagram: @ai_sensei_0310

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