台湾で25年間整体に取り組んできた治療家が語る「台湾の知られざる魅力」
大学卒業後に台湾に渡り中医学、鍼灸、推拿、気功を学び『美楽健康中心』を立ち上げた難波鉄也さん。久しぶりに日本に帰国した際に目の当たりにした台湾ブームに驚いたそうです。今回のコラムでは、25年間住んでいた経験から台湾の魅力について語っていただきます。
明るくてポジティブで親しみやすい台湾人の魅力
日本では台湾ブームがずっと続いていますね。これだけ長く続いているのは、一過性のブームではなくて、台湾人気は日本に定着したものになっているのでしょう。
私は去年、東京で行われた台湾イベントに出店参加したのですが、日本での台湾人気を目の当たりにしてびっくりしました。他の国のイベントは入場無料なのに、台湾イベントだけは有料。それにも関わらず、オープン前に入口から数百メートルの行列ができて、オープンとともに会場内はすぐに人でいっぱいになり入場規制が出ました。
台湾、なんでこんなに人気があるのでしょう。本格的な中華から屋台まで美味しい食べ物がたくさんあって、スイーツや果物も豊富で、香り豊かな烏龍茶もあります。お祭り気分が味わえる夜市や、散策が楽しい九分の街並みなど、楽しい場所もいろいろあります。
それらに加えて「人」、つまり台湾人の魅力も大きいでしょう。親しみやすくて明るくてポジティブで優しい台湾の人々。台湾人と話しているとほっとするし、元気がでます。
知名度がまったくなかった30年前
さて簡単に私の自己紹介をしておきましょう。私は大学卒業後に台湾にわたり、鍼灸などの中医学と足裏マッサージやカッピングといった伝統療法を学び、そのまま台北で治療家人生をスタートしました。
最初は恩師の鍼灸療術院で働いて、それから独立して整体とマッサージの店「美楽健康中心」を1996年に台北市の中心地にオープン。3年続けばいいかなとオープン当初は考えていましたが、お客さんやスタッフに恵まれて店の経営は順調。結局、店は25年続き、私も人生の半分以上を台湾で生活することになりました。コロナ流行を機に日本に戻り、今は日本で施術活動を行っています。
私が台湾に住み始めたのは1990年半ばですが、その時はもちろん台湾ブームなんてものはありません。台湾に住んでいる日本人は、駐在員とその家族、あとは留学生とちょっと怪しげなおじさんたちくらいで、若い日本人女性が行きたい場所ではまったくありませんでした。
台湾の飲食で日本で知られてるものは、せいぜい小籠包を知っている人は知っているかなくらいで、日本で流行ったタピオカミルクティーは当時はもちろん日本ではまったく知られてなくて、台湾在住の日本人の間でも、甘ったるいしタピオカの触感は気持ち悪いねなんて言ってました。
台湾人から学ぶ「健康面からくる幸せ」
台湾に住んでいる日本人が集まると、台湾や台湾人への文句で盛り上がることがお決まりでした。約束を守らない、時間にルーズで遅れてきても謝らない、いいかげんなどなど。
ただ面白いのは、文句を言ってはいても台湾が好きな人が多かったし、台湾の不便な点が我慢ならなくて早く日本に帰りたいと言っていた人でも、日本に戻ると「台湾がよかったな~、また台湾に行きたいな~」と言う人がよくいました。
そして実際、台湾での仕事や用事を終えて日本に戻ってからも、休みが取れると台湾に来る人が多くいました。台湾ブームこそありませんでしたが、当時から台湾には日本人がひかれる魅力があったのでしょう。そして、その魅力とは、食べ物や飲み物とかではなくて、台湾社会の雰囲気や、台湾人個々から感じるものだったと思います。
日本には日本の良さ、台湾には台湾の良さがあって、どちらが良いとは言えませんが、台湾の社会や人々が日本よりも活気があって元気がいいとは言えます。以前は日本のほうが台湾より所得水準がかなり高かったのですが、そんな時でも、楽しそう、健康そう、幸せそうなのは台湾のほうでした。
治療家の視点から、健康面で台湾社会や台湾の人々に学ぶことは多かったです。そんな話をこのコラムでしていけたらと思います。