耳の聴こえないメンタルトレーナー兼道化師パフォーマーが大切にしている「ユーモアと笑顔」
星野颯太さんは、ホワイトニングサロンのオーナー、メンタルトレーナー、道化師としてのパフォーマーの3つの顔を持っています。幼い頃から聴覚障がいがあり、日本でも数少ない聴覚障がいのメンタルトレーナー兼道化師パフォーマーとして知られています。異なる分野で幅広く活動する星野さんに、今の仕事をするきっかけや今後のビジョンについて伺いました。
聴覚障がい者の新たな可能性
現在、私は3つの顔を持っています。ひとつは、ホワイトニングサロンのオーナーとしての顔です。他には、メンタルトレーナーと、道化師としてのパフォーマーです。小さい頃から聴覚に障がいがあり、日本でも数の少ない聴覚障がいのメンタルトレーナー兼パフォーマーとして活動をしています。
ホワイトニングサロンは、JR吉祥寺駅北口から徒歩数分の距離に立地しています。手話対応も可能なので、全国各地からお客さまが来てくださっています。兄妹経営ならではの、アットホームな雰囲気のお店です。
メンタルトレーナーとしては、心理カウンセラーや心理学インストラクターなどの資格をいくつか保有しています。大学卒業後、企業の人事部に勤めている際に社員の健康状態を気遣うことがきっかけで取り組み始めました。会社員として仕事をしながら、RPGエンターテイメントスクールに通い、セラピーパフォーマンスの資格を取得しました。
道化師としてのパフォーマーは、高校の時に進学で悩んでる際、耳が聴こえない人たち向けにやっているパフォーマンス動画を、母から見せてもらったことがきっかけです。ドラマ『オレンジデイズ』で手話をレクチャーした、手話エンターテイメントグループのミュージカルを見たことが衝撃的でした。
自分の中で「耳が聴こえない=音楽が苦手」というイメージがありましたが、手話を使いながら踊って人々を楽しませている姿に新たな可能性を感じました。ミュージカルを見てすぐに団体のトップの人に「何か自分もサポートできないか?」と頼みこみました。
一緒に舞台をやることになったのですが、手話がなかなか覚えられず怒られてばかりで悔しい思いをしました。表現の勉強のためにYouTubeの動画を見ていたときに、大道芸に出会うことになったのです。
うつ病を克服し、メンタルトレーナーに転身
大道芸の道へ進みたいと思ったのは、言葉を使わないで笑わせる人たちがいることを知って「自分でもできる」と感じたからでした。小さい頃から人を笑わせるのが好きで、将来の夢に「吉本興業に入る」と言っていたこともあります。幼い頃からの夢もあり、現在では赤い鼻のピエロのパフォーマンスをやっています。
パフォーマーとしての勉強をしていた会社員時代、人事部に所属していたので社員の健康状態が丸わかりなのです。自分が想像していた以上に健康状態に悩んでいる社員が多く、「自分に何かできることはないか」と感じていました。
しかし、自分自身がアイデンティティやコミュニケーションに頭を抱えて、逆に私がうつ病になってしまいました。それでも自分と向き合って、本当にやりたいことは何かと深く考え、たどり着いた答えは「人を笑顔にさせること」でした。
その後、セラピーパフォーマーとして3年間続けましたが、仕事を抱え過ぎてキャパオーバーに。ちょうど新型コロナウイルスが蔓延していた時期だったこともあり、改めて自分自身を見つめ直しました。そして、「今の世の中で大切なのは人の心をケアすることだ」と考え、メンタルトレーナーとして独立することを決意しました。
自分の笑顔が相手を笑顔にする
メンタルトレーナーとして独立した当初は、不安がたくさんありました。しかし、それも自分の考え方次第です。嫌なことがあっても、価値観や自分の脳が決めつけているだけです。問題を別の角度から捉えてみることが重要です。無理にポジティブに捉える必要はなく、自分が笑える角度にしてみるだけで良いのです。
私の原動力となっているのは、「人の笑顔」です。特に、耳が聴こえない人は、コミュニケーションを取るときに相手の顔に注目します。相手の表情は自分の表情の合わせ鏡と言われるように、自分が笑っていたら相手も笑いますし、悲しい顔をしてたら悲しくなってしまいます。相手が悲しい表情のときこそ、「自分が笑顔になって相手を笑顔にしよう」と、やる気がみなぎってきますね。
今後の活動としては、パフォーマーのショーや、メンタルトレーナーとしての講演活動を広げていき、海外への展開も視野に入れています。
自分のモットーは、“ユーモア”と、“心の笑顔”です。「ユーモア×メンタル」「笑い×メンタル」を広げていく活動をして、最終的には疲れ果てた人が集まるライブハウスのような場をつくり、来た人が笑顔になるような空間づくりを目標としています。