「税務署は見ている。」の著者“おかん税理士“の~調査官目線を知って経営に活かそう!~vol.6
ワクセルコラボレーターで元国税調査官の“おかん税理士”こと飯田真弓さんに学ぶ、税務の知識。連載コラム最終回の第6回は、「調査官目線で確定申告のチェックをしよう!」というテーマです。調査官目線に立つことで、確定申告をより安全に乗り越えることができるでしょう。その秘訣を本コラムにて大公開します。
調査官目線で確定申告のチェックをしよう!
ワクセルのコラムをご覧になっている皆さん。
こんにちは。国税勤務26年、元国税調査官“おかん税理士”の飯田真弓です。
早いもので、この記事の連載は今回で第6回目となりました。記事を書いているのは令和4年の11月上旬ですが、web上にアップされるのは、令和4年の年末でしょうか。それとも、年が明けて令和5年に入ってからかも知れません。
実は、全6回ということでスタートした連載だったので、今回の記事で最終回なんです。ということで、まずは、ざっと過去5回の記事を振り返ってみたいと思います。
まず、第1回。第1回目は「みなさん初めまして!」ということで、飯田真弓の自己紹介とこの記事を書くにあたって思うところをお伝えしました。
第2回は、必要経費について、「そもそも必要経費とは…?」というところまで掘り下げて書かせていただきました。
第3回は、「家事費」についてでしたね。家事費という言葉を初めて聞いたという方がいらっしゃったかも知れませんが、フリーランスで確定申告をする際、押さえておきたい重要なキーワードだということをご理解いただけたかと思います。
第4回は、税務調査の最盛期である秋にちなんで、税務調査について書きました。
第5回は「可処分所得」について。可処分所得とは、どんな仕事をしていたとしても、ご自身が生活を維持するために、いくらのお金を処分しないといけないのかということでした。自分自身の可処分所得を知ることは正しく確定申告書を作成するための助けになるだろうということもお伝えしました。
どの回も、難解と言われている税法について、調査官目線を踏まえて、分かりやすくお伝えしたいという思いで書いてきたのですが、いかがだったでしょうか。
最終回の第6回は、今までの5回を踏まえて、確定申告書を作成する際の注意点、さらには、確定申告をする本当の意味について書いていきたいと思います。
確定申告はいつから準備する?
まずは、確定申告書の期間を確認しておきましょう。サラリーマンの還付申告は年が明けるとすぐに受け付られるのですが、事業所得者の場合は、2月16日から3月15日となっています。
「2月の半ばから受付が始まって、そこから1か月もあるんだから、そんなに慌てなくても、いいよね!」と思われた方、いらっしゃるかも知れません。
~1月は行ってしまって、2月は逃げて、3月は去って行く…~
という言い伝え、ご存知ですか?
年が明けると1月、2月、3月はあっという間に過ぎて行くということの例えです。1月はお正月気分でなかなか仕事に身が入らず、すぐに半分くらい過ぎて、2月はというと28日までということで、大の月と比べると3日も稼働日数が少なくなります。そんなことからも、確定申告書の作成準備は、年が明けたらすぐさま始めることをお勧めします。
そうは言っても、私の記事を読んで来られている方は、令和4年分の確定申告書は2月16日までに、既に出来上がっているのではないかと思っています。そんなハイレベルのみなさんに、第6回の記事では、さらなる助言をしたいと思います。
この連載記事のサブタイトル「調査官目線を知って経営に活かそう!」の“調査官目線”です。
過去の申告書と見比べることで見えてくる真実
令和4年分の所得税の確定申告書や青色申告決算書はお手元にありますでしょうか。令和4年に開業されたという方は今後の話になるのですが、確定申告書を提出する前に、次の作業をしてほしいと思うんです。
令和2年分、令和3年分の青色申告決算書の控えを引っ張り出してきましょう。
そして、今回、新しく作成した令和4年分の青色申告決算書とを横に並べてみるんです。さあ、3年分の青色申告決算書を眺めてみましょう。何か見えてきましたか?あまりたくさん宿題を出しすぎても、やらなかったら意味がないので、3つだけ、一緒に確認していきましょう。
1.勘定科目ごとの推移を確認する
2.独自に作成した勘定科目の記載の順番が同じかどうか確認する
3.雑費の金額が他の勘定科目に比べて目立って多くないか確認する
実は、この3つのことは、調査官たちがどの事案に調査に行くかを選ぶとき、実際に行っている作業なんです。
「そんな調査官の手の内を明かすようなことをして大丈夫なんですか?」
「国税当局から苦言されるのでは…?」
と心配してくださった方、ありがとうございます。
でも大丈夫です。青色申告決算書の上で、ちゃんとしている人がちゃんとしている感を出した方が、調査官たちが調査の選定の際に、無駄な労力を使わなくて済むことに繋がるので国税当局にとっても都合のいいことだと私は考えています。
1.勘定科目ごとの推移を確認する
⇒同じ勘定科目なのに、毎年、金額が大幅に違っている場合は、その勘定科目以外の経費が含まれている可能性がある。
2.独自に作成した勘定科目の記載の順番が同じかどうか確認する
⇒同じ勘定科目なのに、青色申告決算書に記載された順番が違う場合、毎年、その経費を対比して検討していない可能性がある。
3.雑費の金額が他の勘定科目に比べて目立って多くないか確認する
⇒家事費が含まれている可能性がある。
いかがでしょうか。少し、調査官目線の感覚がわかりましたか。さらに、勘の鋭い方は、この作業をすることによって、確定申告書を作成する際に行う、青色申告決算書を作成するという作業は、納める税金の計算をするだけのために存在するのではないということに気づかれたのではないでしょうか。
そうなんです。決算を組むというのは連綿と続く経営活動を1年間で区切って、その状況を診断し、今後の経営に活かすという作業なんです。
「そんなこと、わざわざ言われなくてもわかってるよ!」と思われたでしょうか。
「知っているだけ」と「実際にやってみた」のとは全然違います。是非、調査官目線でご自身の青色申告決算書をチェックしてみてください。
みなさんの今後の経営がよりよいものになるようにお祈りして連載を終えたいと思います。
長らくのご愛読ありがとうございました。