35%の真実
“ウールマン”という呼称でファッション業界で親しまれている、レダ ジャパン株式会社代表取締役の上野伸悟さん。本コラムでは『マイクロプラスティック汚染』がテーマ。マイクロプラスティック汚染の35%を占めている洋服の洗濯や、日本の取り組み状況や課題についてお話しいただきました。
マイクロプラスティック汚染とは?
「マイクロプラスティック汚染」と言う言葉を聞いたことはあるでしょうか?
世界の海では50兆個ものマイクロプラスティックが海を漂っています。マイクロプラスティックとは5ミリメートル以下の微細になったプラスティックを指し、海や河川を汚染し、生態系に影響を及ぼすと言われています。
マイクロプラスティックは汚染物質との相性も良く魚などに取り込まれ、私達の食卓へ運ばれてきます。マイクロプラスティックの人体への影響ははっきりとは解明されていませんが、免疫力の低下、アレルギー、肥満のつながりがあるという説があり、人は1週間にクレジットカード1枚分ものプラスティックを摂取していると言われています。
35%という真実
35%という数値、これが何を示しているのか、マイクロプラスティック汚染の35%がアクリルやポリエステルなどの石油由来の合繊繊維の洗濯から発生している事実をご存知でしょうか。
私達が日々行う、洗えるスーツやスポーツウェアなど合成繊維でできた洋服を洗濯する行為が直接、環境汚染に結び付いています。合成繊維は天然繊維よりも丈夫で安価、安定して供給できることから50年ほどで繊維製品の8割以上のシェアを獲得しました。安価なファッションが普及できたことも合成繊維の普及によるものです。
しかしながら、ここ数年に解明された落とし穴が明らかとなり、日本を除く世界ではファッションの脱プラ化が進んでいます。日本では残念ながら、この情報は公にはされず、何年も経ってしまいました。日本は合成繊維大国でもあり、合成繊維を取り扱う企業もビジネスの中心を担う商品を否定するような発言はできないのかもしれません。
サステナブルファッションで取り組まなくてはいけない課題
しかしながら、SDGsが急速に広まり、日本は先進国でありながらSDGs達成18番目の国と、先進国の中でもSDGsの面では遅れを取っています。SDGs先進国に追いつかなくてはなりません。
私達が働くファッション業界には、SDGsから派生した「サステナブルファッション」と言う言葉があります。残念ながら、すでに間違った方向に進んでいて、日本の繊維企業は1番大事な問題であるマイクロプラスティック汚染には直接取り組まず、リサイクル・アップサイクルという道を選びました。
産業を守るための苦肉の策なのか、リサイクルポリエステルも洗濯すればマイクロプラスティックを出しますし、リサイクルも永遠には行えません。生分解がないために(土に還らない)最後はゴミとして半永久的に残ります。
SDGsでは「12.つくる責任つかう責任」「14.海の豊かさを守ろう」「15.陸の豊かさも守ろう」を掲げており、正しい情報が公になるのは時間の問題です。企業も見て見ぬふりはできなくなりました。
ストローは自身の過ちを認め、脱プラが進んでいます。私たちの業界も繊維の脱プラを進めることが求められています。大手繊維メーカー、大手アパレルは今だけ良ければいいという考えは捨て、未来の子供たちへ地球というバトンを渡す為に努力しなくてはいけない瀬戸際に立たされています。地球はテレビゲームのようにリセットしてやり直すわけにはいきません。