江田 可愛 福田 達也 原 牧子 塚田 滉大
ワクセル
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「出版」と聞くと、特別な才能を持つ著名人や実績のある専門家だけに限られた挑戦だと感じてしまう方も多いのではないでしょうか。 しかし、自分の経験や大切にしている思いは、誰にとっても唯一無二の価値を持っています。 今回のトークセッションでは、株式会社スピード出版ラボ代表の福田達也(ふくだ たつや)さん、理工図書株式会社の原牧子(はら まきこ)さん、 そして理学療法士・画家・作家として活動する塚田滉大(つかだ こうだい)さんをお迎えしました。 ファシリテーターを務めるのは、PORIN合同会社代表の江田可愛(えだ かあい)さんとワクセル総合プロデューサーの住谷です。 「本を出す価値とは何か」「思いを言語化して届けるにはどうすればよいか」をテーマに、出版を身近に引き寄せるための実践的なヒントを語り合いました。
言語障害を乗り越えて届ける声!本を書く原動力と「なぜ書くのか」の重要性
江田:今回は出版に携わる専門家と実際に本を出された著者の方をお招きしています。まずは理学療法士であり、新刊『大切な人を、大切にする為に』を出版された塚田さんにお聞きしたいのですが、言葉の壁や大きなコンプレックスを抱えながらも、なぜ本を書こうと決意されたのでしょうか。
塚田:一言で言えば「人生で後悔したくない」と思ったからです。私は14歳のときに脳出血で倒れ、一度命を落としかけました。運動麻痺や視野の欠損だけでなく、重い言語障害(失語症)を患い、話すことも読むことも書くことも、人の言葉を理解することすらできない状態になったんです。その後、リハビリを通じてここまで回復することができ、医療従事者への恩返しとして理学療法士の道を選びました。 しかし、世の中には今も言語障害で伝えたい思いを言葉にできず、もどかしさや苦しみを抱えている当事者や、そのご家族がたくさんいます。言葉を失った経験がある自分だからこそ、そうした方々の代弁者や架け橋になれるのではないか。「言葉を話せなくなった人間でも本を書けるんだ」「誰でも乗り越えられるんだ」という勇気と希望を届けたいという強い思いが、執筆に向かう最大の原動力でした。
江田:塚田さんの強い思いが伝わってきます。スピード出版ラボの福田さんは、そうした著者の方々の伴走を数多くされていますが、本を制作するにあたって最も大切にされている視点はどのような点でしょうか。
福田:本の制作において最も根底にあり、一番大切にしているのは「なぜ書くのか」を明確にすることです。コラムや短い記事であれば、一つのトピックを通じて伝えたいメッセージを絞り込む形になりますが、一冊の本となると、読者に対してより大きな人生の変容や価値を提供することになります。だからこそ、「なぜ本を書きたいのか」「これを通じて読者にどう変わってほしいのか」「自分自身はどうありたいのか」という根本の動機を最初に徹底的に掘り下げます。ここが揺らいでしまうと、構成やメッセージ全体がブレてしまいます。 塚田さんの原稿も、もともと表現力や情熱が素晴らしかったのですが、読者がページをめくる期待感に寄り添えるよう、エピソードの配置や物語の構造を丁寧に整えるサポートをさせていただきました。誰に何を伝えてどう動いてほしいのかという「なぜ」が明確であれば、どんな人の経験からも力強いストーリーを紡ぎ出すことができます。
思いを形にする編集とタイトルの力!「読まれる本」を生み出す対話
住谷:本を形にしていくプロセスについて、理工図書の原さんにもお伺いしたいです。企画編集者として数々の書籍を手がけられる中で、企画を立てる際や著者と向き合う際に意識されていることは何でしょうか。
原:私は基本的に「自分が読みたい本」を企画の起点にしています。私自身、里親として子どもを育てている経験があるため、「どうすれば社会的養護の子どもたちが幸せになれるだろう」「里親制度への理解が広まるだろうか」という強い関心があります。その問題意識を社会に届けてくれる研究者や実践者の方を探し、直接お声がけして教科書的な良書を作るスタイルが多いですね。 持ち込みの企画であっても、福田さんと同じく「なぜこの本を出したいのか」を徹底して対話します。執筆の途中で言いたいことが散らばって軸がブレてしまう著者の方も少なくありません。その際は「最初に伝えたかったことは何でしたっけ?」と原点に立ち返り、一番伝えたい幹の部分に枝葉となるエピソードを積み重ねていく作業を一緒に行います。編集者と著者が対話を重ね、同じ熱量で一つの本を作り上げていく信頼関係こそが、本づくりの醍醐味だと感じています。
住谷:著者の思いを研ぎ澄ませていく伴走が大切なのですね。読者に届けるための「タイトル決め」や「見せ方」について、工夫されているポイントはありますか。
原:タイトルは、パッと見て「何が書いてある本なのか」が直感的にわかることを最優先にしています。現代は書店だけでなくWebやAmazonで本を探す読者が非常に多いため、検索キーワードを意識することは欠かせません。短いメインタイトルにする場合は、サブタイトルで中身を的確に説明するなど、読者が探している答えに確実に届く工夫をしています。本のタイトルや帯、前書きは、読者がその本を手にとるかどうかを決める極めて重要な要素です。
福田:私もタイトル作りには毎回深く向き合っています。私の場合はAIも活用しながら、内容に合わせたフレーズ候補を100個単位で洗い出し、読者の心に刺さる言葉の組み合わせを検証します。特に電子書籍やWeb展開ではSEOやブランディングの視点も重要になるため、「検索されるキーワード」と「著者の思いを端的に表すフレーズ」を両立させることを常に意識していますね。
面白さの本質は「共感」にある!五感を使った表現と伝わる文章術
江田:本を書くとなると、「面白く書かなければならない」「ウケを狙わなければならない」と気負ってしまう方も多いと思います。読者の心を引きつける「面白さ」とは、具体的にどう作っていけばよいのでしょうか。
福田:ビジネス書や実用書において、面白さの本質は決して「笑わせること」ではありません。読者が「あ、自分と同じだ」と感じる共感が生まれるかどうかがすべてです。共感が生まれると、本の中に書かれている他人の体験が「自分ごと」になり、深い学びに変わります。 特に読者が強く共感するのは、華々しい成功体験よりも「苦しかった時期や失敗をどう乗り越えたか」という泥臭いプロセスです。苦労を乗り越えた姿にこそ希望が宿ります。ふざけたエピソードを無理に入れる必要はなく、真摯に苦悩や葛藤、そしてそこからの学びを開示することこそが、読者にとって最高の「面白いコンテンツ」になります。
塚田:私もテクニックで笑わせる必要は全くないと思っています。読者への満足度を高めるために私が意識したのは「五感を使った身体表現」や「比喩表現」でした。 例えば、単に「緊張した」と書くだけではその場の臨場感は伝わりません。「胸をギュッと掴まれたような感覚になった」「顔がカッと熱くなった」というように、身体の感覚や情景描写を通して伝えることで、読者は追体験できます。「悲しい」を「目頭が熱くなった」と表現したり、お酒を飲みすぎた翌日の「頭がズキズキ痛む重苦しさ」のように、誰もが体感として知っている身体反応に落とし込むと、書き手と読み手の距離が一気に縮まります。自分の内側にある感情を丁寧に言語化し、読者と感覚でつながることが本質的な面白さにつながるのだと感じています。
出版は自分を棚卸しする最高の挑戦!最初の一歩を小さく踏み出すために
江田:出版という挑戦に興味を持ちつつも、あと一歩が踏み出せない方が多い印象です。皆さんが考える「本を出す価値」と、挑戦するための心構えを教えてください。
福田:出版は難しく思われがちですが、実はどなたでも挑戦できるものです。人は誰しも、自分の歩んできた仕事や人生について語れる独自の経験を持っています。お酒の席で昔の話や仕事へのこだわりを熱く語れるなら、すでに本一冊分の素材は自分の中にあるんです。 本を作る最大の価値は「自分自身の徹底的な棚卸し」ができる点にあります。自分がこれまで培ってきたスキルや経験、仕事への初心を整理して言語化することで、自分自身の輪郭がくっきりします。そして、それが一冊の信頼できる土台となることで、営業やブランディングにおいて強力な武器になります。最初は「何かを発信してみたい」という漠然とした思いでも十分です。壁打ち相手となるプロや環境を頼りながら、形にしていってほしいですね。
塚田:出版を始めるコツは、習慣化と同じで「最初の一歩のハードルを極限まで下げること」です。運動を始める時に「毎日1時間走る」と決めると挫折しますが、「まずは1分外に出てみる」なら誰でもできますよね。本を書くことも全く同じで、構えずに「今日思いついたことを1行だけメモしてみる」ことから始めればいいんです。 本を出す価値は人それぞれですが、自分にとって大切な思いを形にしたいという「本音」があるなら、迷わず挑戦してほしいと思います。私の書いた本も、日常の当たり前を失ったときにどう受け止め、どう前を向くかという視点を込めています。完璧を目指すのではなく、まずは小さな一歩を踏み出して、自分の思いを言葉にするプロセスそのものを楽しんでみてください。
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本記事は、スタンダードCollaboratorの江田 可愛さん、福田 達也さん、岡田 慶子さん、塚田 滉大さんと住谷さんとの座談会の内容です。 ワクセルCollaboratorの方は、トークセッションの収録から、YouTube動画制作およびトークセッション記事制作が可能です。
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