家を売らずに住まい方を売る――「人生を軽くする」平屋から広がる未来基準

三重・愛知を拠点に注文住宅事業を展開し、「くらしかた 未来基準」をテーマに暮らしそのものの価値を高める家づくりに取り組む株式会社サンクスホームさん。単なる性能やデザインの競争にとどまらず、住まい手のこれからの人生や地域との深いつながりまで見据えた独自の住空間を提案する大道氏に、常識を覆す商品開発の原点とこれからの地域を育むビジョンについてお話を伺いました。
スイートルームの衝撃から生まれた「16坪の平屋」

私はもともと美容業界の出身で、住宅業界へ飛び込んだ当初は高額な住まいを販売するにあたって、20代という若さゆえに信用を得られず苦戦の連続でした。当時は個人の努力とコミュニケーション能力を頼りに実績を積み上げていましたが、業界の旧態依然としたあり方にはずっと違和感を抱いていました。
一般的な住宅業界では、競合他社がファミリー層に向けて「広さ」「安さ」「デザインの良さ」「基本性能」といったスペック競争に終始しています。しかし、多額の加盟金やロイヤリティを支払うフランチャイズ(FC)に加盟しても、結局はデザインを他社に模倣され、コモディティ化の波に飲み込まれてしまう現実を目の当たりにしてきました。
さらに、日本の世帯構造は確実に変化しています。かつて主流だった親2人・子2人の4人家族は減少し、単身世帯や少人数世帯が増加しています。私が飛び込んだ頃は平均40坪ほどあった住宅が、今や30坪前後に縮小しているにもかかわらず、供給側は変わらず「大きな家」を売り続けようとしていたのです。
転機となったのは、伊勢志摩サミットでも使用されたホテルのスイートルームに宿泊したときのことでした。リビングのソファに腰掛けた瞬間、すぐ背後にベッドルームがあり、その先に水回りがあるという無駄のない完璧な生活動線に衝撃を受けました。
「この無駄のない動線と心地よさを一軒家に落とし込めば、人の暮らしは劇的に豊かになるのではないか」
そう直感して開発したのが、16坪・0LDKの平屋「LIMINI(リミニ)」です。家を過剰に大きくするのではなく、暮らしを徹底的にシンプルにする。住宅ローンのために日々の趣味や楽しみを我慢するのではなく、車や旅行にお金をかけながら無理なく家を持てる、まさに「人生を軽くする住まい」の形でした。
当時、16坪という常識外れの小ささで平屋を打ち出した際は、社内外から「そんなものが売れるのか」と疑問視されました。ところがモデルハウスを建てて1カ月ほど経つと、爆発的な反響が寄せられたのです。購入してくださったのは、私たちが当初想定していた層だけではありませんでした。シングルマザーの方、広い実家を持て余していた高齢の単身者、さらには「賃貸のアパート代を払い続けるくらいなら」と決断してくれた26歳の未婚男性など、従来の住宅業界がこぼれ落としていた方々が熱烈に支持してくれたのです。
属人性を手放し、「家ではなく住まい方を売る」仕組みへ

LIMINIの手応えを得た一方で、直面したのが「組織としての再現性」という壁でした。当初、この住まいの価値を伝えられたのは私一人だけで、営業担当者たちに任せようとすると、どうしても「もっと収納を増やしましょう」「部屋数を足しましょう」と、これまでの慣れ親しんだ注文住宅の土俵にお客様を引き戻してしまっていたのです。
しかし、一人の傑出したトップ営業マンが20棟を売る組織はスケールしません。会社を強くするためには、「毎年確実に10棟を販売できる人を10人育てる」再現性のある仕組みが不可欠です。そこで私は、「家そのものを売らない」という営業スタンスを徹底して組織に落とし込みました。
スペックや設備を売ろうとすれば、資本力のある大手ハウスメーカーとの比較競争に巻き込まれます。そうではなく、その空間でどのような時間を過ごし、どのような毎日を送れるのかという「住まい方」の世界観を徹底してイメージしていただく。この思考動線を整えたことで、入社1年目の新人が年間14棟を受注できる強固な育成基盤が完成し、入社当時は年間約30棟規模だった会社は、年間約120棟規模へと大きく成長を遂げました。
この「住まい方を届ける」思想は、LIMINIの全国展開や情報発信でも一貫しています。従来の型にはまったパッケージを押し付けるFCモデルとは異なり、私たちは提携先の地域工務店が持つ強みを消さないアライアンスを組んでいます。寒冷地で断熱技術に長けた会社であれば断熱性能を付加し、関東であればサウナやプール、あるいはペット仕様を掛け合わせるなど、核となるLIMINIをフックにしながら各社の強みを活かせる余白を大切にしています。
また、2025年から住まい方の提案に特化して本格始動したSNS(Threads)では、わずか3カ月でフォロワーが1万2,000人を超えました。家を諦めかけていた方や、実家のあり方に悩んでいた方々に「こんな軽やかな生き方がある」と届いた結果であり、場所を問わず共感の輪が広がり続けていることを確信しています。
「自分が一番幸せでいること」から始まる地方創生と未来

新しい挑戦を形にしようとするとき、周囲や身内から否定的な声が上がることは珍しくありません。それでも突き抜けるために私が大切にしてきたのは、「夢を常に言葉にし、自分だけは信じてやりきること」です。リーダーが確信を持って熱量を行動で示し、結果を出して初めて、人は「本当にできるんだ」と気づき、自然と仲間が集まってきます。
そして、その挑戦の根底にある私の生き方の軸は、「まず自分自身が一番幸せでいること」です。
誰かのためにと自分を後回しにして疲弊してしまっては、周囲に良い影響を与えることはできません。自分が一番充実し、満たされた最高の状態でいてこそ、そのポジティブなエネルギーが家族や社員、お客様へと波及していきます。家づくりにおいても同じです。「子どものために」と親が動線の悪い間取りで家事に追われ、ストレスを溜めていては本末転倒です。親が心地よく幸せに暮らしている背中を見てこそ、子どもは安心して伸びやかに育ちます。
これからの時代、住まいの役割は単なる「寝起きする箱」から、住むことで健康や幸福を実感できる「ウェルビーイング」の場へ、そして家族が「もっと新しいことに挑戦したい」と意欲を湧かせる「フローリッシング(自己開花)」の空間へと進化していくべきだと考えています。
住まいは暮らしの基盤であり、地域そのものです。現在、三重県でも多くの若者が大都市へと流出しています。だからこそ私たちは、家を建てるだけに留まらず、地元企業とのタイアップ、スポーツ大会や地域イベントの共催、さらには自社の研修用倉庫を活用して通常10年かかると言われる職人を1年で一人前に育てる早期育成など、地域を巻き込んだ取り組みを加速させています。
自分が満たされ、暮らしが軽やかになり、次の挑戦へと踏み出せる住まいを届けること。そして建築の面白さを伝え、若者が誇りを持てる魅力的な地域を創ること。これからも自らの確信を言葉にし、地域に必要とされる「未来基準の暮らし」を切り拓いていきます。