なぜ今アドラーなのか? 令和に人気の理由を専門家が解説

あい

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2025.12.10
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アドラー心理学を用いた、子育て・起業・Kindle出版サポートをしている、あいさんの連載コラム第1弾です。ストレス社会を生きる私たちにとって、アドラーの教えは単なる理論ではなく、明日からの生き方を変える実践的なツール。今回のコラムではアドラー心理学が現代でも人気である理由をまとめていただきました。

100年前の心理学が、令和に刺さる理由

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2013年に出版された「嫌われる勇気」は、累計500万部を超えるベストセラーとなりました。しかし、なぜ1920年代に生まれたアドラー心理学が、100年の時を経て、令和の日本でこれほどまでに支持されるのでしょうか。

その答えは、現代社会が抱える深刻な課題と密接に関係しています。厚生労働省の調査によれば、メンタルヘルスの不調を訴える労働者の割合は年々増加しており、特に20〜30代の若年層で顕著です。SNSの普及により、私たちは常に「他者からの評価」にさらされ、承認欲求と劣等感の狭間で苦しんでいます。

アドラー心理学の最大の特徴は「他者の評価から自由になる」という考え方です。「課題の分離」という概念は、自分の課題と他者の課題を明確に区別し、他者の期待に振り回されない生き方を提案します。これは、SNS疲れや過度な同調圧力に悩む現代人にとって、まさに必要とされる視点なのです。

また、コロナ禍を経験した私たちは、人とのつながりの重要性を再認識しました。アドラーが提唱する「共同体感覚」は、孤立ではなく、健全なつながりの中で自分らしく生きる道を示してくれます。リモートワークが普及し、人間関係が希薄化する中で、この考え方は新たな意味を持ち始めています。

実際、書店の心理学コーナーでは、アドラー関連書籍が常に上位にランクインしており、SNSでも「#アドラー心理学」のハッシュタグで日々、実践報告が投稿されています。Z世代を中心に、「自分らしく生きる」ことへの関心が高まる中、アドラーの教えは時代を超えた普遍的な価値を持っているのです。

フロイト、ユングと何が違う?アドラー心理学の核心

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心理学の三大巨頭と呼ばれるフロイト、ユング、そしてアドラー。同時代を生きた彼らですが、その思想は大きく異なります。アドラー心理学の革新性は、「原因論」ではなく「目的論」で人間の行動を理解する点にあります。

従来の心理学、特にフロイトの精神分析では、「なぜそうなったのか」という過去の原因を探ります。たとえば、「幼少期のトラウマが原因で、今、人間関係がうまくいかない」という考え方です。一方、アドラーは「何のために、その行動をしているのか」という未来志向の目的論を提唱しました。

具体例で考えてみましょう。子育て中の母親が、毎日子どもにイライラしてしまうケース。

原因論的アプローチ:「私の母親も厳しかったから、私も同じように怒ってしまう(過去のせい)」

アドラーの目的論:「イライラすることで、子どもを支配し、自分の言うことを聞かせようとしている(今の目的)」

この違いは決定的です。原因論では「過去は変えられない」ため、解決策が見えにくくなります。しかし目的論では、「その目的を達成する別の方法」を選ぶことができるのです。イライラせずとも、子どもと対等に話し合うという選択肢が生まれます。

もう一つの核心概念が「劣等感」の捉え方です。フロイトは劣等感を病理的なものと見なしましたが、アドラーは「誰もが持つ、成長の原動力」と位置づけました。「理想の自分」と「現在の自分」のギャップを感じるからこそ、人は前に進もうとする。劣等感は悪いものではなく、むしろ人生を豊かにする源泉なのです。

ただし注意が必要なのは、「劣等感」と「劣等コンプレックス」は別物だということ。劣等コンプレックスとは、劣等感を言い訳にして行動しない状態を指します。「私は学歴がないから成功できない」と決めつけてしまうケースです。アドラーは、この思い込みこそが問題だと指摘します。

このように、アドラー心理学は「過去に縛られず、今ここから変われる」という希望のメッセージを私たちに届けてくれるのです。

家族に実践して分かった、アドラーが変える3つのこと

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理論は理解できても、「実際に人生は変わるの?」という疑問を持つ方も多いでしょう。私自身、2年前まで毎日イライラし、家族関係が崩壊寸前だった一人の母親でした。しかしアドラー心理学を実践した結果、わずか3カ月で家族関係が劇的に改善し、最終的には、働き方や友人関係まで、人生が180度変わってしまいました。実践を通じて見えてきた、アドラーが変える3つのことをお伝えします。

①相手の行動には、必ず「良い意図」がある

アドラー心理学を実践して最も衝撃を受けたのが、この視点です。どんなに理解できない行動でも、相手には必ず「その人なりの良い意図」があるという考え方。これを知ったとき、人間関係の見え方が180度変わりました。

たとえば、夫が家事育児を手伝わずにダラダラしている場面。以前の私なら「なんで私ばっかり!」と怒りが湧いていました。しかし、「この行動に、どんな良い意図があるんだろう?」と一旦立ち止まって考えてみる。すると、「仕事で疲れているから休みたい」「リラックスして心の余裕を取り戻したい」という本人なりの目的が見えてきます。

子どもが宿題をせずにゲームばかりする場合も同じです。「楽しみたい」「達成感を得たい」という良い意図がある。その意図を理解した上で、「宿題を終えたらゲームできるよ」と提案すれば、感情的にならずに済みます。

この視点を持つだけで、イライラが驚くほど減りました。相手を責めるのではなく、「どうしたらお互いが満足できるか」を考えられるようになったのです。アドラーが言う「相手の目で見て、耳で聞いて、心で感じる」傾聴の姿勢こそが、すべての問題解決の鍵だと実感しています。

②「できていないこと」ではなく「当たり前にできていること」に目を向ける

私たちは無意識に、できていない数パーセントにばかり目を向けてしまいます。子どもが10個の良いことをしても、1つのミスを指摘してしまう。夫が9割協力的でも、1割の不満が気になってしまう。この習慣こそが、不幸の原因だとアドラーは教えてくれました。

アドラー心理学の実践を始めてから、意識的に「当たり前にできていること」に注目するようにしました。朝、子どもが自分で着替えた。夫が仕事に行ってくれている。自分が健康に過ごせている。蛇口をひねれば水が出る。こうした日常の当たり前は、実は奇跡の連続なのです。

この視点を持つと、不思議なことが起きます。感謝の気持ちが自然と湧いてくるのです。「ありがとう」の言葉が増え、家族の雰囲気が柔らかくなりました。子どもも、できないことを指摘されるのではなく、できていることを認められることで、自己肯定感が育っていきました。

現代は情報過多で、つい他人と比較してしまう時代です。SNSを見れば、キラキラした誰かの生活が目に入ります。しかし、今の自分を取り巻く環境に改めて注目することで、「私はすでに十分に満たされている」と気づくことができます。幸せは、遠くにあるのではなく、今ここにあったのです。

③過干渉をやめ、「ちょっとだけ見守る」課題の分離

現代の子育ては、過干渉になりがちです。教育熱心な親が増え、習い事や受験、将来への不安から、つい子どもの人生に深く介入してしまう。私自身もそうでした。子どもの宿題、友達関係、生活習慣、すべてをコントロールしようとしていたのです。

しかしアドラーの「課題の分離」を知り、考え方が変わりました。「これは誰の課題か?」と問いかける習慣をつけたのです。

宿題をしないのは、誰の課題でしょうか?最終的に困るのは子ども自身です。つまり「子どもの課題」。親ができるのは、環境を整えたり、「手伝おうか?」と声をかけることまで。強制したり、代わりにやってあげることではありません。

この「ちょっとだけ見守る」距離感が、子どもの自立心を育てます。最初は失敗するかもしれません。でも、その失敗から学ぶのが成長です。親が先回りして失敗を防いでしまえば、子どもは自分で考える力を失ってしまいます。

職場でも同じです。部下の仕事、同僚の態度、上司の機嫌。これらは「他者の課題」です。自分にできるのは、必要なサポートをすることだけ。他者の課題に土足で踏み込まないことで、人間関係のストレスが激減しました。

「ちょっとだけ見守る」。この絶妙な距離感こそが、相手を尊重し、自分も楽になる、アドラー流の人間関係の極意なのです。

明日から始める、アドラー流の生き方

100年前に生まれたアドラー心理学が、令和の今も色褪せない理由。それは、人間の本質的な悩みに向き合い、「今ここから変われる」という希望を示してくれるからです。

過去のトラウマに縛られる必要はありません。他者の評価に振り回される必要もありません。劣等感を抱えながらも、一歩ずつ前に進むことができます。そして何より、誰かの役に立つことで、自分自身が幸せになれるのです。

アドラー心理学は、難しい理論ではなく、明日からの生き方を変える実践的なツールです。まずは小さな一歩から。今日、家族に「ありがとう」と伝えてみる。子どもの宿題を見守ってみる。夫の行動に良い意図を探してみる。そんな小さな実践が、あなたの人生を大きく変える第一歩になるはずです。

令和のストレス社会を生き抜くために、アドラーの知恵を、ぜひあなたの人生に取り入れてみてください。

【著者プロフィール】

あい / アドラー心理学講師・著者

2児の母。アドラー心理学の実践で、たった3カ月で家族崩壊から家族円満へ変化。2024年起業。「思考のクセ診断」を開発し、100名以上の子育て・自己実現をサポート。関西・大阪万博登壇。国際アドラー心理学会(IAIP ASIA2026)日本代表。10カ月連続ベストセラー著書『アドラー流子育てやってみた』。Instagram: @ai_sensei_0310

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