
老化の原因は日常生活に潜んでいる
皇居での勤労奉仕をきっかけに、歴史への苦手意識を克服した奥山貴成さん。今回は連載コラムの第3弾です。戦争の悲劇や多面性から目を背けずに向き合う中で、「体力」こそが未来を力強く歩むための鍵だと気づきます。歴史から学び、日々の生活を前向きに生きるための、心と体の繋がりについて奥山さんの考察が語られます。
女性でも男性でもできることなら「老けたくない」と思う気持ちは同じですよね。
それでも、「年を重ねれば体が衰えるのは仕方ない」と、どこかで思い込んでいないでしょうか。
たしかに年齢そのものは止められません。
でも、年を重ねたからといって、必ずしも体が衰える必要はないのです。
僕たちの体は毎日の積み重ねで良くも悪くもつくられていきます。
健康の話になると、食事や睡眠、トレーニングなどがよく取り上げられますよね。
もちろんそれらはとても大切です。
でも今回はもっと気軽に、今日から取り入れやすい「日常生活での工夫ポイント」をお伝えしていきたいと思います。
特別な準備や手間は必要ありません。
いつもの生活の中でちょっとしたポイントに目を向けるだけで、体は若々しく、美しく、かっこよく保つことができます。
いわゆる“未病”といわれる不調も、こうしたポイントを取り入れることで緩和・改善が期待できます。
ぜひこのコラムを読み実践してみてください。
まずは、体を老けさせる原因をはっきりさせましょう。
何が肉体を老いへと傾けるのかが分からなければ、効果的な対策はできません。
老化の原因は呼吸の浅さ
結論から言うと、「呼吸の浅さ」が肉体を衰えさせる大きな要因です。
裏を返せば、日常で呼吸が深くて快適であれば年齢を重ねても体が大きく衰えることはない。ということです。
「呼吸が大切」という話はよく耳にしますよね。
「そんなの知ってる。呼吸しなきゃ生きていけないし」
「ヨガや太極拳で意識してるよ」
「たまに深呼吸って大事だよね。鬼滅の刃でも呼吸が大事だし」
なんて声も聞こえてきそうです。
でも、「呼吸が深いと具体的にどんな良いことがあるのか」まで知っている人は意外と少なかったりします。
なので、まずは呼吸が深くなる主なメリットを確認しておきましょう。
・ストレスや緊張がほぐれる
・リラックスできる
・自律神経が整い、心身が落ち着く
・睡眠の質や体力・集中力が向上する
・血行や代謝が良くなるので、健康・美容・疲労回復に役立つ
・集中力・免疫力アップ
・内臓や脳の働きもサポートされる
これはメリットなので、逆に呼吸が浅くなるとこれらが反対方向に傾いてしまいます。
体を若々しく保つうえで、いちばんやっかいなのはストレスです。
そして僕たちの体は、ストレスを感じると呼吸が浅くなり、また浅い呼吸そのものをストレスであると感じるようにできています。
だからこそ、若さと健康を守るためには「呼吸の深さ」が欠かせないのです。
ワークをする前に「深い呼吸のメリット」「浅い呼吸のデメリット」を知っておくことはとても大切です。そうすることで、ワークで起きる小さな変化の意味が、よりクリアに感じ取れるはずです。
呼吸は、「していれば生きている」「止まれば死んでしまう」といった単純な話ではありません。
同じ“生きている”でも、呼吸が深ければ若々しく快適に生きられます。反対に、呼吸が浅いままでは体は衰えやすく、日々をしんどく感じてしまいやすくなります。
ぜひこのあとご紹介するワークで起きる呼吸の変化という“体験”を大切にし、これからの暮らしの指針や、日常の工夫ポイントとして役立てていただけたらと思います。
日常で呼吸が浅くなる落とし穴
それでは実際の体感ワークをやっていきましょう。
一緒に試してみてください。
まずは、立っている状態で鼻から大きく息を吸ってみましょう。
このとき腹式や胸式などの細かい呼吸法は意識しなくて大丈夫です。
どれだけ気持ちよく大きく吸えるかを確かめます。
次に、椅子に座って同じように鼻から大きく吸ってみます。
立っていたときと同じように吸えるか比べてみてください。
立っているときと椅子に座っているときで、吸いやすさに違いを感じられるはずです。
もしよく分からなければ、もう一度、立ってから吸う→座ってから吸う、を交互に試して、息の吸いやすさを確認してみてください。
おそらく、多くの方が「立っているときのほうが吸いやすい」「座ると呼吸が浅くなる」と感じたのではないでしょうか。
つまり、椅子に座ること自体が小さなストレスになっており体を衰えさせる一因になっている、ということに気づけます。
現代は「ストレス社会」と言われますが、その大きな要因のひとつは、“椅子に座る生活環境にある”と言っても過言ではありません。
だからこそ最近は、企業で昇降式のスタンディングデスクを取り入れるなど、座りっぱなしを減らす工夫が広がってきています。
「椅子に座るという当たり前の行為が、実は体を衰えさせていたかもしれない」この気づきはとても大切です。
気づけたからこそ、「なるべく座らないようにしてみよう」なのか、「座るときの工夫をしてみよう」なのか、自分に合った改善策を考えられるようになります。
とはいえ、すぐに椅子を手放したり、座らない生活に切り替えるのは難しい方が多いですよね。
そこで次は、椅子に座りながら呼吸を浅くしないための工夫ポイントを、実際に体で確かめてみましょう。
椅子に座った状態でのワークです。
まず、椅子に「なるべく浅めに」腰掛けてみてください。
その姿勢で鼻から大きく吸い、吸える量や気持ちよさを確かめます。
次に、椅子に「深く腰掛けて」、いわゆる“きちんと座った”状態で同じように吸ってみます。
浅めに座ったときと比べて息の吸いやすさはどうでしょうか。
一度で分からない場合は、浅めに座る→深く座るを何度か繰り返し、それぞれの呼吸の違いを確かめてみてください。
きっと、多くの方は「浅めに座ったほうが吸いやすい」「深く座ると呼吸が浅く感じる」と気づけると思います。
(もし浅めに座っても呼吸が浅いままで、あまり変化が感じられない場合は、股関節や背骨に課題がある可能性も高いので、気になるようでしたら一度ご相談ください。)
これまでの教育やしきたり、習慣の中で身につけてきた「普通」「当たり前」が、実は呼吸を浅くし、体を衰えさせている。
この事実に向き合う必要があります。
生活習慣では急激な変化は起こりません。
そのぶん、じわじわと蓄積して、気づいたときには「年齢のせいかな」と感じてしまいがちです。
でも、呼吸という視点で見直すと、どこで自分の身体機能を削っているのか、受けなくてもいいストレスを受けてしまっているのかに気づき、対処できるようになります。
人が生きていくうえで欠かせない呼吸だからこそ、今一度、呼吸に意識を向けるきっかけになれば嬉しいです。
「体は日常の積み重ねでつくられる」というシンプルな考え方もどうか大切にしてください。
引き続き、人生という長いスパンでの体づくりを一緒に考え、健康で快適に、そして美しく、かっこよく生き続けるためのお手伝いができたらと思います。
