企業研修にも導入!”自分史”で描く「本当の自分」とキャリアの選択肢

柳澤 史樹

柳澤 史樹

2024.10.15
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柳澤史樹(やなぎさわふみき)さんは、教育業界、海外タレントのプロモーターなどを経てライターに転身。多数のインタビューを通じて人の軌跡である「自分史」の価値に気づき、自分史活用アドバイザーの資格を取得しました。その後、企業向けプログラム『マインドフルカフェ』を開発し、受講者のキャリアに活かす取り組みを広げています。本記事では、柳澤さんの活動の原点や、自分史が持つ可能性について伺いました。

自分史活用アドバイザーとしての歩み

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自分史活用アドバイザーの柳澤史樹と申します。みなさんは「自分史」という言葉をご存じでしょうか?この概念は、歴史学者の色川大吉先生が1975年に出版された『ある昭和史: 自分史の試み』から始まり、特にシニア世代を中心に広がりを見せてきました。

一般的には「自分史」とは、お年寄りが人生を振り返り、その記録を残すものと認識されています。確かに人生の終末期に自身の経験をまとめるという目的もありますが、私は多くの人の取材を通じて、自分史にはもっと未来志向の意味があると感じています。

過去の軌跡を振り返ることで、現在の自分を再確認し、これからの人生をどのように生きていくかを主体的に考えるためのものが、私にとっての自分史です。年齢に関係なく取り組めるものであり、そのプロセスや得られるエッセンスこそが重要だと考えています。

この考えに基づき、2016年には自分史活用アドバイザーの認定講座を受講し、自分史が単なる書籍やシニア向けのものにとどまらない、もっと大きな可能性を持つ概念だと確信しました。「これこそ私が自分史に魅力を感じた理由だったんだ!」と感動したのを今でも覚えています。

資格を取得してから、個人向けの講座を始めましたが、ビジネスとして広げていくためには企業研修という形にする必要があると考えました。1回の講座で「自分らしさに気づきましょう」と伝えても、それだけではビジネスとして成立しにくいのです。

しかし、自分史は個人の内面的な部分につながるもので、企業に対してその価値を理解してもらうのは難しいと感じていました。社員が本当の自分らしさに気づいてしまった結果、「こんなところにいるべきではない」と会社を辞める可能性もあるからです。そのため、企業からの導入を進めるのは壁にぶつかりました。

起業研修プログラム『マインドフルカフェ』

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そんな中で2017年頃に、私が住んでいる地域で、移住者が集まるコミュニティをつくっている人たちと出会いました。そこで、独立した組織開発コンサルタントや女性事業家の友人たちが、同じように企業研修プログラムを考えていることを知りました。

彼らのプログラムには、個々の内面と仕事をつなげる部分が不足していると感じ、私は自分史を活用できると考えました。その結果、『マインドフルカフェ』というプログラムを共同で開発することになりました。

マインドフルカフェは、個々の「在り方」を再認識させ、それを日々の仕事やお客様との関係に結びつけることを目指しています。参加者は新たな自分の側面を発見し、本質的な目標の達成をサポートされるという、人材開発を目的とした取り組みです。

その後、友人の紹介で研修会社につながり、無料セミナーやパイロット版の実施を経て、当時のソニーの社員向けに社内講座を実施。非常に良い反響を得て、「これだ」と確信しました。しかし、スキル型の研修と違って「自分らしさに気づき、それを仕事に生かす」という研修は売りにくく、企業に理解してもらうのに時間がかかりました。

そこからコロナ禍がやってきて、対面での実施を断念せざるを得ませんでした。逆にそれが私たちにとって追い風となり、オンライン化することでコスト削減にもつながりました。そして社会全体が「キャリア自立」や「人的資本経営」を求めるようになり、私たちの取り組みが注目され始めたのです。

ようやく2020年に最初のお客様が現れ、それは一部上場のお菓子メーカーでした。その企業はキャリアサポートセンターという新しい部署を設立し、私たちのプログラムに興味を持ってくれました。そこから徐々に売上もあがってきています。

もちろん、まだまだビジネスとしての利益は十分ではありませんが、私たちにとっては大きな意義がある取り組みです。社会の変化に合わせ、これからも加速していきたいと考えています。

自分史を通じて、頑張っている人を応援したい

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私の大きな目標は、「自分史を通じて頑張っている人を応援すること」です。マインドフルカフェ立ち上げの経験を通じて、お金では得られない信頼できる友人が増え、自分なりのスタンスを貫いてきました。

会社勤めを続けながら、社会人になってから友人を作ることができず、不安を抱えて生きている方も多くいらっしゃると思います。そうした方々は、誰にも相談できないまま悩み続ける人生になってしまう可能性があります。自分の価値に気づけず、自身を否定したり卑下したりする人が一人でも減り、一人ひとりが輝く人生を送れるように貢献したいと考えています。

私自身、自分が何者であるかについて誰よりも深く考えてきた自負があります。自分史には、その人自身が持つ良さや長所がたくさん現れます。こちらから何かを教えるのではなく、その人自身が自らの価値に気づき、自分らしく主体的に生きることをサポートできれば幸いです。

そういう人が増えれば、社会はより良くなり、日本がもっと元気になっていくと信じています。私は、その実現に残りの人生を費やしたいと心から願っています。