日本人の健康リテラシーを高める“健幸”アンバサダーが描く未来
土屋厚子さんは保健師として特定健診・特定保健指導を担当し、現在も地域の健康づくりのため活動をしています。静岡県の健康福祉部で理事・保健師を担当されていた経験もあり、県内の保健活動サポートもしています。そんな土屋さんが大切にしていることや今後の展望についてお話しを伺いました。
健康に対する意識と現状
私の活動の根幹は、健康に関して無関心な層に対して、健康づくりの大切さを伝えることです。健康に関するあるアンケートによると、現在の日本では約7割の人が自身の健康に無関心であるというのが実情です。人は「自分は大丈夫だろう」と楽観的に考えがちで、過度の飲酒や暴飲暴食をしても気にしない傾向があります。
ニコチン依存症の人も、「いつでもやめられるし、自分は大丈夫だろう」と考えることが多いです。ほとんどの人は自分の健康状態を深く知ることを避け、真実を知ることを恐れています。
そうした人々でも、無意識のうちに健康を向上させる環境づくりに取り組んでいます。たとえば、健康的な環境に住むことで、健康寿命が延びるという研究結果があります。緑豊かな公園の近くに住むと健康寿命が数年伸びるといったデータも存在します。
また、アメリカでは治安の良い地域に住むことが健康寿命に影響するとされ、このような環境づくりや街づくりが推進されています。
健康に興味を持ち始めたきっかけ
私は昔から健康に対してというよりは、看護師という職業に憧れがあったのです。看護師の免許を取得した後、さらに1年間の勉強を経て保健師の資格を取得しました。
健康への関心が芽生えたのは小学生の頃で、学校を休む同級生に給食のパンを届けたり、その頃から保健師のように家庭訪問を行うこともありました。そのなかで、アルコール依存症の父親を持つ子や、母子家庭で地域に馴染めない子と話をすることもありました。
勉強についていけない子には宿題の手伝いをし、その中で「心身の健康がなければ、生活することは難しい」と感じるようになったのです。幼い頃からこの道を選んだ自分には違和感がなく、自然と健康の分野に進むことを決めました。
健幸アンバサダーとしての役割
健幸アンバサダーとしての私の役割は、“健康”と“幸せ”を伝えることです。日本人の平均寿命の推移や、健康リテラシーの重要性など、科学的根拠に基づいた情報を広めています。
たとえば『ピロリ菌』について、どのようなことをご存知でしょうか。以前、日本人で最も多かったがんは胃がんで、ピロリ菌が慢性胃炎を引き起こし、がんの一因となっていました。ピロリ菌の駆除によりがんリスクが減少し、知識を持つことで病気の予防につながります。
また、腰痛は健康寿命と密接に関連しており、痛みがある人は健康寿命が短くなる傾向があります。他にも日光浴とうつ病の相関関係など、健康リテラシーの向上を目指す活動も行っています。
健康についての知識や健康づくりの重要性を、子供たちに伝えることも私の目標です。たとえば、「体内の大腸菌は食物繊維を好む」といった情報を通じて、自身の体に関心を持つよう促したいです。自らの健康づくりに努めることで、日本の未来に寄与し、国民の健康寿命の延伸に貢献したいと考えています。