経営者対談

『AfterBlue』代表
渡邉駿 × ワクセル

今回のゲストは、サステナブルブランド『AfterBlue』代表・渡邉駿さんです。原材料にごみや廃棄衣類などを利用しており、ビーチクリーンの活動もされています。海ごみのことをひとりでも多くの人に知ってもらいたいと、地元湘南で立ち上げたきっかけや今後の展開についてお話しを伺いました。

海ごみを利用したサステナブルブランド『AfterBlue』の立ち上げ背景

watanabe-shun-waccel 渋沢:今回のゲスト渡邉さんは、2021年にアパレル商品を中心としたAfterBlueを地元湘南で立ち上げ、現在は会社員として働きながら、同ブランドのオンラインショップを運営し、海ごみのことをひとりでも多くの人に知ってもらうために活動されています。

住谷:海ごみにはいろいろあるそうですね。ペットボトル以外のものも落ちているとか。

渡邉:そうなんです。こんなものが?と思うほど、いろいろなものが落ちています。入れ歯が落ちていたときもありました(笑) どこから来たごみなのかなとか、意外にごみにもストーリーを感じたりします。

渋沢:では、今回はアパレルブランドのことを中心に聞いていきたいと思います。

渡邉:私は地元が湘南で、地域ブランドのような形で立ち上げました。基本的には再生素材やオーガニックコットンなど、できるだけ環境に負荷のないものを使って服を作っています。

サーフィンが趣味でビーチクリーン活動もしているのですが、毎日拾ってもごみがなくならず、「拾うだけじゃもうダメだ、知ってもらうしかない」と思ったんです。

ただ、言葉で言っても興味がない人には伝わらない。興味を持ってもらうにはどうしたら良いかと考えたときに、服だったらみんな着るし、興味を持つ人がいるんじゃないか?ということで、アパレルブランドを立ち上げたというわけです。

コロナがあったことでごみ拾いをする人が増えて、ビーチクリーンの仲間とも定期的に会っていました。ある時、僕が再生素材の服の話をしたら、彼らは全く知らなかったんですよね。その反応をみて「あれ?これチャンスがある?」と思って立ち上げました。

湘南は海が観光資源の街だからこそ、やるならここから発信することに意味があると思ったんです。一度就職で外に出たんですが、また湘南に戻ってきたタイミングでビーチクリーンやサーフィンを始めて、やっぱり海の側っていいなぁと、この海を大切にしていきたいと感じました。

魚網・再生ポリエステルなど原材料はサステナブルを徹底追求

watanabe-shun-waccel 渋沢:立ち上げるまではどんなところが大変でしたか?

渡邉:一番はやっぱりお金ですね。服なので、先に仕入れが発生するんです。今、会社員をしているのはそれが理由でもあります。あまりコストをかけないように、デザインはイラストレーターなどを使って自分でやっています。

ブランドを知ってもらえると、その背景にあるごみのことも伝わると思うので、ブランドロゴをポイントにして、なるべくシンプルにデザインするということを心掛けています。

今、渋沢さんに着ていただいているパーカーは漁網を再生したもので、魚網の再生素材と、再生ポリエステルとかポリウレタンを混ぜて柔らかく仕上げています。漁網にアザラシやカメがからまっている写真を見たことがあるかもしれませんが、そういう漁網をリサイクルして混紡しています。そして、パーカーは廃棄衣類から作られているものもあります。回収した服をいったん樹脂に戻して、また糸にして編んでいきます。

住谷さんが着ているTシャツはオーガニックコットンです。そのTシャツを作るときに知ったんですが、コットンとオーガニックコットンって基本は同じなんですよ。何が違うかというと、オーガニックコットンは3年間くらい農薬を使っていない場所で育てられるので、大量生産がしにくいのです。

普通のコットンは農薬を使っているので大量に作れますが、農薬を使うと農家さんが吸い込んでしまったりと害もあります。農薬によって悪影響があるので、作るならオーガニックコットンじゃないとダメだなと思いました。

ロングTシャツも出していますが、捨てられた服を回収して作っています。化学繊維なので乾きも早いのが特徴で、洗濯から脱水して出すと半分ぐらいもう乾いているくらいです。

今、いろんなところで再生資源のために服を回収してくれるので、再利用できる仕組みができるんです。こういうシステムをまだ知らない人が多いので、少しでも知ってもらえると、変わってくるかと思います。AfterBlueの製品を買うことで、「自分はごみ拾いはできてないけど、サステナブルな活動に参加している気になれる」と言ってくださる方もいます。

行動を変えるには、“自分ごと”にすること

watanabe-shun-waccel 住谷:絶対やった方がいい活動なのに、なぜ広がっていないと思われますか?

渡邉:AfterBlueにしろ、こういう素材にしろ、自分ごとになっている人がまだ少ないと思います。僕はそれこそ海の街に住んでいてサーフィンをするから、ごみが浮いているとイヤなんです。汚いなあと思いながら海に入りたくないじゃないですか。

湘南の海は汚いってよく言われますけど、たまに来るだけの人はやっぱり汚いで終わっちゃうんですよね。住んでいる立場からすると、海は遊び場です。子どもの頃、遊んだら片付けましょうって言われていましたけど、そんな感じで自分の遊び場はせめてきれいにしたい。結局、自分ごとになっているからやれているんですよね。

徐々に『SDGs』という言葉がいろいろなところで使われるようになり、興味を持ってくれる人は確実に増えています。それでも自分の行動を変えるところまでできている人は、そんなに多くないかなと思います。

行動を変えるというのは、捨てられたペットボトルを拾うということももちろんですが、たとえばマイボトル買って、毎日買っていたペットボトルを2日に1回しか買わないようにするとか、そういう意識を変えることが大事だと思っています。購買行動を変化させないと、ごみは減っていかないからです。

渋沢:個人個人の意識改革や小さな行動の積み重ねが大切なんですね。

渡邉:そうですね、AfterBlueも「サステナブルって特別なものじゃない」というのを掲げています。1日の行動をちょっと変えるだけでいい。ペットボトル2日に1本にするとか、ちっちゃい変化を無理なく続けることが大事かなと思っています。

今後の目標としては、引き続きAfterBlueの活動をやりながら、地元のビーチクリーンで集めたごみを使って何かをやっていきたいと考えています。
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