経営者対談

株式会社NEXT NEW WORLD 代表取締役
高嶋耕太郎 × ワクセル

高嶋耕太郎(たかしまこうたろう)さんは、日本のシルク産業を守るため、大手アパレル企業の取締役という立場を捨て、2021年に株式会社NEXT NEW WORLDを設立しました。同社は気候変動を止めるために、アパレル・コスメ産業から出る二酸化炭素の削減を目指したビジネスを展開。今後、国産シルクを世界に広めるべく、シンガポールへの移住を決断されています。

ワクセルコラボレーターでタレントの渋沢一葉(しぶさわいよ)さんと、ワクセル総合プロデューサーの住谷がシルクの魅力と環境への熱い思いを伺いました。

原材料としてのシルクの可能性を見出す

株式会社NEXT-NEW-WORLD-代表取締役-高嶋耕太郎×ワクセル

渋沢:本日のゲストは絶滅寸前のシルクを守るために、支援金500万円の期待を背負ってシンガポールに移住まで決めた高嶋耕太郎さんです。今回は高嶋さんの素顔に迫ると共に、国産シルクについても詳しく伺います。まず気になるのが“国産シルクが絶滅寸前”というお話です。

高嶋:もともと日本はシルク産業が非常に盛んで、第一次世界大戦前までは世界一の輸出量でした。日本のシルクは品質が高く世界の国々に輸出され、その稼ぎを投資して工業化を進め高度経済成長を遂げたのです。当時の日本には養蚕農家が200万軒あり、人口比で言うと4人に1人はシルク産業に関わっていたそうです。ところが現在、日本に養蚕農家は200軒しかありません。当時からすると0.0001%という驚きの数字ですよね。

住谷:そんなにも少なくなっているのですね……。高嶋さんはAmazon Japanで働かれたり、大手アパレル企業で役職に就いたり、華やかな経歴をお持ちです。なぜそのような立場を捨ててまで、衰退しているシルク産業に着目したのですか?

高嶋:Amazon Japanでは色々な部署で働かせてもらい、その後のTOKYO BASEでは取締役を6年ほどやらせてもらい、長年ビジネスマンとして働いてきました。そのなかで段々と強くなってきたのが、「社会貢献がしたい」という気持ちです。今ではSDGsの活動や認知がとても広がってきていますが、私がSDGsで一番気になるのが気候変動。世の中に気候変動の影響で困っている人が多くいて、「どうにか止めることができないのか」と考えるようになりました。

生きているなかで働いている時間は長いと思います。ではその時間をお金を稼ぐためじゃなく、社会貢献に使うことができれば、自分の時間の価値が高まると思いました。「お金のために働くのではなく、お金を稼ぎながら社会貢献がしたい」そういう思いから自然原料について調べるようになり、色々調べた結果シルクの原材料としての可能性を強く感じたんです。

500万円の支援金が集まる

株式会社NEXT-NEW-WORLD-代表取締役-高嶋耕太郎×ワクセル

高嶋:まずご紹介したいのが、本日持ってきたこの白い粉です。こちらはシルクの糸を細かくしたものです。シルクってものすごく汎用性があり、糸を粉にして体内に取り入れることでたんぱく質を摂取できます。

シルクには『フィブロイン』というたんぱく質の一種が含まれていて、フィブロインにはコレステロールを抑制する作用があると言われています。そのため、この粉を飲み物や食べ物に入れて摂取することで、コレステロールを下げる効果が期待できます。

住谷:シルクからたんぱく質が摂取できることも驚きですが、さらにシルクで石けんもつくられていますよね。「絶滅寸前の国産シルクを守れ!」をテーマにシルク石けんのクラウドファンディングを行い、大きな反響があったと伺っています。

高嶋:クラウドファンディング開始直前に、俳優の窪塚洋介さんと群馬県桐生(きりゅう)市の荒木市長と私の3人で「シルク産業を守る」というテーマでトークイベントを行いました。その後、開始1時間で目標金額の100万円を達成し、最終的に500万円の支援金を集めることに成功しました。

「国産シルクを守ってほしい」「やっていることが素晴らしい」などのコメントをいただくことができ、「挑戦した価値があった」と感じましたね。

肌にうるおいを与えるシルク石けん

株式会社NEXT-NEW-WORLD-代表取締役-高嶋耕太郎×ワクセル

渋沢:このシルク石けんにはどういった特徴があるのですか?

高嶋:シルクは糸をつくる段階でお湯を使って煮るのですが、そのときにセリシンという成分が抽出されます。セリシンはたんぱく質の一種で、人間の肌の組成にとても似ていると言われています。そのため肌への吸着性が強く、高い保湿効果が期待できるんです。さらにセリシンには紫外線を吸収する効果があることも実験でわかっています。

この成分をいかした商品をつくるときに石けんを選んだのは、まずは多くの人にシルクの良さを知ってもらいたいと思ったからです。石けんであれば子どもから大人まで毎日のように使ってもらえますし、日常生活の中でシルクの魅力を体感してもらうことが大きな狙いです。

シルクは本当に優秀な原料で知れば知るほど良いことばかりで、大きなビジネスチャンスになると思います。国の研究機関とも提携して研究しましたし、調べれば調べるほど魅力が多く、どんどん知識を吸収しながらシルクにのめり込んでいきました。

「気候変動に子どもたちを巻き込みたくない」と地球を守ることを決意

株式会社NEXT-NEW-WORLD-代表取締役-高嶋耕太郎×ワクセル

渋沢:近々シンガポールへ移住されるそうですが、決断に迷いはありましたか?

高嶋:シンガポールに行く理由はシルクのためでもありますし、気候変動のためでもあります。私には5歳と3歳の子どもがいますが、自分の子どもが大きくなったときに“汚染された地球”になっていることが許せないと思ったんです。子どもたちのためにも、誰かが地球を守らなければいけません。その誰かは私だと思いました。

気候変動が起こることで地震や津波などの災害が激化すると言われています。そのようなことに子どもたちが巻き込まれてほしくないという気持ちが一番強いですね。

これまで石油からつくられたものがたくさん使われてきました。多くの人が石油由来のものを使ってきた結果、地球環境が悪くなっていることを自覚してきています。SDGsへの意識が高まっている今なら、石油由来の繊維と自然由来の繊維があったとして、「どちらを買いますか?」と聞くと、みなさん自然由来のものを選んでくれると思うんです。僕のビジネスを大きくして、自然原料のシェアを増やしていけば気候変動の改善につながると考えています。

東南アジアの富裕層に向けシルク需要の開拓を目指す

株式会社NEXT-NEW-WORLD-代表取締役-高嶋耕太郎×ワクセル

住谷:シンガポールに行くことがビジネスの拡大につながるんですね?

高嶋:私が中期目標として掲げているのが、“東南アジアに日本のシルクを売る”ことです。東南アジアには現在約6億6,000万人の人口がいて、さらに人口が増えていくと予想されています。その人口の約1億人が富裕層と言われていて、富裕層だけで現在の日本の人口ほどいるんですよ。

日本のシルクはとても高いものなので、富裕層に向けて需要を開拓していきたいと考えています。シンガポールは東南アジアのハブとなる国なので、販路拡大のために移住することにしました。私は群馬県桐生市で養蚕業をやっているのですが、桐生市でシルクの製品開発を行い東南アジアの富裕層に売る。この流れをつくることができれば日本のシルク産業を守りながら、気候変動を止めることに役立つはずだと考えました。

今は目に見えないものに価値を置く『風の時代』と言われていますけど、『競業』じゃなくて『協業』の時代になってきていると思うんです。今後ワクセルさんのようにいろんな方と協業して、日本のシルクをもっと世界に広めていきたいですね。世界に勝ちに行くために、私たちと協業してくれる方をお待ちしています。




トークセッション一覧にもどる