経営者対談

ダンサー・ダンスクリエイター
SAM × ワクセル

今回のゲストは有名ダンスアンドボーカルグループのメンバーであるSAMさんです。SAMさんは『いつまでも動ける。年をとることを科学する、ジェロントロジー』という加齢学についての本を出版され、老化がネガティブなことばかりではないことを伝えています。

還暦を越えてもなお現役ダンサー・ダンスクリエイターとして活動しているSAMさんに、ワクセルコラボレーターでタレントの渋沢一葉(しぶさわいよ)さんと、総合プロデューサーの住谷が、第一線で活躍する秘訣を伺いました。

ワクセルコラボレーターページ(SAMさん)

高校時代にディスコダンサーに魅了され、プロを目指す

ダンスクリエイターSAM×ワクセル

渋沢:本日のゲストは1990年代から日本に旋風を巻き起こした有名ダンスアンドボーカルグループのメンバーで、ダンス界のレジェンドであるSAMさんです。SAMさんはダンサーの活動はもちろん、ダンススクールの設立、専門学校のダンスパフォーマンス科トータルプロデューサー・講師、健康寿命を延ばすためのダンスプログラムの作成など、ダンスクリエイターとしても多方面で活躍されています。まずはダンスを始めた経緯を伺いたいです。

SAM:ダンスを始めたのは15歳のときでした。学校の友達と初めてディスコに行ったんですけど、白いスーツを着たダンサーがフロアに出てくるとお客さんが盛り上がって、その人を中心にサークルができるんです。その中で踊るダンサーを見て「めちゃくちゃカッコいい!」と思い、次の日から学校で「こんなことしてたよね」って友達とまねしていました。

それからディスコにハマって、数カ月に1回行く程度だったのがいつの間にか週1回になり、高校3年生のときには毎晩になっていました(笑)。もちろん年齢制限はあったと思うんですけど、当時はそこまで制限がうるさくなかったんです。

「何になってもいいから真面目にやれ」医者である父からの激励

ダンスクリエイターSAM×ワクセル

住谷:ディスコがきっかけでダンスに目覚めたんですね。それから本格的にプロダンサーを目指し始めたのはいつ頃ですか?

SAM:高校2年生くらいでしたね。僕らの世代ってダンスがうまい人はいましたが、ディスコダンサーとしてご飯を食べている人がいなかったんです。「なんでこんなにうまいのにプロにならないんだろう?」って不思議に思っていて、「だったら俺たちがプロになろうぜ」って、ダンス仲間と毎晩のように何時間も語り合っていました。

住谷:SAMさんは医者の家系と伺ったのですが、ご家族からの反対はなかったのですか?

SAM:医者の息子だったので医者になるように育てられていました。けれど、それが本当に窮屈で、高校2年生のときに家出をしたんです。でも2週間くらいで見つかって、そのときに初めて父親と母親に思いをぶつけました。

父親から「何がしたい?」と聞かれたので、「自由になりたい」と伝えました。するとちゃんと学校に行くことと、居場所を連絡することを条件に、自由にしてもいいことになったんです。父親から「何になってもいいから真面目にやれ」と言われ、「ダンスを真面目にやろう」と決意しました。

「メンバーそれぞれがリスペクト」結成30年の絆

ダンスクリエイターSAM×ワクセル

渋沢:ダンスボーカルグループが結成されて30周年になるそうですね。これまでさまざまなことがあったと思いますが、30年も継続してきて率直にどのようなお気持ちでしょうか?

SAM:30年間ずっと走り続けてきたというよりは、割とのんびりやってきているので、気づいたら30年もたっていた感覚です。デビュー当初は忙しかったですが、その後に6年くらいまったく活動していない時期もありました。

2000年から2006年まではまったく新曲をリリースせずに、それぞれがほぼ個人活動をしていました。その頃の僕は『V6』や『東方神起』など、他のアーティストのライブをプロデュースしたり、別ユニットを組んでライブをやったりしていましたね。

渋沢:音楽活動をされていると「方向性の違いでもめる」ということをよく聞きますが、そういったことはなかったのですか?

SAM:割とみんな同じ方向を向いていたと思います。デビューしたとき、僕とDJ KOOが同い年の31歳、他のメンバーも25歳くらいと、そこそこみんないい大人なので、けんかはあまりなかったですね。

最初の頃は僕とDJ KOOがぶつかることもありましたけど、男同士で同い年なので、ちょっと話せばすぐに和解していました。そういうことを繰り返しているうちに絆ができて、メンバーそれぞれが相手をリスペクトする良い空気が出来上がってきたと思います。

現役で活躍する秘訣は「少しだけ」気を使った生活習慣

ダンスクリエイターSAM×ワクセル

渋沢:SAMさんは生涯現役を宣言して、実際に還暦を越えた今でも現役で活躍されています。ダンスはすごい運動量だと思うのですが、どうしたらSAMさんのようにずっと現役でいられるのでしょうか?

SAM:常に踊っていられるために体と向き合っているので、自分の体調には割と敏感な方だと思います。でも、食事制限などストイックな健康管理は全然していないんですよ。

20代はダンスの基礎をつくっている時期だったので、ストレッチや筋トレ、食事にも気を使っていましたが、段々そういう生活が板についてくると、「これくらいはいいだろう」とふり幅がわかってくるんです。食事が偏ってきたら戻すとか、体を冷やさないようにしようとか、最低限のことが当たり前にできるので、長年のいい生活習慣の蓄積だと思います。

「老化はネガティブなことばかりじゃない」加齢学についての本を出版

ダンスクリエイターSAM×ワクセル

渋沢:SAMさんは『いつまでも動ける。年をとることを科学する、ジェロントロジー』という本を出版されています。「ジェロントロジー」とはどういうものなのでしょうか?

SAM:ジェロントロジーとは加齢学といって、老化していくことを科学する学問なんです。人は20歳くらいで成長過程が終わって、そこから老化が始まります。老化と聞くとネガティブなイメージを持つと思いますが、「ネガティブなことばかりじゃないよ」ということをこの本で伝えています。

たとえば絵を描いたり、小説を書いたりといった創造力というものは50代から60代がピークだと言われていて、年をとるほど創造性は豊かになるんです。

年齢を重ねるってことは、それだけ経験値を積むということです。60年生きた人と30年生きた人の間にある「30年の経験値の差」って埋められないですよね。どんな経験をしたかは人によってもちろん違いますが、30年長く生きている、僕はそれだけですごいことだと思います。

年齢にあらがうことももちろん必要かもしれませんが、あらがうことばかりじゃなく、ポジティブなこともいっぱいあるということを知っていただきたいですね。

能とストリートダンスのコラボレーション、新たな舞台を目指す

ダンスクリエイターSAM×ワクセル

住谷:ダンス業界でこれまで多くの功績を残してきたSAMさんですが、還暦を越えて今後どのような目標を持っているのかとても興味があります。

SAM:60歳になってからもやりたいことがたくさんあります。僕は3、4年前から最古の伝統芸能と言われる「能」を始めました。50歳を過ぎたあたりから自然と興味が湧いてYouTubeで見たり、自分で研究したりしていたときに、雑誌の対談で宝生流(ほうしょうりゅう)の能楽師の先生と出会ったんです。実はうちの先祖にも宝生流の能楽師がいて、まったくの偶然ですがすごい巡り合わせを感じましたね。

いろんな話をするなかで「能」と「ストリートダンス」のコラボレーションをすることになり、すぐにその方に弟子入りしました。いまの最も大きな目標は、「能」と「ストリートダンス」がコラボレーションした新しい舞台を作ることです。

他にも、認知症など高齢者が抱える疾患に効果が期待できる『リバイバルダンス』というダンスプログラムがあるので、それを全国にもっと広めていきたいですね。規則正しい生活とコミュニティがあれば誰でも楽しく老化していけます。多くの人が持つ老化に対するネガティブなイメージを変えていきたいですね。

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