株式会社スペックホルダー代表取締役
大野泰敬 × ワクセル
株式会社スペックホルダー代表取締役の大野泰敬さんからお話しを伺いました。
ソフトバンクで新規事業を担当したあと、2006年からCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)で配信事業を手掛けられます。その後ソフトバンクに復帰し、当時は日本初上陸のiPhoneマーケティング戦略を仕掛けて成功へと導いてこられました。
そのノウハウを活かして独立し、現在はいろいろな企業のサポートをしています。
大手企業が中心のクライアントに対して戦略を練ることを得意とし、企業の課題を把握して、解決するためにどうしたらいいのかを提案されています。
2020年12月25日には『ひとり会社で6億稼ぐ仕事術』(クロスメディア・パブリッシング)の出版もされています。
今回は大野さんに事業計画をたてるコツをお話しいただいたので、ぜひご自身の仕事にご活用ください。
事業計画はコツをおさえれば誰でも作成できる
「うちの企業は新規事業に向いていない」
「役員はなにもわかっちゃいない」
「新規事業の提案をしても、賛同や協力を得られない」
という相談を受けることがよくあります。
しかし、新規事業の提案が承認されない原因のほとんどは、起案する側にあることが多いです。
1,000件規模の新規事業アイディアコンテストを開催し、内容を分析してみると、84%は事業計画がない、もしくはKPI(目標達成度合いを評価する評価指標)設定が含まれておらず、そもそも判断材料が揃っていませんでした。
残りの16%の中でも経営会議に出せるレベルのものはほとんどなく、経営会議に出せるものは1%以下です。
また、「事業計画なんて書けない。企画書が作れない。天才にしかできない。」という声もよく聞きます。
わたしは偏差値42、学校の落ちこぼれでしたが、事業計画を数多く書いています。つまり、コツさえ掴めば誰でも事業計画書はつくれるのです。
今まで約70にも及ぶ事業の立ち上げをおこなってきました。新規事業をスタートするためには役員など多くの人を説得する必要があり、そのために数千の資料をつくってきました。
そこで蓄積されたノウハウをいかして、短期間で資料作成のコツを習得できるセミナーや研修を行っています。
新規事業には失敗するリスクが必ずあります。100%成功する新規事業はありません。ただ、1つだけわたしが100%成功しているものがあります。それは「企業や経営層を説得し資金を獲得すること」です。
事業計画の基本は情報収集
資金を獲得できる事業計画を作成する上で最も大切なことを5つ紹介します。
1.意識改革
2.情報収集
3.テクニック
4.クリエイティブ
5.精神力
これらを使いこなすことができれば、誰でも資金を獲得できるようになります。
さまざまな企業で、この5つのポイントを実践し結果が出てきています。その理由は教科書には出てこない、実践的なものだからです。
わたし自身が本当に苦労をして手に入れてきたものなので、実践的で必ずみなさんの人生に役に立つはずです。
さて、今回は5つのポイントのうち、基本となる “情報収集” についてお話しします。
なぜ “情報収集” が重要なのかと言うと、インプットの量とアウトプットの質は比例するからです。
・市場がどのような状態か?
・他社がどうなっているのか?
・ユーザーはなにに興味があるのか?
このように、ユーザーや他社がどのような状態なのかを正確に把握することは重要です。いかに効率よく、インプットする情報量を増やしていくかがとても重要になってきます。
わたしは、1人で年間6億円を売り上げています。このような数字を達成できるのは、同時並行で異なるジャンルの複数のプロジェクトを動かしているからです。
インプット量を増やしているお陰で、どんなジャンルの案件にも対応できるのが強みです。
日常から情報収集を習慣化する
インプット量を増やし、かつ効率的に情報収集するコツをお話しさせていただきます。
そのためにはまず最初にやるべきことがあります。5つのポイントでも紹介した、 “意識改革” です。
そもそも新規事業を立ち上げるときに重要なのはデータ(根拠)です。役員や企業、VC(ベンチャーキャピタル)を説得するのには必ずデータが必要です。
直感や情熱だけで説得するのは難しいと思います。
データを収集することは、事業の方向を示す羅針盤にもなります。航海するときに羅針盤がないと危険なように、データがない事業は危険なのです。
とは言え、ただ単にデータを収集すればいいわけではなく、日々意識的にデータを取りに行き蓄積する必要があります。
例えばマクドナルドには並ばなくても注文できるアプリがあるのを知っていますか?
CMや店舗でも宣伝しているのですが、ほとんどの人は目の前にある情報に気づかず見逃しています。
このように、ちょっとした店や市場の変化を見逃してはいけません。普段の何気ないことに気を配っていき、情報を収集できるかが大事になってきます。
人間の記憶は曖昧で、新しい情報が入ってくると古い情報は忘れてしまいます。そのため、意識して収集する必要があります。
街中で見かける広告や、すれ違う人の持ちものなどを意識的に蓄積する癖をつけるといいと思います。
また、人間は1度覚えたものを24時間以内に74%忘れる(エビングハウスの忘却曲線)というデータがあります。
逆に何度も復習することで、3日で75%の定着率があるそうです。そのために、わたしはニュースをFacebookでつぶやいたり、知り合いにメールで共有したりしています。
情報はキャッチアップするだけでなく、記憶に残していくことを習慣化するのが大切です。
無料ツールを使いこなして効率よく情報収集する
ここからは便利な情報収集ツールをご紹介します。
まずは「Googleアラート」。
1度キーワードを登録するだけで、自動で自分が欲しい情報を収集できるサービスです。検索すら不要で、絶対抜け漏れがない、非常に優れたツールです。
次に「Feedly」。
こちらは、さまざまなホームページやWebメディアの更新情報をまとめてチェックすることができます。
独自のAIが導入されており、自分が設定しておいたトピックやキーワードに優先順位をつけて表示してくれます。さらにそれを資料化できるので、プレゼンテーションにも使えます。
ユーザーの興味を検索履歴から分析する
ここからはもう少し専門的なツールをご紹介していきます。
「一体ユーザーはなにを考えているんだろうか?」
「お客様はなにを求めているのか?」
新規事業を考えるとき、このようにユーザーの思考性を探るのは非常に重要なことです。そこで問題になるのは、どうやって情報収集をするのかという点です。
一つの解決策はアンケートをとること。しかし、回答が本音とは限らず、起案者側が質問によって回答をコントロールできてしまうので、正確な情報は得にくいと感じます。
では、どうしたらいいのか。ユーザーの頭の中をのぞくには、検索履歴がわかればいいのです。検索履歴を分析することで、さまざまな思考性を正確に把握できます。
検索履歴を無料で調べられるのが「ラッコキーワード」
検索している人たちが、どのようなキーワードで検索しているのかを調べられるツールです。人がなにに興味をもっているのかを把握できます。
ここまでわかると、次に気になるのは「特定のキーワードに対してどれくらいの人が興味をもっているのか」ということ。
特定のキーワードや商品などに興味があり、実際に検索する人がどのくらいいるのかを推測できるツールが「キーワードプランナー」です。
集客のための企画などに用いることが多く、広告を効果的にしたり、SEO対策に活用したり、店舗のPOP、商品パッケージなどに応用できます。
SNSを使って情報収集する
自分たちの商品に興味がある人がどれくらいいるのか、知りたくないですか?
自分たちの商品に興味がある人が、年齢、性別、住んでいるエリアごとにどれくらいいるかわかるツールがあります。しかも、普段みなさんが使っているツールで。
それが「Facebook」「Instagram」です。
広告を出稿するためのツールを利用すると、調べたい商品に興味のある人たちがどこのエリアに何人いるかを正確に教えてくれます。
さらに、自分たちの商品の本当のターゲットが誰なのかも把握することができます。
新しい事業を提案するときはトレンドを分析する
ライバル企業と自社の製品がいつ頃、どのエリアで検索されているのか知りたくないですか?
「Googleトレンド」を使えばユーザーの興味を把握することができます。Webで検索している人がどのようなキーワードで検索しているかを調べるツールです。
つまり、人がどのようなものに興味があるかがわかります。さらに、話題になっているエリアや、関連キーワード、トピックスもわかるので便利です。国や期間、カテゴリーなど、詳細な検索もできます。
また、知りたいトレンドのデータを複数組み合わせて、比較データを一瞬で作成できるのでライバル企業との比較も簡単にできます。
過去のデータがない、新しいものを提案したいときに非常に有効です。
※その他便利ツールに関しては文末の一覧をご参考ください。
情熱をもって小さな達成を積み重ねる
序盤に資金調達に重要な5つのポイントをご紹介しましたが、実はもう一つ、承認率を飛躍的にアップさせるポイントがあります。
それは「情熱」です。「情熱」や「想い」が、人を動かし組織を動かすのです。もちろん「情熱」だけではダメで、戦略が伴っていることは大前提です。
膨大な量の努力と失敗を重ねて、どんな状況、タイミングでもチャンスをつかめるように準備してください。
資金調達に一番必要な事は、結果を出すことです。はじめは小さなことでもいいので、相手と約束したこと、目標設定したことを達成し続けましょう。
継続していれば、仕事が回ってきたり、長期契約が取れたりします。
逆風はチャレンジしている証拠
最後になりますが、嫌われることを恐れないでください。新しいことをやるとまわりから変な目で見られるものです。
しかし、他人が理解できないことこそがチャンスなので、情熱と覚悟を持ってチャレンジしてほしいなと思います。
「人にバカにされる」
「人に見下される」
「人にいじめられる」
「人に嫌がらせされる」
これらはすべて成功するための登竜門です。人より苦しい経験をし、それを乗り越えると違う景色が見えてきます。
自分の信念をもち、目標だけをみて進み続けてください。その先に望んだ未来が待っているはずです。
<参考>その他 大野さんおすすめ便利ツール一覧
「BuzzSumo」
ライバル企業の商品がバズっている理由を分析できます。
「Wayback Machine」
ライバル企業が過去になにをしたのかを把握できます。URLをいれるだけで、1994年以降の過去のWebページをすべて見ることが可能です。
「APP Annie」
ライバル企業のアプリのダウンロード数、ユーザー数、年齢、いつ使っているのか、ほかにどんなアプリが入っているのかを調べられます。
「SimilarWeb」
ライバル企業のWebページを分析して、どんな戦略を使っているのか調べられます。
紹介したツールは一部ですが、ほとんどの機能が無料で使用できるのでぜひ使ってみてください。
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【大野泰敬×ワクセル】新しい事業企画に必要な5つのポイントと、データ収集の極意とは?