経営者対談

一般社団法人日本ほめる達人協会理事長
「西村 貴好」×ワクセル

一般社団法人日本ほめる達人協会理事長、西村 貴好さんにインタビューさせていただきました。

西村さんは泣く子もほめる、ほめる達人「ほめ達!」としてご活躍されています。

大学卒業後は大手不動産会社に就職され、最年少トップセールスという記録を樹立されています。その後、家業のホテル経営を経験し、覆面調査会社C’sを創業されました。

それらの経験から、ほめることの重要性に気づかれ、2010年に「一般社団法人日本ほめる達人協会」を設立され、理事長に就任されています。

西村さんは日本ほめる達人協会の発起人であり、第1号の「ほめ達!」です。

「ほめ達!」は、目の前の人やモノ、仕事で言えば商品やサービス、起きる出来事などに独自の切り口で価値を見つけ出す『価値発見の達人』のことです。
引用元:一般社団法人日本ほめる達人協会公式サイト

今回はインタビュー記事第2弾。前回に引き続きインタビュアーは、ワクセルコラボレーターの渋沢一葉(しぶさわいよ)氏、ワクセル運営責任者の住谷知厚(すみたにともひろ)です。最後までお楽しみください。

前回記事はこちら

「ほめ達!」は人の価値を発見して伝える達人

渋沢:まずは「ほめ達!」とは何か、ご説明いただけますか?

西村:「ほめ達!」はほめる達人のことです。われわれが定義する「ほめる」とは、「おだてる」「おべんちゃらを言う」「相手にとって耳触りのいいことを言う」ことではなく、「価値を発見して伝える」ことです。いくら価値があるものでも、その価値を伝えられなければ価値がないのと同じです。

人のいいところはもちろん、商品やサービスについても価値を伝えられるようになるので、ビジネスにおいても役に立ちます。さらに、できごとの価値も発見して伝えるので「ピンチをチャンスに変える力」という経営者やリーダーには必須の能力も身につきます。

つねに他人に関心をもち、価値を伝える

住谷:人の価値を見極める方法について教えてください。

西村:どこをほめるかも「ほめ達!」が大事にしているところです。人間の脳はなまけ癖があるので、放っておいてもいい所を探しません。

つねに相手に関心を持ち、事実を見つけ、それが ”誰に” ”どのように” 役立っているかも伝えていくことが重要です。さらに、相手に対して関心をもっていることを伝えることもほめることになります。

渋沢:なるほど。。奥が深いです!まさに達人ですね。わたしも人をほめるのは好きで、よく人をほめるのですが、相手から「嘘っぽいね」と言われることがあります。どうしたらいいのでしょうか?

西村:ここにも大事なポイントがあるんです。実は”ほめている人”と”ほめられている人”を比べると、”ほめている人”のほうが豊かなんです。ほめるは人のためならず、まわり回って自分の幸せになるんです。

むしろほめることで相手がドン引きすることもあります。それでもほめるのは、自分自身が豊かになるからです。

まずは事実をほめて伝える。それが伝わらなければ「〇〇さんも言ってたよ」といったかたちで、第三者の声もつかう。それでも相手が謙遜して伝わらない場合は、「少なくともわたしはそう思っているんです」と主観で押し切ってしまいます。

渋沢:とても勉強になります!いい話を聞けたので、わたしも人をほめてみようと思います。講演会などでは、いつもこのようなお話をされているんですか?

西村:前回の講演会では、ワクセルさんの質問にお答えするというかたちでしたね。

住谷:はい、前回の講演内容をフリップにまとめさせていただきました。とても好評でしたので、一つずつ解説していただければと思います。

自分で自分を承認することで心の穴が埋まる

住谷:まずは「承認欲求を満たすために」について解説をお願いいたします。

西村:マズローの欲求段階説によると、一番下から「生理的欲求」「安全欲求」「社会的欲求」「承認欲求」「自己実現欲求」と段階になっていて、この順番に満たしていくと人は幸せを感じるそうです。

日本で生きていると「生理的欲求」「安全欲求」「社会的欲求」までは満たされやすいのですが、「承認欲求」から急に満たされていない人が増えてきます。「承認欲求」というと、「他者から認められたい欲求」と思っている人が多いのですが、実は「自分で自分を認めてあげること」がとても重要なのです。

自分を認めていない人は心に穴があいていて、他人からの承認を受け入れられません。心の穴は閉じるには、自分の嫌なところも認め、受容して許すことが必要です。心の穴が閉じると本当に他人を承認できるようになります。

自分の嫌なところを認めているからこそ、他人の嫌なところに共感できるようになり、他人を承認できるようになります。

幸せや成功をつかみたいなら魅力的な人と一緒にいるべき

住谷:続いては「環境を選択する」についてお願いします。

西村:人は弱い生き物で、環境にとても影響を受けます。「幸せになりたい」「成功したい」と思うのであれば、「幸せ」「成功」に対して自分と同じ価値観をもっている人と一緒にいるべきです。

さらに、自分が使う言葉を選択することも重要です。前向きな言葉を発していると、前向きな言葉を使う人たちが集まってきます。つまり、言葉を選択することで環境は選択できます。

魅力的な人は魅力的な言葉を使い、魅力的な考え方になり、魅力的な行動になるので、結果的に魅力的な人たちといつも一緒にいるのです。

住谷:西村さんにとって「魅力的な人」とはどのような人ですか?

西村:一緒にいたい、一緒に生きていきたいと思う人ですね。また、まわりから「この人のためなら何でもします」と思われている人は魅力的だなと感じます。きっと、目の前の人のために全精力を注げる人なのだと思います。

渋沢:魅力的という言葉にもここまで深みがあるんですね。女性は魅力的になるためにエステに行ったり漠然と自分磨きをする人が多いですが、まず言葉や考え方から変えるべきなのだとわかりました。

「ほめる」よりも重要な「ねぎらい」の力

住谷:「ねぎらいの力」についてもお聞かせください。

渋沢:仕事で疲れているときに「渋沢さんお疲れ様です。渋沢さんが一番頑張っていますよね」と言われると、とても嬉しいです。できる人ほどねぎらいの声をかけてくださいますよね。

西村:「ほめる」と「ねぎらう」は厳密には違います。「ほめる」とは相手の行動が一定の基準を超えたときに評価すること。それに対して「ねぎらう」とは、相手が立場上やって当たり前のことを気づいて共感し、感謝を伝えることです。

実は「ほめ達!」は、ほめることよりねぎらうことを大事にしています。ありがとうの反対は当たり前、当たり前だと思っていることに気づいて感謝する。これができると心に余裕がある人にみえます。

住谷:頭では余裕が大事とわかっていても、心に余裕がもてないときはどうしたらいいですか。

西村:自分がどのようなときに余裕がなくなるのかを知っておくことが重要です。メタ認知、ハイヤーセルフとも言いますが、自分を客観視することで冷静になり、もう一人の自分が「余裕がなくなっているよ」と気づかせてくれるようになります。

目的に向かうためであれば目標は変えていい

住谷:「目的と目標の違い」について解説をお願いします。

西村:「目的」は追い続けるもの、「目標」は達成されていくものです。「目的」は変わらないものですが、「目標」は数値化されていたり期限がついていたりするもので、目的の達成のために必要であれば変わっていきます。

壁にぶつかったときはいったん立ち止まり、目的に向かうために別の道を行くことはOK。挫折することもありますが、挫折を心の栄養にして適切に目標を変えていくことは、成功者も必ずやっています。

夢や目的がない人は、まずそれを明確にしている人と一緒にいることで影響を受けるといいです。誰かの夢を応援することが、自分の夢を応援する練習にもなります。素敵なモデルや師匠をぜひ見つけてください。

本気度を確認するバロメーターは3つ

住谷:「本気度を確認するバロメーター」とは何でしょうか?

西村:3つあります。まず「協力者が現れるか」、次に「恥ずかしいと思わなくなっているか」、最後に「まわりからの誹謗中傷が全部アドバイスに聞こえるか」。

協力者が現れるまで同じことを伝え続けることが重要です。わたしは「ほめ達!」の千問家(せんもんか)だと思っています。千種類の問いに答え、さらに一つの質問に対して千回以上答える。同じ質問を受けても毎回丁寧に答え、毎回ブラッシュアップしています。常に最新、最高のものを提供していて、今日も自己ベストを更新しています。

成長した未来の自分にプライドをもつ

住谷:「プライドは未来にもつもの」について伺わせてください。

西村:邪魔なプライドはいりません。日々少しずつでもいいから成長していけば、3年後の自分はさらに素敵になっている。成長した未来の自分から見ると、今の自分は恥ずかしい状態のはずです。今の自分が一番カッコ悪い、だから挑戦できるのです。

「挑戦して失敗したらカッコ悪い」そんなプライドは邪魔でしかありません。本当のカッコよさは無様の先にあります。誰よりも新たなことに挑戦し、誰よりも失敗し、誰よりも学び続けて成長する未来にプライドをもって活動しています。

住谷:未来というと、何年先の自分をイメージされていますか?

西村:何年先という具体的な数字はありませんが、3年経てば成果が出るとは思っています。いつも考えていることは、今この瞬間に全力で望むこと。今の積み重ねが3年後に繋がっていると考えています。

ほめるは人のためならず、自分のためにほめる

住谷:「ほめる価値について」お聞かせください。

西村:一番大事なことは、ほめることを相手のコントロールに使わないこと。相手を動かすためにほめると、すぐ相手に伝わります。ほめるは人のためならず、ほめることの一番の価値は自分に返ってくることなんです。

ほめることができると、自分自身の心が整います。そして、心に余裕ができることでまわりの人との関係性がよくなります。心に余裕がないと、人のいい所は見つけられません。人をほめられない人は、「自分の心には余裕がありません」と言っているようなものです。

なまけ癖のある脳を意識して使うことも重要です。ほめることのもう一つの価値は、脳の使い方を学ぶこと。他人の価値を発見することで、ビジネスの価値も発見できるようになります。さらに心が整い、リーダーとしてのパフォーマンスも上がるのです。

モチベーションは悔しいと感謝の二段階ロケット

住谷:「モチベーションは二段階ロケット」とは、どのような意味でしょうか?

西村:モチベーションは「悔しい」と「ありがとう」の二段階ロケットです。スタートアップ企業の経営者や、これから起業していく人は莫大な心のエネルギーが必要です。ロケットが大気圏を突破していくときに、大きなエネルギーが必要なのと同じです。

燃料は「悔しい」「負けたくない」「もっと成功したい」「世の中にないものをつくって認められたい」といった感情で、自分もまわりも火傷するくらいの大きなエネルギーです。

このエネルギーを使い切ると、次は感謝が原動力となりエネルギーが出せます。感謝によるエネルギーはマグマの横で湧きだしている温泉のようで、大きなエネルギーではあるが自分もまわりも癒してくれます。

3Sを使って相手をほめる

渋沢:「ほめ達!」のメソッドとは何でしょうか?

西村:たくさんあるのですが、すぐにできるのは口癖を使うことです。「ほめ達!」の3Sというものがあり、「すごい」「さすが」「すばらしい」を言うだけで「ほめ達!」になれます。

渋沢:普段あんまり言われない言葉なので、実際に言われると嬉しいですね。

西村:そうなんです。暗闇に光るろうそくのように人が集まる存在になれるんです。

自分の短所はまわりの人の長所を受け止めるためにある

住谷:「助けてもらう強さを身につける」についてお聞かせください。

渋沢:わたしは全部自分でやってしまって、甘えることが苦手なんですよね。

西村:わたしも経営者たるもの、自分が完璧でなければならないと考えていました。すべて自分でマネージメント、ハンドリングしないといけないと思っていたのです。そのため、人に助けてもらうことがとても苦手でした。

あるとき「ジグソーパズルのでっぱりが長所、へこみが短所だとすると、へこみは誰かのでっぱりを受け止めるためにある」という話を聞いて考え方が変わりました。一か所だけ出でっぱらせておいてほかは凹ませておくと、いろいろな人の長所を受け入れることができ、ピースが大きく広がっていきます。更に、ピースに描かれている絵柄、つまりビジョンが魅力的で、わたしもこの絵の一部になりたいと思われると最高です。

自分がどの程度の山に登りたいのかも重要です。ハイキングに行くなら自分だけで行けばいいです。しかし、エベレストなど高い山に登りたいのであればチームを組む必要があります。自分のビジョンが大きくなるほど人に助けてもらう必要があります。ぜひ、助けてもらわなければ到達できないくらいの大きな目的、目標をもってください。


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