株式会社アウェイク代表取締役
森田 市郎 × 住谷知厚
今回のトークセッションでは、株式会社アウェイク代表取締役であり、プロコーチ・ビジネスコンサルタントとして活躍される森田市郎(もりた いちろう)さんをお迎えしました。愛知県出身の森田さんは、これまでに延べ2万人以上に対してコーチングを実施。現在は「日本一のコーチングスクール」を目指し、年商10億円を目標に掲げて挑戦を続けています。
「優しい経営者を強くする」という一見相反するようなテーマの裏側には、森田さんの壮絶な原体験と、現代のビジネスパーソンが抱える「自分軸」への深い洞察がありました。内なる声を聞き、周囲を巻き込み、組織を劇的に変えていくための本質的なアプローチについて、詳しくお話を伺いました。
「自分に優しくなる」ことが、真のリーダーシップの始まり
住谷:森田さんが提唱されている「自分軸ビジネス2.0」、そして「優しい経営者を強くする」というテーマには、現代のリーダーに対するどのようなメッセージが込められているのでしょうか?
森田:私たちは7年間、全国で講演やイベント、セミナーを行い、常に対話を大切に運営してきました。なぜ今「優しい経営者を強くする」必要があるのか。コーチングスクールでは、5〜10カ月という長い期間をかけて受講生の「天命・使命・ビジョン・ゴール」を徹底的に言語化します。ところが、志を高く持って会社に戻った受講生の10人中8〜9人が、意気消沈して戻ってくるという現実に直面したんです。
彼らが社内でビジョンを語ると、「今はそんな余裕はない」「具体的な戦略はどうなんだ」という反応が返ってくる。ここで悩んでしまうのは、トップダウンで「いいからやれ」と強引に進められない、本当に優しくて素敵な人たちばかりなんです。仲間や従業員を大切にしたいと願うからこそ、周囲の顔色を伺い、自分の情熱に蓋をしてしまう。だからこそ、私は一貫して「優しい人こそ強くあれ」と伝え続けています。
自分軸とは、自分が本当にやりたいことに向かって情熱的に生きている状態です。ビジネスで言えば、「なぜこの事業をするのか」を魂から語り、毎日そこへ向けて行動している状態。これが明確になると、内側から勝手にエネルギーが湧き出し、結果として企業のエンゲージメントや魅力が劇的に上がります。
ただ、これを見つけるのは簡単ではありません。特に優秀なビジネスパーソンや、30代後半から50代のミッドライフ・クライシス(中高年の思春期)を迎える世代ほど、外からは順調に見えるのに、内心では「本当にこれが自分の人生の最高なのか」と問い始める段階に入ります。ここで多くの方が「今さら自己理解なんて恥ずかしい」と感じがちですが、それは大きな誤解です。
優しい人ほど、これまで「せねばならない」という社会的責任や周囲の期待に縛られ、半分だけの自分軸で生きてきました。他人にはどこまでも優しいのに、自分にだけは驚くほど厳しい。自分軸を取り戻すための起点は、まず自分に優しくなること、つまり自分のやりたいことを自分自身に許可してあげることなのです。リーダーが自分自身を許し、情熱を解放したとき、初めて本当の意味で人を動かす力が宿るのです。
住谷:自分を許し、自分軸を確立することがリーダーシップの源泉なのですね。森田さん自身のそのパワフルな姿勢は、どのような経験から形作られたのでしょうか?
森田:実は、今の姿からは想像もつかないかもしれませんが、昔の私は重度のいじめられっ子でした。宗教と関わりのある家に生まれ、社会の風潮の中で誤解や偏見を受けることも多く、自分のやりたいことを抑え込み、「教わることでなんとかその場をやり過ごす」というタイプでした。
人生の大きな転機は、親友の自殺未遂です。目の前で命を絶とうとした彼を見たとき、これまでの自分の抑圧が吹き飛び、心の底から「本気で助けたい」という声が湧き上がるのを聞きました。そこから必死に「寄り添い・傾聴・対話」というアプローチを学び、実践した結果、彼は社会復帰を遂げることができた。そのとき、救われたのは彼ではなく、自分の方だったと気づいたんです。
この経験が、私の提供するプログラムの根幹になっています。その後、サラリーマンやボランティアを経て約6年前に創業しましたが、最初から順調だったわけではありません。むしろ、私は常に「今はうまくいっていない」と定義し続けています。これはネガティブな意味ではなく、ゴールと現状に差分がある状態こそが面白いという意味です。
事業が踊り場に達したときに飽きてしまうのが一番怖い。任天堂が花札からテレビゲームへ飛躍したように、上り調子のときにこそ次の挑戦へ意識を向ける。常に「現状の自分」を疑い、アップデートし続けること。それが、いじめられっ子だった私が、2万人以上の人生に深く関わるコーチとして立ち続けることができている理由かもしれません。
スキルよりスタンス!最高の結果を出す組織戦略と仲間づくり
住谷:自分軸を持つリーダーが、実際に組織を動かし、ビジョンを実現していくためには、具体的にどのような戦略が必要だとお考えですか?
森田:やりたいことが一人で完結せず、到底一人では実現できないようなスケールであるほど、それは健全で大きなビジョンだと言えます。だからこそ、人を巻き込むための戦略が必要になります。多くの経営コンサルタントは事業戦略を語りますが、実はそれ以上に重要なのが、戦略を組織に正しく“導入”するための「組織戦略」です。社長と同じ方向に矢印を揃えられるメンバーをいかに育てるか。ここでコーチングの技術が不可欠になります。
私自身の組織づくりにおいて、何よりも重視しているのは「スキルよりスタンス」です。採用は基本的に飲み採用。私たちのチームビジョンは「最高の乾杯を毎年更新する」というものです。苦しい状況にあっても『この仲間となら乗り越えたい』と思えるか、そして仕事を終えた後の酒が最高に美味いか。私は経営者仲間や地元の友人と飲むのも好きですが、何より社員と飲む時間が一番面白いと感じています。それが組織の健全さを表す指標だからです。
現在の私たちのモデルでは、受講生が10カ月のプログラムを通じて私たちの価値観や文化に深く触れ、その中で「このビジョンを一緒に広めたい」と自発的に感じた方と一緒に仕事をしています。これは一見、感覚的な判断に見えるかもしれませんが、実は長い時間をかけた大量の観察データに基づく総合的な判断です。
組織においてカギとなるのは、法人(アウェイク)の「やりたいこと」と個人の「やりたいこと」の接着面がどれくらい重なるか。役割の抽象度が上がるリーダー層ほど、この重なりが大きく、濃くなければなりません。私は組織内のタイプをA~Dと分類しています。
タイプAは、 方向性は合っているが、処理能力はまだ小さい新人層です。いきなり広大なタスクを任せて潰さないよう配慮が必要となります。タイプBは、方向性も合い、能力も大きいエース級。新しいミッションを次々と与えて伸ばしていきます。タイプCは、方向性が合わない状態です。期限や基準を明確にし、変化が見られなければ「卒業」という選択肢を提示します。タイプDは、方向性が合わず能力だけが大きい。ここは最も注意が必要です。放置すると社内がカルト化し、組織を崩壊させるリスクがあるため、即座に手を打たなければなりません。
これまでは「能力があるから役職に就ける」という考え方が一般的でしたが、これからはスタンスが最優先される時代です。変な人を組織に入れないこと、そして方向性がズレたままの状態で放置しないこと。それがリーダーとしての本当の責任です。
住谷:個々のスキル以上に、同じビジョンに向き合えるかどうかが重要なのですね。それをすり合わせるための具体的な手法はあるのでしょうか?
森田:結局のところ、すべてはコミュニケーションの質に集約されます。例えば、社長が社員と行う15分や30分の1on1であっても、その質が変わればアウトプットは180度変わります。しかし、多くのリーダーは、自分のこれまでの人生史で固まったコミュニケーションの癖から抜け出せません。
大切なのは、小手先のテクニックではなく、学問としてのコーチングの基準を自分の中にインストールすることです。人間の行動は「入力(インプット)」が変われば「出力(アウトプット)」が変わるようにできています。コミュニケーションの入力そのものを根本から変える。その劇的な変化を、まずは一度、正しく体験してほしいのです。
私たちが提供しているのは、単なるノウハウの伝達ではありません。対話を通じて自分自身の「入力(インプット)」を書き換え、組織全体のOSをアップデートするプロセスです。社長一人の視点が変わるだけで、組織全体に流れる空気の質が変わり、結果として数字や成果がついてくるようになります。
学び続けるリーダーが、優しい人が損をしない世界を創る
住谷:森田さんは現在も多額の自己投資を続けられていると伺いました。教える立場でありながら学び続ける姿勢には、どのような信念があるのでしょうか?
森田:私は創業から6年で、自己投資の累計額は5,500万円を超えました。現在も年間1,500万円ほどを学びに投じています。コーチングを教えている身ではありますが、私自身も月に2回は必ず信頼できるコーチからセッションを受けています。
これは特別なことではありません。世界トップクラスのアスリートに必ず専属のコーチがついているのと同じです。自分自身の視点には必ず「死角」があります。その死角を指摘してくれる存在がいなければ、成長は止まってしまいます。私は、リーダーやメンターという立場にある人間は、自ら学びをやめた瞬間、誰かに何かを教える資格を失うと考えています。
私がここまで学びと対話にこだわるのは、個人的な夢があるからです。それは、「優しいリーダーが損をする世界」を終わらせることです。
私の父は天理教の教会の会長をしていました。父は本当に真面目で、誰に対しても優しい人でした。しかし、その優しさをどう力に変えればいいのか、どう伝えればいいのかという術(すべ)を持っていませんでした。その結果、周囲に想いが伝わらず、人が離れ、社会に適合できずに傷つき、最後は鬱になってしまいました。そんな父の背中を見て育った私にとって、優しい人が報われない現実は、何よりも耐え難いものでした。
私は、父のような「優しいリーダー」の影響力を最大化したい。彼らが自分軸を持ち、正しく人を巻き込み、強くしなやかにビジョンを実現していける世界を創りたい。そのために、まずは私の目の前にいる方々と全力で向き合い、確実に世界を変えていく決意です。
今日、この場にいらっしゃる皆さんも、きっと誰よりも優しいリーダーなのだと思います。皆さんの内側にある情熱を、どうか自分自身で許してあげてください。そこからすべてが始まります。本日は、熱心に聞いていただき本当にありがとうございました。
■森田 市郎さん
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本記事は、ワクセル会議にて公開収録した森田さんのインタビューの内容です。
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