経営者対談

プルデンシャル生命
「川田修」 × 嶋村吉洋

プルデンシャル生命の川田修さんにインタビューをさせていただきました。

川田修さんは、プルデンシャル生命で入社から退職まで96か月のうち、月間目標を95ヶ月達成され、当時最短で営業職の最高峰であるエグゼクティブ・ライフプランナーになられた、まさに伝説の営業マンでいらっしゃいます。営業成績で全国トップの経験をもとに、作家や講演会講師としても活躍されています。

今回のインタビューでは、目標達成する上で自分の弱い部分との向き合い方や、信頼に繋がるコミュニケーションなど、圧倒的な結果を出し続けていらっしゃる川田修さんにしか聞けないことをお聞きしました。たくさんの人と協力しながら、互いの目標に向かって切磋琢磨する私たちにとって、役立つ内容が詰まっていると思います。

輝かしい業績を積み上げられてこられた川田さんですが、本気のスイッチが入った瞬間はいつだったのでしょうか?

川田:僕の経験上、お客様は生命保険の営業に対して、最初から心を割って話してくれることはありません。お客様は、生命保険なんて興味ないし、知人・友人から紹介されたから会っているだけです。しかも、生命保険の営業マンに対して、あまりいい印象抱いていない方が多いです。ただ、そんな中で話をしていくと、あるところで「あ、今までの生命保険の営業マンと違うんだな」と思ってもらえる瞬間が出てきます。わかりやすく言うと、お客様が、自分の悩みや問題点を話してくれるようになるときです。それも深く。

その瞬間から、「役に立ちたい」という気持ちに変わるんですよね。もちろん営業マンなんで、モノを売ることは頭の中にありますが、なんかここで裏切ってはいけないと思えてきます。この人の役に立ちたい、この人と縁をつくりたいなど、スイッチが入る時が少しずつあって、それが本気になった瞬間なのかもしれません。

人の役に立ちたい、縁をつくりたいと感じるようになったタイミングについて、もう少し詳しくお聞かせください。

川田:実をいうと僕は、会社でトップを取ったあとに、すごく辛かった時期があります。

「入社して5年でトップになります!」と宣言して、実際に5年目でトップになりました。その頃は「人の役に立ちたい」という気持ちではなくて、トップになることでいっぱいでした。トップになることを目指していたので、トップになったら急に自分の目標が失われかけてしまった。もう一回、トップを取ろうと5年後くらいに「今年、トップを取ります!」という話をしてスタートしたんですね。結果、2位でした。そこから急にやる気を失ってしまいました。

自分を苦しめていたのが、順位に対するこだわりだったことで、それに気づくのに少し時間がかかってしまいました。

苦しんでいた時期は、子どもが小学生の時でした。子どもが朝起きて学校へ「行ってきます!」というのを、ベッドの中で聞いていました。ずっとベッドから出れないんですよね。子どもが帰ってきても、まだベッドにいて、明日は絶対に仕事へ行こうと思いながら。

アポイントがキャンセルになると、ちょっとホッとする自分がいて。だけどフルコミッションなので、生活ができなくなるから不安になります。そういった時期が少しありました。

それから徐々に周りの人たちに会っていった時に、ある時から自分の考え方を変えようと思いました。いつから自分が順位にこだわっていたかというと、おそらく中学生くらいです。試験結果などが廊下に順位が張り出されていた時代で、常に順位付けされていました。そして、上位の成績をとって周りから「すごいね」って言われることに、自分の価値を見出していました。

この長く身にしみていた順位へのこだわりを手放そうと思ったら、急に何していいかわからなくなったので、途中からこの3つのことに当てはまることは、イエスと言うように決めたんです。

1.それは新しいか?
2.それを想像したとき、ワクワクしたか?
3.それは人の役に立つか。

この3つにイエスだったら人に頼まれた事は何でもやろうと。順位は関係ないわけなんですね。イエスだと思って色々な事をやりだしたら、仕事じゃないことでも人に駆り出されることも出てきます。自分が変わっていったら、考え方はもちろん周りも変わっていったんです。

それからですね。「お客様の役に立たなければいけない、喜んでもらわないといけない」と思えるようになったのは。

様々な方からよく「営業で何を意識しているか?」と質問されます。
僕は「お客さんを元気にすること」と答えています。

商品が売れることではなくて、「川田さんに会ってよかった」と思われる営業マンでいたい。別に、売れる営業マンでいたいわけではない。こんな風に考え方が変わると、自然に売れるようになります。がむしゃらに営業する若手もいるため、常にトップにいられるわけではありませんが、彼らと比べるわけでもないので、いいのです。それに、がむしゃらにやる時期もとても大切だと思っています。

ちょっと長くなってしまいましたが、そんなところです。

インタビュアー:川田さんは本当に、人間的に素敵な方ですね。

川田:全然、そんなことないですよ。それは本当に勘違いなんです。絶対にプライベートなところなんて、見せられません!(笑)

仕事で結果を出すために行なっている自分磨きや、こだわっていることはありますか?

川田:あんまり「自分磨き」は、してこなかったと思っています。

とにかく自分に甘いところがあって、実はこう見えて人見知りなんです。人見知りという以外にもあります。例えば、電車の同じ車両に、同じ支社の人が乗ってきたとします。でも自分は「声かけたとしても、相手が次の駅で降りるような、ちょっと違和感のあるやりとりになったら嫌だな~」と思って声かけられないんですよ。あんまりわからないかもしれませんが、どうですか、わかります?

インタビュアー:はい、わかります。

川田:そういった気持ち、わかりますよね。あとは、人と一緒にいるのがあんまり好きな方ではありません。パーティに行くのも得意じゃない。だからあんまり行かないんです。たくさんお誘いいただくときに、顔を出す程度です。

あんまり自分を磨くとか、何かに挑戦するとか、あんまりないんですよね。だからすごく会社の人間に言われるんですよ、「川田さん新聞何種類、読んでるんですか?」と。僕、新聞取ってないからって(笑)

本を読むのも、僕は年間1、2冊程度しか読みませんし、本を読むのがあんまり得意じゃない。

インタビュアー:ではん、どこで情報収集されていますか?

川田:今は、ニュースアプリなどでいくらでも情報収集することができます。調べようと思えば調べられます。また今、皆さんが感じさせられたように、あんまり喋らなくても知ってるんじゃないかと雰囲気を醸し出すことはできます(一同爆笑)。

リクルート事件の時期の入社やプルデンシャル生命への転職など、逆境を乗り越えてこられた原動力はなんですか?

川田:逆境に向かおうとする原動力は、その時々に欲しいものがあったからだと思っています。

例えば、リクルートで働き始めた時は、大企業で働く人たちよりもリクルートの人たちの方が光って見えて、自分も輝きながら仕事がしたいと思ったからです。

プルデンシャル生命への転職も、実は一番欲しかったのはお金なんですね。今こうやってハッキリ言えるのは、「お金だけでは幸せになれない」というのがわかったからです。お金はすごく大事。大事だけれど、お金と同等もしくはそれ以上に大事なことがあるとわかってきました。だから今は、「転職理由は、お金だった」と言えます。あとは時間もですね。そして平等に評価されたらどれくらい価値があるのかを知りたかったというのもあります。

不安の中で転職はしましたが、最初の1年目は元旦しか休まず働きました。なぜそこまで追い込んでいくかというと、弱いからなんですよね。頑張れる環境を利用させてもらわないと、できないからです。

以前本にも書きましたが、アポイントを取る電話がすごく重いんですよ。それを自分で跳ね除けて、自分でアポの電話をかけようと思っても、何か理由をつけて、逃げたくなります。だから人に言うんですよ「俺、7時からアポ取りの電話するから、もし電話してなかったら言ってくれ」って。周囲に話していると、やらなかったことに対して言われるのが嫌だから、ちゃんとやるるんですよ。

全部、自分が弱いから。でも、逃げたくないから環境を利用させてもらって、向かい合うのが僕のやり方です。

「運に勝る実力なし!運は見えない努力が呼び寄せる」が信条になったきっかけを聞かせてください。

川田:成功された方は同じことを思っていらっしゃると考えています。成功された方は、運が強いんですよ。ただ、運は神様から与えられたものではないと僕は思っています。

その人は見えないところで、すごい努力をしているんですよ。ただ単に一生懸命、何時間も勉強するだけではなく、自分の考え方を変えようとする、言葉に表現できないような、書き出せるようなものではない努力をたくさんしています。

物事を前向きに捉えることもそうですね。すべてにおいて、何か得られるものはないかと探していることなど、実はすごい努力だと思うんです。それが結果的に神様が与えたものでも何でもなくて、その努力に見合ったものがちゃんと降り注いできている。運と思われがちだけれど運じゃなく、その人の努力だと思っています。

運じゃなく努力だというのは、僕が成功している方や経営者の方々とお話をする機会をこの仕事を通じていただいて感じることです。やっぱり上手くいってる人は、思考が違うんですよね。思考が違うから上手くいったのか、上手くいったから思考が変わったのかはわかりません。僕の中で辿りついた答えは、努力によって思考も変えたということ。もともと生まれ持った思考だけでなくて、努力によって色々なことを吸収し、自分が変わろうとして、過程で思考が変わり、結果的に上手くいったと推測しています。

インタビュアー:努力によって思考を変えることは、とても時間がかかることだと思います。川田さんのご経験では、どのくらいの年数がかかったのでしょうか?

川田:いっぱい落ち込んだり、布団から出られないなど、色々なことを乗り越えてきましたので、どれくらいの年数かはわかりません。

でも、40歳過ぎてからだと思っています。それこそ40歳くらいのときに、飲んでいる場で剣道をやられている人が「打って反省、打たれて感謝」と、ポッと言ったんですよ。剣道には「交剣知愛」という言葉があるんです。「剣を交えて愛を知る」「打って反省、打たれて感謝」という言葉から推測するに、自分にとって辛いことや納得できないことはいっぱいあるけれど、得られるものは必ずあると思っています。

冒頭にお話した営業成績が2位に終わったことも、実は一時的にはトップでした。最後の月に「付き合いで保険に入ってもらった件数が認められない」ということがあり、トップから陥落したんですね。その時は、会社の考え方を許せませんでした。

それは、一番売った人間がトップだと思っていたためです。だけど今は違うんですよね。世の中を変えていくため、良くするためにやるんだから、正しいことを正しく判断する必要があるなと学びました。だから「打って反省、打たれて感謝」という言葉が僕の中に入ってきました。成功している人は「打たれて感謝するのを忘れてはいけない」と考えていると思っています。

この言葉をどういった経緯で耳の中に止めるようになったかはわかりません。伝えてくれる人がいるのかもしれません。その人のタイミングによって、受け止められる言葉は変わってくると思います。僕は、色々な経験をした40歳を過ぎたくらいだと思っています。

保険営業というイメージは、警戒され、疑われるところから始まることもあるかと思います。前提を覆すポイントなど意識していることはありますか?

川田:まず、力まないことです。力みといっても身体のことではなくて、相手の頭の中にあることに注力する。こちらのやりたいことに注力するのではありません。

相手の脳みその中に「保険のことを聞きたい」というのはありません。しかしおそらく、脳みその裏側の端っこにちょこんと存在し、完全にゼロではないと思います。なぜなら保険のお金を月々払っていますから。今のプランが正しいかどうかもわかっていません。よくありがちなキャンペーン商品を勧めてくるような営業マンには話したくありません。

では今、何に興味あるかを考えると、お客様が経営者の場合「社員にどうやって楽しんで仕事をしてもらうか」「資金繰りのこと」「採用の時の面接」などがイメージできます。だから、そこに僕が何かしらのお役に立てないかというスタンスです。

僕が得意なのは「営業の方々にお話をして、営業の考え方を変えていく」です。「僕、勉強会できますよ」とお伝えすることもできますし、商談にならず勉強会の話をしていくこともあります。面接でどういったことを聞いていけば良いか、見抜いていったら良いかなどです。

プルデンシャル生命は、140年歴史があるので、基本的に全部マニュアル化されているすごい会社なんです。面接1人に対して、2時間くらい3人で面接をします。すごくヘトヘトになるんですよ。だけど終わった瞬間に、完全に化けの皮を剥がされたなという感覚が残ります。非常にマニュアル化されているため、必ず過去を問うようにしており、人は必ず過去を繰り返します。過去どうだったかを徹底的に、違う角度で質問することで、本質を探るなど、怖いでしょ?

そういった話が役に立つこともあるんです。このように、ひたすら相手の役に立とうとしていると、「保険なんだけどさー」って言ってもらえて、話を聞いてみると大体の場合、大満足していません。

僕は保険の「ほの字」も話してなくても、名刺交換した瞬間から保険の話をしたいと相手は思っています。もし相手にお話することになったら「一番自信を持ってできる社会貢献は、生命保険の正しい考え方を伝えることです」とお話します。「入ってもらうことではありません。生命保険の正しい考え方を伝えることを仕事としています。おそらく生命保険に関しては、一番詳しいことと生命保険の真意についても理解してもらっていると思っていますので、聞かせていただく時間をください」とアポを取り直します。

そこで何も生まれなければそこで終わりです。「次回、色々と聞かせていただいて、それで必要がなければ商品の話も一切しません。必要ないところに商談は存在しないと思っています」と言う風にお伝えをし、お時間をいただきます。そうすると保険の話を聞けるじゃないですか。でも本人からすると保険の話を聞かれているという感じになりません。

保険は色々な事ができるのです。例えば、相続のことや、社員を幸せにするための福利厚生の考え方、社員の定着率はどうなんですか?と保険に関係する質問にはなりますが、「どういった風に後継人に会社を引き継ごうと思っていますか?身内なんですか?」など。

事業承継も保険に関係しています。お客さまにとって事業承継は保険に関係していると思わないんですよ。「実は、事業承継でこういったことを悩んでるんだ」とポロッと出てくるので、そうしたら「もしかしたらお手伝いできるかもしれない」と、次回のご提案になっていきます。

つまり、意識していることは順序です。

まず最初は相手にチューニングする(合わせる)。相手の興味のあることに、ちゃんと自分が役立てることを考える。そうすると相手の姿勢が変わっていくことがわかるんですよね。

インタビュアー:本当にお客様のことを想って、それがお客様に伝わっているからこそ、川田さんの成功があるのですね。

お客様を一番に考えるコミュニケーションは、色々な方と接する中で培われたことなのですか?

川田:そうですね。最初から持っていた訳ではありません。最初はモノ(商品)を持っていたんですよ。

よく言うんですけれど、「話し方教室」はよく聞くじゃないですか。でも「聞き方教室」はありませんよね。だけど一生懸命に話をされるのと、話を聞いてくれるのは、どちらが嬉しいですか?

インタビュアー:聞いてくれることです。

川田:ですよね。人とのコミュニケーションは、圧倒的に聞くことの方が大事だってみんな言います。しかし、話し方教室はあるけれど、聞き方教室はない。矛盾しているんですよね。それは多分、話し方はテクニックで向上する。聞き方は、テクニックではなく心なんです。おそらく相手をどれだけ愛せるかなんですよ。

「みなさんの周りで、この人の話だったら親身になって聞けるという人は誰ですか?」と聞いたら、「家族や親友」と返ってきます。家族や親友は、自分が愛している人なんですよね。愛情がある人に対しては聞けますが、お客さんになると愛情がないから聞けません。だからある意味で話は繋がっていて、「この人の役に立ちたい」と思った瞬間に、愛情は生まれます。相手も尊重されている、愛されていると感じる。だから色々と話してくれるようになります。

先程言った「ニーズの無いところに商談はない」というのは全部一緒で、相手に問題があるのかを聞く。悩んでいることを聞くことが大事で、仕事ですらそう思っているはずです。しかし、中々プライベートではできないですよね。

そのあたりも実は色々とありまして、僕は全然できません。こうやって話していると「すごい几帳面な人」と映るかもしれませんが、典型的なO型です。僕のことをよく知ってる方は、大雑把で自分の服も畳めない、何もできないと思っています。だから、仕事の時は努力してスイッチを入れてやっています。

最後に、これからを担っていく若手起業家にメッセージをお願いします!

川田:若手起業家に贈りたいメッセージは、「打って反省、打たれて感謝」ですね。

僕は、子どもにずっと言い続けている言葉があります。「死んじゃう以外はすべていい思い出」と。すべてが後々になった時に「あ!あのことってこのためにあったんだ」と思えるようになります。それが一番大事です。

別の見方では「死んじゃうこと以外はすべて思い出」になるため、感謝することに変わります。そういった風に見て欲しいですね。

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