プロレスラー
KAIRI × ワクセル
今回のゲストは女子プロレスラーのKAIRIさんです。KAIRIさんは日本女子プロレス団体スターダムに入門し、その後、アメリカ最大のエンターテインメントプロレス団体WWEに挑戦したこともあるスター選手です。身長155cmと小柄な選手ながら、常に進化をし続けるKAIRIさんに、そのチャレンジ精神についてお話しを伺いました。
身長155cmというハンディを乗り越えられたワケ
大坪:今回のゲストは女子プロレスラーのKAIRIさんです。KAIRIさんは大学卒業後、一般企業の内定を蹴って、林下詩美選手などスター選手を輩出する日本女子プロレス団体スターダムに入門。輝かしい戦績を残し、チャンピオンベルトをいくつも獲得してスター選手として活躍しました。
その実績を掲げてアメリカ最大のエンターテインメントプロレス団体WWEに挑戦し、一躍スター街道を駆け上がりました。現在は古巣のスターダムにて日本に復帰し、現役として活躍されています。
住谷:内定を蹴ってプロレスに行くってすごいですね。
KAIRI:大学まではヨット競技をやっていて、日本代表も経験しました。自己紹介では、『海賊王女』と名乗り、海賊モチーフのコスチュームやガウンを着ていました。
就職活動をするなかでヨットを続けるか迷いましたが、社会勉強もしたかったので、一般企業の内定をもらいました。でも大学って単位を取り終えると卒業まで暇になりますよね。人前に出ることが苦手だったので、それを克服したくて、たまたま誘われた舞台に出演することにしました。
趣味程度で始めたんですが、プロレスがテーマの舞台に出たときに、観に来ていたスターダムの風香さんという方に「向いていそうだからプロレスをやってみないか」と誘われたのが、プロレスの道に進んだきっかけです。
もともと演技をするとか、表現することが好きだったので、「ちょっとやってみようかな」って軽い気持ちで始めたらハマって、そこからのプロレスにつながっていくので、ちょっと変わっていますね。
プロレスの勉強と役作りのために、後楽園ホールにプロレスを観に行ったことがあるんですが、その時、本当に感動しちゃったんです。
大坪:でも、プロレスって、激しくて痛い。怖くなかったですか?
KAIRI:怖いですよね。私も155cmと小柄ですし、絶対向いていないと思っていましたが、観に行ったら自分より華奢で細身な若い女の子たちが、ありのままの自分をさらけ出して、ボコボコになっても髪がぐちゃぐちゃになっても、なりふりかまわず一生懸命戦っている姿、そして勝つ姿に一目で感動しました。
それでやりたいと思ったんですが、最初は親には言えなくて内緒で入門しました。当時『銭形金太郎』というバラエティ番組があって、たまたまスターダムの寮が取材されることになってしまい、私が映ってしまったので、放送される直前に腹を決めて親に言いました(笑)。
親には「1年本気でやって何も芽が出なければちゃんとやめるから。また就職活動するからチャンスをください」と話しました。親も心配はしていましたけど、「やってみれば」と言ってくれたのでよかったですね。
大坪:スターダムのプロテストでは追試からのスタートだったとか。
KAIRI:物覚えが悪く、人よりもうまくできない、不器用な雑草タイプの人間なので、勉強もスポーツも、誰よりもできないところからのスタートでした。途中、何度も辞めたいと思いました。周りからも向いてないから他のことをやったほうがいいとか、センスを感じないないとか、いろいろ言われることが多く、自分もそう思っていましたね。
でも、昔から途中で何かを諦めることができない性格で、やめたほうが後悔しそうだと思ったんです。ヨットも演技も好きだったんですが、ヨットは自分の目標としていた結果を出せて満足したので辞めました。
プロレスってエンターテインメントでもあるし、スポーツでもあるところが良くて、スポーツが大好き、表現が大好きな自分にとって、どちらもあるプロレスは夢の世界。なので、演技するよりプロレスなのかなと思って、選択しました。でも最初3年間ぐらいはまったく芽が出なかったんですよね。同期の方がチャンピオンになったりして結果を出していたので、当時は本当に危機感を感じていました。
何事も続ければチャンスは必ず来る
住谷:そこから世界最大のWWEに挑戦しようと思ったのはどうしてですか?
KAIRI:恩師から言われた「できるできないじゃない。何事もやるかやらないかだよ」という言葉が自分の中にずっとありました。ヨットも最初の1年は最下位ばかりで周りからも才能がないと言われていたんですが、3年生になって初めてインターハイで準優勝するなど結果を残すことができました。「何事も続ければチャンスは必ず来る、やり続けることが大事だな」と思ったんです。
プロレスでも最初は全然うまくいかなかったけれど、続ければ何かが変わるという思いが自分の中にありました。WWEに挑戦しないかと声をかけてもらって、すごく光栄だったんです。
でも当時、スターダムの選手会長でしたし、アメリカに行くのは半年以上悩みました。英語もそんなにしゃべれないし、通訳ももちろんいません。ひとり暮らしで全部自分でやらないといけないのは本当に大変だと感じました。
アメリカって結果を出さないと、契約途中でも切られることもあるすごくシビアな世界なので、本当に迷いました。でもそのときもやっぱり断った方が後悔すると思ったんです。最初は環境に慣れることに精一杯でしたし、人間関係をイチから構築しないといけないのが大変でしたけど、行って良かったと思っています。
日本とアメリカ両方の良さを活かして、プロレス界を盛り上げたい
住谷:不安があっても絶対に一歩を踏み出すと決めていらっしゃるんですね。
KAIRI:未来を想像してみて、たとえばその道を選んで、うまくいかなかった場合と、それを断ってモヤモヤしている自分と2パターンを考えたときに、やっぱり挑戦している自分の方が輝いているし、成長できる考えます。
WWEに関しても、世界中から一流の選手が集まるので、キャラクターも被ったらいけないし、唯一無二の存在でいないといけません。すごい人たちばかりなので、「あの人はすごい」って周りと比べてしまいますが、大事なのは自分のキャラクターを作ることです。
私には“海賊”っていうキャラクターがあるから他人と比べる必要なんてないし、それを教訓にしました。周りがすごすぎて、自分のダメなところばかりに目がいっちゃう時期って誰にもあると思いますが、「自分にしかないところは何だろう」って考えて、そこを伸ばしていくようにしたら、こんなふうに自分でも奇跡のような結果、MVPを獲ってチャンピオンベルトを巻くこともできました。
WWEでは一流選手であればあるほど、舞台裏での振る舞いがすごいです。マイクパフォーマンスを練習したり、ウォーミングアップを欠かさないとか、決して準備を怠りません。
ご飯を食べていたら急に呼ばれて今からマイクパフォーマンスしてくれとカメラの前に立たされることもあるし、試合はないと言われていたのに、ホテルに戻ったら試合をやってほしいと呼び戻されることなども日常茶飯事。いつ呼ばれてもいいように、常にコンディションを整えてスタンバイしておくことが必要です。
あと、スタッフさん一人ひとりの名前を覚えてしっかり目を見て挨拶をするとか、謙虚な人がたくさんいます。私も現場に甘んじることなく、もっと謙虚に生きようと思いました。
どんな一流の選手でも、落ち込んでいたり泣いている姿を見ることがありますが、プライベートでどんなに辛いことがあっても、カメラが回るとすぐに切り替えて目の前のお客様を楽しませるというプロ根性があります。そんな一流のプロの心得をWWEで学びました。
WWEの契約期間3年間は、寝る暇もないくらいに全力でやり切ったので、達成感もありました。日本とアメリカはプロレスのスタイルが全然違いますが、どちらも5年ずつくらい学んで、両方の良いところを吸収できたので、引退までにもう1回、日本で表現してみたいと思い、帰国しました。
大坪:今後はどんなことに挑戦してみたいですか?
KAIRI:アメリカと日本どちらでもプロレスを学んでいるので、両方のいいところを融合させて新しい自分をもっと表現したいです。プロレスを知らない方にも届けられるような、プロレス界全体を盛り上げていける人間になれたらいいなと思います。
私は本当に不器用でなかなかできなかった人間なので、できない人の気持ちにも寄り添ってあげられると思います。なので、自信をなくしている人を応援したり、後輩を育てることもしていきたいと思います。
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