経営者対談

ドクターキッドジャパン代表 環境学博士
飯島 健一 × 住谷知厚

今回のトークセッションにお迎えしたのは、環境学博士であり、ドクターキッドジャパン代表の飯島健一(いいじま けんいち)さんです。

飯島さんは、再生可能エネルギーや微生物を用いた環境改善の第一人者として知られ、築地や豊洲市場において「生ゴミが消滅する」という驚異のゴミ処理システム「KITシステム」を23年かけて確立しました。しかし、先生の真骨頂はその研究成果を単なる理論に留めず、社会実装するための「ビジネス構築力」にあります。これまで経営顧問として携わった企業は630社を超え、名だたる企業を上場へと導いてきました。

今回は、コラボレーターの法華津さんとワクセルの住谷が、飯島先生が提唱する「発酵を活かした健康法」と、あらゆるサービスを「ダイヤモンド領域」へと昇華させる独自の経営哲学について、その真髄を深く掘り下げて伺いました。

科学者が読み解く「上場企業」を生むビジネスシステムと「ダイヤモンド領域」の設計

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住谷:先生は科学者でありながら、経営顧問として630社以上の企業に関わり、実際に数々の会社を上場まで導かれています。その卓越したビジネスマインドがどのように現場で活かされてきたのか、上場に至るまでの差別化の戦略について、先生の歩みと共に詳しくお聞かせいただけますか?

飯島:今年で70歳になりますが、私の根底にあるのは常に『科学者』としての視点です。もともと大学で30歳まで研究に没頭していた院生でしたから、社会に出るのが遅かったんですね(笑)。自分の年金はどうなるんだろうと不安になり、日曜大学に通って社会保険労務士の資格を取ったりもしました。そこで出会った公認会計士の先生との縁から、ビジネスの世界に足を踏み入れることになったのです。研究には膨大な資金が必要ですが、それを国や他者に頼るのではなく、自らビジネスシステムを構築して稼ぎ出す。それが私のスタイルです。

私が経営に携わるとき、最も重視するのは「差別化」の設計に他なりません。たとえば、千葉県にある『株式会社 銚子丸』。今でこそ有名な上場企業ですが、私が顧問になった当時はテイクアウト専門のお寿司屋さんでした。時代が回転寿司へと移り変わる中で、当時の相場は一皿70円から80円。利益を出すのが非常に難しい状況でした。そこで私は、当時の社長に「一皿200円にしよう」と提案したんです。当然、ただ高くするだけではお客様は納得しません。差別化のポイントとして、レーンの真ん中に職人を立たせるというスタイルを導入しました。この体験の価値化が大ヒットし、結果として上場を果たすことができました。

また、不動産・建築業界で知られるエリアリンク株式会社の設立にも深く関わりました。3社を合併させて誕生したこの会社は、今やハローコンテナなどのストレージ事業で市場を牽引していますが、ここでも「他がやっていない利便性」をどうシステム化するかが鍵でした。私は運良く、銚子丸の堀地さんやエリアリンクの林さんのような『経営の天才』たちの隣に座る機会に恵まれました。彼らの才能を、科学的なロジックでどう補佐し、最大化させるか。そのパズルの組み合わせこそが、ビジネスを成功に導くポイントです。

この差別化を考える際、私は商品を3つの領域に分類しています。

まず、1つ目が「ゴミ領域」。これは、どこでも買える安価な消耗品です。コーヒー豆なら200gで1000円程度。ライバルがひしめき合い、血みどろの価格競争に巻き込まれる薄利多売の領域です。

次に、2つ目が「ゴールド領域」。これは「便利になりたい」「情報が欲しい」「綺麗になりたい」といった、欲求を満たすサービスや商品です。

そして最後が、最も価値の高い「ダイヤモンド領域」です。これは命や健康、家族の安全、あるいは深刻な痛みの解決に関わる領域です。人は命に関わること、例えば保険などには迷わず投資しますよね。

私が得意とするのは、本来は「ゴミ領域」にあるはずのコーヒーや食品を、健康という価値を付加することで「ダイヤモンド領域」へと引き上げる設計です。2019年から2020年にかけてフィリピンに滞在し、帰国後に自分自身ががんの宣告を受けたとき、病院のベッドの上で改めて「売りやすい商品とは、命に関わる商品だ」と痛感しました。あらゆるビジネスにおいて、この「命の価値付け」をどう行うかが、激しい競争から抜け出し、独自のブルーオーシャンを築くための唯一の道だと確信しています。

微生物が起こす奇跡:血糖値をコントロールする発酵の魔法と「消滅」するゴミ処理システム

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住谷:環境分野では、目に見えない微生物の力をどのように活用しているのでしょうか?

飯島:血糖値の研究を始めたのは約20年前、私の両親が糖尿病だったことが原点です。大切な家族のために腸内環境や免疫の研究をスタートさせ、5年ほどで成果が出て東北大学医学部の学会でも発表しました。当初は自分のメインの研究が忙しくて放置していましたが、ネパールでのある出来事が転機となりました。

私が籍を置いている、ネパールのModern Kanya Multiple大学の当時の学長さんが、空腹時の血糖値が550という、通常の5倍近い異常な数値で苦しんでいたんです。ネパール人は甘いチャイを1日に何杯も飲む習慣があり、3人に1人が高血糖という深刻な問題を抱えています。そこで、彼女が好きなコーヒーや紅茶に私の開発した成分を混ぜて飲んでもらったところ、わずか20杯ほどで数値が180台まで劇的に改善し、継続することで正常値に戻りました。この成功が日本での商品化への自信となりました。現在は、ビール会社からも「飲みながら血糖値を改善できる夢のビールを作れないか?」という相談を受けています。

発酵の本質とは、微生物の代謝活動そのものです。多くの人は「菌=汚い」と思いがちですが、お酒もパンも微生物の力でできています。おにぎりの旨味が増すのも、微生物が「排泄物(代謝物)」を出してくれるからです。私の曾祖母の家が醤油屋だったこともあり、私はよちよち歩きの頃から顕微鏡がおもちゃでした。微生物は、適切に扱えば最高のパートナーになります。

血糖値のコントロールにおいては、すい臓から出るインスリンと、逆に血糖を上げるグルカゴンというホルモンのバランスが重要です。私の研究では、特定の微生物を活用して免疫を整えることで、このグルカゴンの過剰分泌を抑え、バランスを適正化することに成功しました。国内に2,000万人いる糖尿病・予備軍の方々に、「好きなものを我慢せず、飲食しながら健康を目指す」という新しいライフスタイルを提示したい。これが私の提唱する、食のダイヤモンド化です。

そして、この微生物の力は地球環境も救います。私は23年かけて、生ゴミを完全に分解し尽くす「KITシステム」を確立しました。豊洲市場では毎日500kgから600kgの生ゴミをゴミ捨て場に投入しても、一度も溢れたことはありません。科学的に物質が消滅することはあり得ないと言われますが、これは微生物の「専門家チーム」による連携プレーの結果です。

大根が好きな菌、肉が大好物の菌、あるいは分解しにくいタケノコの皮やトウモロコシの芯を好んで食べる菌など、個性の異なる微生物を一つひとつ分離・培養し、対象に合わせて最強の混合菌チームを設計します。これは大井競馬場の馬糞処理や動物園での糞尿処理にも応用されています。森の中で倒木がいつの間にか土に還るように、自然の営みをビジネスや環境改善にシステムとして組み込む。体内環境も地球環境も、その鍵を握っているのは、私たちが「おしっこをいただいている」と言っても過言ではないほど身近で、偉大な微生物たちなのです。

全業態をブルーオーシャンへ変えるビジョンと「若者へのエール」

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住谷:微生物の力で健康を守り、地球を浄化し、それをビジネスとして成立させる。先生の生き方はまさにワクセルの理想そのものです。最後に、これからの展望や、次世代を担う方々へのメッセージをお願いします。

飯島:私はこれまで、自分の研究費を稼ぐために必死にビジネスシステムを構築してきました。科学者として「世の中に必要とされるもの」を作りたいという思いが原動力です。今の日本には素晴らしい技術や商品が溢れていますが、その多くが「ゴミ領域」での価格競争に疲弊し、本当の価値を発揮できていません。私は、それらを一つひとつ丁寧に「ダイヤモンド領域」へと引き上げるお手伝いをしたいと考えています。

たとえば、「食べても血糖値が上がらないコロッケ」。もしこれが実現すれば、そのお店の価値は一気に跳ね上がります。カレーも、ふりかけも、お酒も、すべてにその可能性があります。差別化とは、単に見た目を変えることではなく、「その商品が誰の、何の痛みを解決し、どう命に関わるか」を再設計することです。私のビジョンは、科学的なエビデンスに基づいた差別化を提供し、健康と経済が両立する豊かな社会を築くことです。

ビジネスは苦しむものではなく、楽しみながら世の中に貢献し、その対価として幸せをいただくものです。広める際には薬機法などのハードルもありますが、効果があると断定するのではなく、楽しみながら健康を取り入れる配慮が重要です。私のシステムが、次世代の若者たちが夢を持ってチャレンジするための強力な武器になれば、これほど嬉しいことはありません。

私はこれからも、顕微鏡の中の友人たちとともに、世界をちょっとずつ良くしていく挑戦を続けていきます。がんを経験した私だからこそ言えることですが、免疫は要(かなめ)です。健康であれば、何度でも挑戦できます。もし、自分の事業を差別化したい、社会課題を解決したいという熱い思いがあるなら、いつでも私を「こき使って」ください。

差別化の仕組みは、各業態に合わせていくらでも設計できます。皆さんが手がける事業が、誰かの命を輝かせる『ダイヤモンド』となるように、一緒に新しいブルーオーシャンを創り、素晴らしい未来をコラボレートしていきましょう。




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