挑戦者(元年俸120円Jリーガー、格闘家)
安彦考真 × ワクセル
今回のゲストは、2回目の登場となる安彦考真(あびこたかまさ)さんです。安彦さんはJリーグ最年長デビューの記録を保持する元Jリーガーです。自身の職業を『挑戦者』とし、常に新たな挑戦に臨んでいます。2022年2月に格闘家としてプロデビューし、これまでにアマチュア・プロの試合で5戦5勝4KOという結果を残しています。今回は格闘家としての安彦さんの挑戦について詳しく伺いました。
MCはワクセルコラボレーターで『走るMC・ラジオパーソナリティー』として活躍する岡田拓海(おかだたくみ)さんとワクセル総合プロデューサーの住谷が務めました。
40歳を超え、Jリーガーそしてプロ格闘家デビュー
岡田:本日のゲストは2度目の登場となる安彦考真さんです。前回は安彦さんがどのような方なのか、そして格闘家として活躍するようになったルーツをじっくりお聞きしました。今回は格闘家としての安彦さんを掘り下げていきます。
住谷:まずは安彦さんのこれまでの経歴を簡単に伺えますか?
安彦:僕はプロサッカー選手のマネジメントなどの仕事をしていたのですが、39歳のときに仕事を全部辞めて、Jリーガーを目指し始めました。志を持って始めた仕事だったはずなのに、いつしか生活するための仕事になっていて、自分に嘘をつき続ける人生に納得ができなくなったんです。
これまでにしてきた後悔を取り戻すことを決め、40歳でJリーガーになり、41歳で最年長デビューの記録を残すことができました。そして3年間のJリーガー生活を終え、引退セレモニーで「次は格闘家を目指す」と公言し、2022年2月に44歳で格闘家のプロデビューをすることができました。
極限の緊張から解放され、試合後は体重が7kgも増加
岡田:40歳を超えてJリーガーとプロ格闘家デビュー、この2つの経歴を持っている人はまずいないので、本当にオンリーワンですよね。現在、安彦さんはアマチュア・プロ通算5戦5勝4KOという素晴らしい戦歴を残されています。格闘家としてデビューされて率直にどうですか?
安彦:改めて考えてみると、ものすごい日々を送っていたと感じますね。試合前は減量していて、「苦しいな、でもストイックにやれているな」と実感はあったんです。けど、振り返ると「とんでもない世界に飛び込んだな」という感覚が強くなりました。ずっと緊張状態だったので、それが解放されたんでしょうね。終わった後は食欲が爆発してしまって、「俺ってこんなに食べるんだ!?」って自分でも驚くくらいの量を食べています。
岡田:安彦さんはビーガンなので、食へのこだわりが強いですよね。試合が終わった後は最初に何を食べましたか?
安彦:試合後はそこまで食欲が湧きませんでしたが、ビーガンのパンケーキやチョコ、アイスなど甘いものを食べましたね。普段から食事はオーガニックのものにしていて、食品表示もすごく気にして見ています。でも、試合が終わった途端にタガが外れてしまって、66kgだった体重が今では73kgになってしまいました。
「自分がどこにいるかもわからない」リングに立った緊張感
安彦:いま思えば試合当日は喉の渇きも強くて、すごく緊張していましたね。試合では指が露出しているオープンフィンガーグローブを使いますが、通常のグローブより、顔面や骨へのダメージが大きくなります。
試合前にメディカルチェックをしてくれたドクターが偶然知り合いだったんですが、「44歳でプロデビューすること自体おかしいけど、オープンフィンガーは考えられないよ。僕は心配だよ」と言われて、余計に怖くなっちゃいました(笑)
緊張のせいでデビュー戦は、方向がわからなくなりました。インターバルで青コーナーに戻らないといけないのに、全然違う方向に向かってしまって、自分がどこにいるかもわからない状態でしたね。
相手しか見えないくらい試合に入り込んでしまっていて、セコンドの声も聞こえていなかったです。でも2戦、3戦と試合数を重ねて、4戦目のプロデビューの試合では少し冷静になれました。周りを見渡して仲間のいる場所がわかるくらい落ち着いていて、相手をよく見て試合することができました。
「思考と肉体の間に精神がある」格闘技で気づいた新たな感覚
岡田:プロデビューまでに場数を踏んだ結果ですね。プロデビューというプレッシャーがあるなか、冷静になれたことはすごいです。
安彦:格闘技をするようになって、人間には思考とは別に『精神』というものが存在することを感じました。もともとは思考がすべてで、体を動かすことは脳と肉体の伝達作業だと思っていたんです。でも頭で考えるほど緊張して、判断が遅くなってしまいます。
いざというときに反応してくれるのは肉体なので、思考に委ねていては格闘技で通用しません。精神の状態が良いときに体が直感的に動いてくれるので、思考と肉体の間に精神があって、精神をコントロールする必要があることがわかりましたね。
岡田:言っていることはなんとなくわかるんですが、僕や住谷さんが実感することは難しそうですね(笑)
住谷:これは極限状態になった人にしかわからない世界なのかもしれませんね。
五感が研ぎ澄まされた「侍」の世界を体感
安彦:だから、これは“侍の世界”なのかなって気がします。侍のいた時代って常に刀を持っていて、いつ切られてもおかしくないわけじゃないですか。そんなときに頭で思考して、後ろから不意打ちされたら絶対かわせないですよね。
でも精神を穏やかに保つことができたら、五感が研ぎ澄まされて、パッと振り向けたり即座に対応できたりします。第六感というか、そういった直感的なものも含めて肉体が瞬時に反応できるんです。
だから頭で考えて体を動かすというより、体が動いてから頭で考えるという順番に変えないと、格闘技はできないとわかりました。格闘技を始めて、そういう新しい世界を知ることができたのは大きな体験でしたね。
岡田:格闘技で精神的なところに大きな変化もあったようですが、肉体的な変化はありますか?サッカーと格闘技だと使う筋肉が大きく変わりそうですよね。
安彦:サッカー選手は、下半身が太くて上半身が細くなる人が多いですが、格闘技をしてそれが逆になりました。足がシャープになっていって、上半身が大きくなりましたね。極端に言えば男性のトイレマークみたいな(笑)
体型も大きく変わって、心も体もどんどん格闘家になっていることを感じますね。今後もさまざまな変化を楽しみながら、職業『挑戦者』として挑戦することの楽しさを伝えていきたいです。
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