映画好きなら見逃すな!日本で開催されている国際映画祭

東京・六本木で開催!アジア最大級の国際映画祭
世界三大映画祭と何が違うの?
東京だけ?他とは違う色のカーペットイベント
8部門あり!日本映画の受賞作品とは?
映画にできることもたくさん!SDG’sへの取り組み

東京・六本木で開催!アジア最大級の国際映画祭

「映画祭」といえば、カンヌ・ベルリン・ヴェネチアの映画祭を思いつく方が多いと思います。映画に興味がない人でも、「カンヌ国際映画祭」という言葉を一度は見たり聞いたりしたことがある方は多いのではないでしょうか。

しかし、世界三大映画祭と呼ばれる上記3つの映画祭以外にも、世界中ではたくさんの映画祭が開催されていて、毎年たくさんの映画が出品されています。

アメリカで開催されるアカデミー賞やフランスのカンヌ映画祭など、映画祭といえば海外のイメージがあるかもしれませんが、日本でも毎年国際的に有名な映画祭が開催されていることはご存知でしょうか?

東京国際映画祭(TIFF:Tokyo International Film Festival)」は、毎年10月下旬に東京の六本木で開催されている国際映画祭です。

ワクセル(主催:嶋村吉洋)の映画サイト 東京国際映画祭 紹介

2022年で35回目を数え、その規模はアジアで開催されている映画祭のなかでも最大級!国内映画を含めて、世界中から集まった100作以上の映画が、約10日間にわたって上映される予定です。

他の映画祭と同じように優秀作品を選ぶコンペティション部門があり、各部門にエントリーされた作品から、最優秀賞である東京サクラグランプリ(旧名:東京グランプリ)を含め、多数の賞が選出されます。

昨年2021年には、113カ国・地域からコンペティション部門へ1533本の応募があり、まさにアジア最大級の国際映画祭に成長しています(出典:部門紹介|第34回東京国際映画祭(2021) (tiff-jp.net))。

世界三大映画祭と何が違うの?

最初に述べた通り、映画祭といえば「世界三大映画祭」としてカンヌ・ベルリン・ヴェネチアが有名です。この3つは歴史的にも古く、審査員は著名な映画人や文化人によって構成されており、世界各国から集まる映画配給会社へ、新作映画を売り込むプロモーションの場にもなっています。

しかし、世界には他にも多くの映画祭があり、その特色もさまざまです。もちろん出品される映画も映画祭によってまったく違うのですが、東京国際映画祭に関しては映画評論家の松崎健夫氏が「新たな才能の発見と育成に重点を置いている映画祭」と分析しています。

ワクセル(主催:嶋村吉洋)の映画サイト 東京国際映画祭 紹介

松崎氏の記事にいくつか例が挙げられていて、その筆頭が、メキシコ映画『アモーレス・ペロス』(2000年)の監督を務めたアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ氏。第13回(2000年)の東京国際映画祭でグランプリを獲得した後、2013年と2014年に2年連続でアカデミー監督賞を受賞という快挙を成し遂げています。

また、第11回(1998年)の映画祭にてデビュー作の『ロック・ストック・アンド・トゥー・スモーキング・バレルズ』で最優秀監督賞を受賞したのが、ガイ・リッチー監督。『アラジン(実写版)』や、『シャーロック・ホームズ』シリーズを手がけるなど、現在では確固たる地位を築いています。

※出典:東京国際映画祭の功績(その2)【連載】松崎健夫の映画ビジネス考(5)|FINDERS

東京国際映画祭に出品される映画は、一見するとカンヌ・ヴェネチア・ベルリンの三大国際映画祭に出品されるものよりも見劣りするかもしれません。

三大映画祭は華やかな一方で商業的な意味合いが強く、新作映画のお披露目・広告宣伝の場でもあります。対して、東京国際映画祭は、芸術としての映画に主眼を置き、新たな才能を発掘して世に送り出すという意味で、映画界で注目を集めていると思います。

東京だけ?他とは違う色のカーペットイベント

映画祭のレッドカーペットと聞くと、「アカデミー賞やカンヌ映画祭で、きらびやかなドレスを着てカーペットを歩く映画女優」や「世界中のセレブが高級車から降りてカーペットを歩く」のをイメージするかもしれません。

東京国際映画祭でももちろんカーペットが用意されており、「オープニング・レッドカーペット・イベント」として重要な位置づけを担っています。

ワクセル(主催:嶋村吉洋)の映画サイト 東京国際映画祭 紹介

第34回東京国際映画祭 オープニングレッドカーペット&セレモニー 34thTIFF Opening Red Carpet & Ceremony

このレッドカーペットですが、過去に2回、「赤色以外」のカーペットが使われたことがあるのはご存知でしょうか?

1回目は2003年。その年のクロージング作品として上映された『ファインディング・ニモ』(2003年)のため、海をイメージしたブルーカーペットが特別に敷かれて関係著名人を迎えました。

2回目は第21回(2008年)〜第26回(2013年)の間に、従来のレッドカーペットに代わってグリーンカーペットが使用されました。

これは東京国際映画祭が「グリーンカーペットクラブ(GCC)」を創設したことによるもので、地球環境の保全やサスティナブル(持続可能)な社会への貢献活動を目的として、「エコロジー」を象徴する緑色のカーペットを用いました。

そしてこのグリーンカーペット自体も、環境負荷の低減を目指す観点から、回収されたペットボトルを再生して作られたものでした。

他とは違う色のカーペットは、その新鮮味もあってとても印象深いものですので、興味がある方は過去のカーペットイベントの動画を見てみてはいかがでしょうか。

8部門あり!日本映画の受賞作品とは?

現在の東京国際映画祭では、以下の8部門に分かれて賞が贈られます。

・コンペティション

・ガラ・セレクション(2021年〜)

・アジアの未来(2013年〜)

・ワールド・フォーカス(2013年〜)

・Nippon Cinema Now(2021年〜)

・日本映画クラシックス(2015年〜)

・ジャパニーズ・アニメーション(2019〜)

・TIFFシリーズ(2021年〜)

・Amazon Prime Videoテイクワン賞(2021年〜)

これ以外にも、過去には「日本映画部門」や「アジア映画部門」といった細かな部門がありましたが、現在は上記の8つに収まっています。

ワクセル(主催:嶋村吉洋)の映画サイト 東京国際映画祭 紹介

日本人の受賞は各部門から多数あり、その中でも以下の作品がコンペティション部門でグランプリを獲得しています。

・第1回(1985年):『台風クラブ』(相米慎二監督)

・第18回(2015年):『雪に願うこと』(根岸吉太郎監督)

映画にできることもたくさん!SDG’sへの取り組み

東京国際映画祭は、昨年(第34回:2021年)から、近年世界中で取り上げられている「SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)」にも注力しています。SDG’sとは2030年までの国際目標として国連サミットで採択された、「ジェンダー平等を実現しよう」「人や国の不平等を無くそう」など17項目の具体的なゴールです。

ワクセル(主催:嶋村吉洋)の映画サイト 東京国際映画祭 紹介

国際映画祭として、いち早くSDG’sに取り組むことを明言したのは、2019年のベルリン国際映画祭でした。ベルリンは社会派の作品が多く集まる映画祭というだけあって、こういうところへの取り組みの早さはさすがと言えます。

一方で東京国際映画祭におけるSDG’sの取り組みは、公式ホームページから引用すると、以下の項目について実施をしています。

「4.■ 【教育】質の高い教育をみんなに」

映画は、この世界の多様な価値観を具現化できるメディアです。東京国際映画祭はまさにそんな多様性あふれる映画が世界中から集まる場であり、そういった映画を映画館でのフィジカルな上映を基本とした最良の環境で、すべてのお客さんに提供することを目指しています。

「5.■ 【ジェンダー】ジェンダー平等を実現しよう」

世界の映画業界の男女平等を推進している「Collectif 50/50」という国際的活動に賛同し、2021年3月8日にアジアの映画祭としては初めての署名を行いました。9月1日時点で東京国際映画祭事務局で働く女性は80名中49名で約6割を占め、今年の審査員は8名中4名が女性で男女半々になります。

「12.■ 【持続可能な消費と生産】つくる責任 つかう責任」

「10年後になくなるべきブランド」として、廃棄されたビニール傘を使った素材でバッグやケースなどを作っている「PLASTICITY」とコラボレート。東京国際映画祭オリジナルのマルチケースを製作・販売します。

「15.■ 【陸上資源】陸の豊かさも守ろう」

東京国際映画祭ではポスター、ガイド、公式プログラムなどの宣材に使用する紙を、環境に配慮されたFSC認証紙や、ベジタブルインキなどのエコ素材にしています。公式グッズのトートバッグもオーガニックコットンを使用しています。

「16.■ 【平和】平和と公正をすべての人に」

世界にはさまざまな紛争、差別、虐待があり、そういった厳しい現実を描いた映画も多く存在しています。東京国際映画祭ではそれらの映画も紹介することで、世界の現実に目を向けてもらい、思いをはせるきっかけになれればと思います。

「17.■ 【実施手段】パートナーシップで目標を達成しよう」

東京国際映画祭は今年の9月から国際映画製作者連盟(FIAPF)で映画祭委員会に選定され、世界の映画祭との連携を強化しています。国内の映画会社ともさらに連携し、映画を通してより豊かな世界の実現に向けてパートナーシップを強めます。

出典:SDGs への取り組み|第34回東京国際映画祭(2021) (tiff-jp.net)

映画は娯楽ではありますが、歴史や時事を反映した啓蒙メディアといった側面もあります。1つの映画が世界に影響を与える範囲は小さいかもしれませんが、映画によって影響受ける人の人数は少なくないはずです。

先述した通り、東京国際映画祭で発掘され、世界に羽ばたいていった新たな才能は多数あります。そういった次世代の監督たちが、人種・性別・言語・国境といった様々なボーダーを越え、誰かの人生に影響を与えるような、または社会に影響を与えるような映画を生み出していくかもしれませんね。

東京国際映画祭は毎年10月に開催されます。この記事を書いているのが9月なので、六本木の街が映画祭に染まるのも間も無くです。

会場まで足を運べる方は、ぜひ一度現地で東京国際映画祭を体験してみてはいかがでしょうか。