世界中が熱狂するベルリン国際映画祭の魅力にせまる
- ドイツの首都・ベルリンってどんな街?
- 世界最大級の来場者数を誇るベルリン国際映画祭
- 『千と千尋の神隠し』も受賞した金熊賞
- 2021年度の栄冠はどの作品に?日本映画も受賞
- ベルリンが舞台となった映画といえば…?
- 映画の草創期からドイツも活躍
- ライターから一言:大規模都市で映画を楽しむ
ライター情報:石井亮
親が映画通であることから幼少期より映画が好きで、大学生のときは1年間で150本鑑賞。部活動を通して自分で映画製作を行い、脚本・撮影・編集(約1時間・2作品)を担当する。カリフォルニア大学留学時に「映画の都」であるハリウッドを訪れ、スターの手形を目に焼き付けて以降、いつかハリウッドスターに会えないかと夢見ている。好きなジャンルはSF映画(広義)。
ドイツの首都・ベルリンってどんな街?
ドイツの首都であるベルリンは、ドイツに16ある連邦州のひとつで、国内最大の都市です。人口はおよそ370万人。ヨーロッパではロンドンに次いで2番目に人口が多いので、かなりの大規模都市なんですよね。
歴史的にも大きな意味を持つ街で、ブランデンブルク門や、ベルリンの壁などは観光スポットになっています。中世から残っているベルリン大聖堂やティーアガルテンなども、歴史的風景として見どころがあります。
そんなドイツは、ヨーロッパ映画業界における大規模な産業都市でもあります。ヨーロッパ最大の撮影スタジオ「バーベルスベルクスタジオ」があることでも知られています。
世界最大級の来場者数を誇るベルリン国際映画祭
ベルリン国際映画祭は、国際映画製作者連盟 (FIAPF) 公認の映画祭で、毎年2月に開催されています。ドイツではベルリナーレ (Berlinale) と呼ばれています。カンヌ国際映画祭、ヴェネツィア国際映画祭と並び世界三大映画祭のひとつでもあります。初回開催は1951年です。
人口7万人のカンヌ、人口26万人のヴェネツィアと比べ、ベルリンは360万人の首都で行われているため、世界最大級の来場者数を誇ります。責任者のディーター・コスリックは、ベルリン国際映画祭を世界三大映画祭に育てあげたディレクターとして有名です。
ベルリン国際映画祭は、他の映画祭と比べて「社会派の作品が集まる」「新人監督にも機会を与えている」傾向があるとのこと。ヤングシネマ討論会を開催し、ヴィム・ヴェンダースなどの優れた映画人を発掘した実績もあります。
『千と千尋の神隠し』も受賞した金熊賞
ベルリン国際映画祭では、日本映画も過去に多くの作品が上映され、受賞もされています。長編部門の最優秀賞は金熊賞 (Golden Bear / Goldener Berliner Bär)と呼ばれています。
金熊賞は、今井正監督の『武士道残酷物語』(1963年)、そして世界的に人気があるジブリ映画では『千と千尋の神隠し』(2002年)が受賞しています。
また、今井正監督の『純愛物語』(1957年)と黒澤明監督の『隠し砦の三悪人』(1958年)が銀熊賞 (監督賞)を受賞。熊井啓監督の『サンダカン八番娼館 望郷』(1974年)で田中絹代が銀熊賞 (女優賞)、篠田正浩監督の『鑓の権三』(1986年)が銀熊賞 (芸術貢献賞)、そして熊井啓監督の『海と毒薬』(1986年)が銀熊賞 (審査員グランプリ)を受賞しています。
2000年代に入ってからも、若松孝二監督『キャタピラー』(2010年)で、寺島しのぶが銀熊賞 (女優賞)、和田淳監督の『グレートラビット』(2012年)が短編部門(銀熊賞)、山田洋次監督『小さいおうち』(2014年)で、黒木華が銀熊賞 (女優賞)、濱口竜介監督『偶然と想像』(2021年)が銀熊賞 (審査員グランプリ)を受賞しています。
こうして振り返ってみると、歴史的に多くの日本映画が受賞してきたことが分かりますね。
2021年度の栄冠はどの作品に?日本映画も受賞
世界中から注目されるベルリン国際映画祭、2021年度コンペティション部門はどのような作品が受賞したのでしょうか。
金熊賞 | 『アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ』 ラドゥ・ジューデ |
銀熊賞(審査員大賞) | 『偶然と想像』 濱口竜介 |
審査員特別賞・銀熊賞 | 『Mr Bachmann and His Class』 マリア・スペト |
銀熊賞(監督賞) | 『デーネシュ・ナギー』 Natural Light |
銀熊賞(主演賞) | マレン・エッゲルト 『アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド』 |
銀熊賞(助演賞) | リラ・キズリンガー 『Forest – I See You Everywhere』 |
銀熊賞(芸術貢献賞) | Yibran Asuad 『コップ・ムービー』 |
銀熊賞(脚本賞) | ホン・サンス 『Introduction』 |
ベルリンが舞台となった映画といえば…?
ベルリンが舞台となった映画はたくさんありますので、いくつかピックアップしてみます。
20年以上前の作品ですが『ラン・ローラ・ラン』(1998年)。フランカ・ポテンテが演じる女性ローラが、恋人の命を救うために奔走する痛快ラブ・ストーリー。ローラが街中を駆け抜けるシーンでベルリンが登場しています。ちなみにトム・ティクバ監督は、後に『クラウド アトラス』(2012年)を手掛けたことでも有名になりました。
サスペンス・アクション映画としては、『ボーン・アイデンティティー』(2002年)でヒットしたジェイソン・ボーンシリーズ(マット・デイモン主演)第2弾である『ボーン・スプレマシー』(2004年)。CIAトップエージェントのジェイソン・ボーンが、ベルリンを舞台に活躍しています。
他にも、『グッバイ、レーニン!』(2003年)、『ワルキューレ』(2008年)、『コーヒーをめぐる冒険』(2012年)など、たくさんありますので、ぜひストーリー楽しみながらベルリンも堪能してみてください。
ちなみに2022年4月に公開された『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』でもベルリンが登場するらしいですよ。
映画の草創期からドイツも活躍
カンヌ映画祭の記事で「フランスが世界最初の映画を製作」と紹介しましたが、実は19世紀末には同時に多くの方が投影技術を開発していました。発明王トーマス・エジソンの眼鏡式映写機キネトスコープも然り、ドイツのスクラダノウスキー兄弟の映写機ビオスコープもありました。
スクラダノウスキー兄弟の場合は、フランスのリュミエール兄弟が発明した映画装置シネマトグラフよりも2カ月ほど前に発明して、ベルリンのヴァリエテ劇場「ヴィンターガルテン」で実演しています。
しかし、シネマトグラフの方が機能的にビオスコープより優れていたため、その後に映画の原型となったのはシネマトグラフである、というのが通説になっているようです。
当時はもちろん無声の映像ですが、無声であることから国を超えて親しまれるというメリットもありました。映画というひとつの言語を通して、ヨーロッパにもたらしたインパクトは大きなものだったでしょう。
ライターから一言:大規模都市で映画を楽しむ
今回はベルリン国際映画祭についてご紹介しました。
大首都で行われていることから来場者が多数であることや、『千と千尋の神隠し』が金熊賞を受賞していること、ドイツも映画誕生期から躍進してきたことなど、振り返ると、多くの魅力がありますよね。
三大国際映画祭の中でも、カンヌとヴェネツィアとはひと味違う都市。
ぜひこちらも一度訪れてみたいですね。