世界最古の映画祭ヴェネツィア国際映画祭とは

ライター情報:石井亮

親が映画通であることから幼少期より映画が好きで、大学生のときは1年間で150本鑑賞。部活動を通して自分で映画製作を行い、脚本・撮影・編集(約1時間・2作品)を担当する。カリフォルニア大学留学時に「映画の都」であるハリウッドを訪れ、スターの手形を目に焼き付けて以降、いつかハリウッドスターに会えないかと夢見ている。好きなジャンルはSF映画(広義)。

水の都・ヴェネツィアとはどんな都市?

ヴェネツィアは、イタリア共和国の北東部に位置する都市で、ヴェネト州の州都です。「水の都」としても知られており、主に水上バス(ヴァポレット)に乗って移動します。イタリアの主要な観光スポットのひとつですよね。

東京ディズニー・シーの「ヴェネツィアン・ゴンドラ」では、ヴェネツィアのように運河をひとめぐりできるので、親しみが深い方も多いかもしれません。映画『007シリーズ』でもたびたび登場しています。

ヴェネツィアは人口が約26万人の都市で、100以上の島々がおよそ400本の橋と150をこえる大小の運河で結ばれています。街全体が「ヴェネツィアとその潟 」として世界遺産に登録されているんですよね。

ワクセル(主催:嶋村吉洋)の映画サイト ヴェネツィア国際映画祭紹介

実は世界最古!?ヴェネツィア国際映画祭とは?

ヴェネツィア国際映画祭は、ヴェネツィアのリド島で行われます。毎年8月末〜9月初旬に開催され、2021年で開催回数第78回になります。

カンヌ国際映画祭、ベルリン国際映画祭と並ぶ世界三大映画祭のひとつであり、国際映画製作者連盟 (FIAPF) 公認の映画祭でもあります。

カンヌ国際映画祭の解説記事はこちら

ベルリン国際映画祭の解説記事はこちら

初回開催は1932年。現代美術展ベネチア・ビエンナーレの一部門「ベネチア映画芸術国際展」として産声をあげました。この年代から開催しているという意味では、世界最古の歴史を持つ映画祭です。

※ただし中断期間はあります

また、当初から芸術寄りの映画祭として認知されてきましたが、2002年にマーケット部門が設けられ、商業映画の比重も高まっているようです。

ワクセル(主催:嶋村吉洋)の映画サイト ヴェネツィア国際映画祭紹介

日本とはどんな関係?歴代の受賞作品を紹介

歴史あるヴェネツィア国際映画祭では、日本の映画作品も多く受賞・ノミネートされています。受賞作でいえば、第12回に黒澤明監督の『羅生門』(1950年)が、初の日本人監督として金獅子賞(最優秀作品賞)を受賞しています。

また、溝口健二監督の『西鶴一代女』(1952年)、『雨月物語』(1953年)、『山椒大夫』(1954年)と、3年連続で銀獅子賞を受賞。

映画『スターウォーズ』にも影響を与えたと言われている『七人の侍』(1954)年が銀獅子賞、『無法松の一生』(1958年)が金獅子賞、『ジャングル大帝』(1966年)が19回ヴェネチア国際映画祭でサンマルコ銀獅子賞を受賞します。

こうして見ると、多くの日本作品が受賞してきたことが分かりますよね。

最近でも、第54回で北野武監督が『HANA-BI』(1998年)で金獅子賞、そして、第62回では宮崎駿監督が栄誉金獅子賞を受賞しました。第77回には、黒澤明監督の『スパイの妻〈劇場版〉』(2020年)が銀獅子賞(最優秀監督賞)を受賞したことでも話題になりました。

※宮崎駿監督の『崖の上のポニョ』(2008年)は、コンぺティション部門にノミネートされました

2021年に金獅子賞を受賞した作品は?

ヴェネツィア国際映画祭のコンペティション部門、2021年にはどんな作品が受賞したのでしょうか。以下が第78回ヴェネツィア国際映画祭の受賞作品です。

パルム・ドールをはじめ、2021年のコンペティション部門受賞作品は以下の通りです。

最優秀作品賞(金獅子賞) 『ハプニング』 オードレイ・ディヴァン
審査員大賞(銀獅子賞)『ハンズ・オブ・ゴッド』 パオロ・ソレンティーノ
最優秀監督賞(銀獅子賞)ジェイン・カンピオン 『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
最優秀女優賞(ヴォルピ杯)ペネロペ・クルス 『パラレル・マザーズ』
最優秀男優賞(ヴォルピ杯) ジョン・アルシラ 『オン・ザ・ジョブ:ミッシング8』
最優秀脚本賞マギー・ギレンホール 『ロスト・ドーター』
審査員特別賞 『イルブコ』 ミケランジェロ・ フラマルティーノ
マルチェロ・マストロヤンニ賞(新人俳優賞)フィリッポ・スコッティ 『ハンズ・オブ・ゴッド』

ちなみに、最高賞である「金獅子賞」とは、獅子が聖マルコ(ヴェネツィアの守護聖人)の象徴であったことが由来のようです。ヴェネツィア・ビエンナーレ(現代美術の国際美術展覧会)でも、同名の賞があります。

ワクセル(主催:嶋村吉洋)の映画サイト ヴェネツィア国際映画祭紹介

ヴェネツィアが舞台の映画、結構ある!?

せっかくヴェネツィア国際映画祭の紹介記事ですので、ヴェネツィアが登場する映画作品も見てみましょう。

先述の通り、『007シリーズ』では、3回ヴェネツィアが登場しています。

『007 ロシアより愛をこめて』(1963年)、『007 ムーンレイカー』(1979年)、『007 カジノ・ロワイヤル』 (2006年)です。

他にも、シェイクスピアが執筆した戯曲の映画化作品『ヴェニスの商人』(2004年)、スティーブン・スピルバーグ監督・ハリソン・フォード主演のアドベンチャー映画『インディ・ジョーンズ最後の聖戦』(1989年)、アンジェリーナ・ジョリーとジョニー・デップが共演したミステリードラマ『ツーリスト』(2011年)、トム・ハンクス主演のミステリースリラー『インフェルノ』(2016年)など。有名作品が複数ありますよね。

目を奪われるきれいな街並みが特徴的なので、映画に登場すると印象に残りやすいかもしれません。特に『007シリーズ』や『インディ・ジョーンズ』では、街のなかを激しく動き回ることも多いので、観光気分に浸れること間違いなしです。

イタリアと言えば…この映画!

すっかりヴェネツィアの気分になったということで、最後に「イタリアといえばこの映画!」というコーナーをご紹介。

まずは、日本でも有名なローマの映画といえば、オードリー・ヘプバーン主演の『ローマの休日』(1953年)でしょうか。今なお、ロマンティックコメディの代表格と称され、日本では「製作50周年記念デジタル・ニューマスター版」として、リバイバル公開もされました。

また、「イタリア系マフィア」にフォーカスした作品としては『ゴッドファーザーシリーズ』が思い浮かぶでしょうか。評論家が選定する映画ベスト100などでは、ほぼ必ずランクインする映画です。実際、イタリア半島の西南に位置するシチリア島で撮影が行われています。

日本映画としては、織田裕二が主演するサスペンス大作『アマルフィ 女神の報酬』(2009年)。こちらは、全編イタリアでの撮影です。天海祐希、戸田恵梨香、佐藤浩市も共演しており、当時話題になりましたよね。続編として、『外交官 黒田康作』が日本ではテレビドラマシリーズとして公開されました。

他にも、イタリアといえば『ロミオとジュリエット』『ニュー・シネマ・パラダイス』『ミニミニ大作戦』『グラディエーター』など、調べてみるとたくさん出てきますね。観たことがある映画も多いのではないでしょうか。

ライターから一言:さて、ヴェネツィアに行きたい。

以上、ヴェネツィア国際映画祭やヴェネツィアについて解説しました。

観光名所で有名なイタリアの都市で行われるこのイベント、実は非常に歴史ある映画祭なんですよね。受賞作品のなかには、聞いたことがある日本の映画も多かったのではないでしょうか。イタリア旅行に行く際は、イタリアを舞台とした映画を見てから足を運んでみるのも良いかもしれません。

というより、筆者自身、早くイタリアに行きたくなりました。

行きたい国やロケ地がどんどん増えていく今日この頃です。