伝統文化×教育で一人ひとりが課題に向き合う力をつける教育者の挑戦

梅澤さんは、日本の伝統文化にかかわる仕事をしている方へのビジネススキルや指導者スキルの教育サービスを行っています。日本の伝統文化の業界が抱える問題に向き合い、より柔軟に伝統文化を継承する活動をされています。そんな日本の未来を担う梅澤さんの活動への想いや今後の展望についてお話を伺いました。
伝統文化の課題を自分で解決できる人材の育成

私は、一言でいうと「伝統文化人材」の育成を行っています。日本舞踊や能、狂言、三味線、和太鼓、茶道、華道といった日本の伝統文化にかかわる方の、ビジネススキルや指導者スキルの向上のための教育サービスを提供しています。
子どもの頃から、古風なものが好きで、落語や剣道をやっていたことから、日本の文化に親しみがありました。10年前に習い始めた日本舞踊の先生が、お弟子さんをもっと増やしたいと思っている方だったので、8年前、稽古場の集客サポートを始めました。お年寄りから子どもまで、それぞれの人生や暮らしがあるなかで、週に1度集まってお稽古をする、そんなお稽古場の雰囲気がすごく好きでした。町の稽古場を盛り上げることにやりがいもありましたし、売上アップのお手伝いができることで仕事にもなるなと思ったところから、会社員のかたわら副業で集客サポートの仕事をするようになりました。
日本舞踊教室のお手伝いをするようになってから、日本舞踊以外の和のお稽古事の先生やプロの方とも交流する機会が増えて、日本の伝統文化が抱える課題の共通点に気が付いたことが、教育に関わるきっかけとなりました。
課題は高齢化、それに反して若い担い手の急激な減少、稼ぎにくいという業界の構造、社会の価値観の変化とそれに業界がついていけていない、などさまざまです。しかし、伝統文化業界のクリティカルな問題って何なんだろうと考えたときに行きついたのが、教育でした。種々の課題に取り組むことは当然必要ですが、伝統文化従事者自身が課題を発見し、解決するための力を養う教育が、遠回りに見えて実は課題解決の一番近道なのではないかと考えています。
伝統文化の業界は、職人さんの世界と似ていて、師匠と弟子の関係のなかでいろんなことを学んでいく構造です。技術は教わっても、商売のやり方や自分が身に着けた芸を人に教えるための指導者スキルなどを学ぶ環境や仕組みはありません。それが欠けていることが業界のボトルネックになっているのではないかと思いました。短期的には伝統文化を仕事にしている人の経済的自立のためのビジネススキルを、長期的には業界全体の課題を乗り越えるための力をつける力を育てていかなければならないと思っています。
新しいものを受け入れ、発展していく伝統文化を当たり前に

日本舞踊は昭和60年あたりがピークで、集客を頑張らなくても生徒さんが入ってくる時代がありました。しかし、それ以降いろいろな習い事が増えたり、子ども自体が減ってきたりという理由で生徒数が減少していきました。伝統文化の世界は、変化をあまり好まない、特に商売に関しては保守的な傾向があるので、若い人や稼ぎたい人は見切りをつけて去って行ってしまう状況が続いたことが業界縮小の一因としてあると考えています。だからこそ、新しい時代に合ったモデルケースをどんどん作り、新しい挑戦を推奨する文化を醸成していきたいです。成功例ができれば、こういうこともやっていいんだという空気が生まれ、より多くの人が挑戦できる環境ができると思います。
自分の中で大事にしていることは、コツコツ続けること、背中をみせることだと思っています。
直近で働いていた会社はベンチャー企業で、社長との距離が近く、なんでも意見を言い合える雰囲気だったのですが、伝統的な世界にくると、全然話も聞いてもらえないし、よそ者扱いは当たり前でした。それでも先生をお手伝いして、お弟子さんが10人20人増えていって、発表会ができましたといった成果が出て初めて、ちょっと頑張っている若者がいるな、と思っていただけるようになりました。
だからこそ、結果が出るまでやり続け、まずは自分が背中を見せるのがすごく大事だなと感じます。
私は、もっと伝統文化を「活用」という視点で見てほしい、ということをよく言います。何百年前のお茶碗に価値があるように、100年200年続く伝統文化、伝統芸能はすごいポテンシャルがあると思っています。ですが、誰しもがその価値を認めているわけではないことも承知しています。だからこそ、もっと別の視点から活用したり新しい可能性を見出したりすることもできると考えています。
伝統文化の担い手の登竜門となる教育機関設立の夢を追って

今後の展望としては伝統文化を仕事にしようという方、特に若い方が、ビジネスや指導者、プロであり続けるために必要なことを学べる学校を作りたいというのが今の当面の目標です。伝統文化の世界でプロ目指すなら一回はここで学んでおいた方がいいよね、と言われるような教育機関を作り、活躍する人を育てていきたいです。