
安い服しか売れない?メタバースでファッションの常識を打ち破る

レダ ジャパン株式会社代表取締役である上野伸悟(うえのしんご)さんは、25年間ファッション業界の仕事をされ「ウールマン」として親しまれています。そんな上野さんが感じるファッション業界の課題や、業界に対する熱い思いと新たなチャレンジについてお話を伺いました。
生産者が有利になる経済圏としての百貨店事業

ウールマンとして25年ヨーロッパ生地にかかわる仕事の集大成として、「EC百貨店」というものを事業として始めました。僕らのお客様はファッションブランドや百貨店がメインで、ヨーロッパの高級素材を日本のファッション業界に販売をしています。僕は今自社以外にヨーロッパ素材の代理店協会の会長も担っているのですが、このファッション業界に何か自分ができることがないかなと考えました。今の世の中は安い生地で安い洋服を作るアパレルが多く、良い素材で良い洋服を作りたいアパレルが少ない、という現状があります。その現状に課題を感じたことをきっかけに、今回の事業を立ち上げることとなりました。
ファッションアイテムを販売するプラットフォームはあるにはありますが、高価なファッションアイテムの良さを伝えることができなかったり、出展者が値引き額やポイント購入分を負担したりしなければならないという、プラットフォーム側から搾取されているのが現状の社会課題だと思います。昨今インフレが騒がれて値上げが多い世の中ですが、今まで出展者、作り手がどれだけ搾取されていたかを考えると、一生懸命作ったものを定価で買うのが当たり前になってほしいと思っています。1,000円のTシャツが1,000円で売れるのは、作っている人の苦労の上に成り立っているからです。
だからこそ、作り手に有利な経済圏を作ることが、可能なのが百貨店だと思っています。百貨店とは本来価値を編集して社会に届ける場所だと考えています。その本質を追求していれば、値引きという本来の価格、価値を下げる必要はないと思っています。安くないと売れないということはなく、魅力があれば売れると思うんです。
メタバースでファッションの価値を多くの人へ届ける

本当は服が自分で話してくれたら良いなと思うこともあります。生産者の気持ちや何の素材でできているか、誰が作ったのか、どこで縫製されたのかということがわかれば、購入する人は増えていくのにと考えたときに、メタバース上に百貨店の屋上をつくるということを思いつきました。生産者にも積極的に屋上に来ていただくことで、商品がしゃべるというイメージをメタバース上でかなえるということを実現していきたいと考えています。
搾取されてきた生産者だけではなく、プラットフォーム側も自分がお金をかけて真剣に血を流して挑むことで、取り扱っている商品に向き合えると考えているので、出展者様に出展料無料で商品を置いていただくという、破産覚悟の挑戦をすることにしました。
メタバース自体の課題は一過性にはやるものとなりかねないところだと感じ、百貨店とひもづけることでその課題をも解決するきっかけになってほしいなと思っています。また、メタバースの分譲などもやっているので、関わるひとりひとりの人脈をフルに活用させていただき、メタバースの発展拡大も狙っています。
業界への貢献を使命とする仕事人としての展望

今僕がファッション業界でできることは、仕組みづくりやプロモーションなのかな、とひらめいたときから、思い描いたものを必ず実現する覚悟で仕事をしています。メタバースの事業も、今年の正月に思いついて、実現のために一生懸命考えて行動してきました。
最近は、応援する文化というものが自分の中に染みついてきて、あまりにも安売り社会であるファッション業界に貢献できることを考え、それに共感してくださった方と楽しく仕事ができることが幸せだなと感じています。何事も楽しくないとできないので。人を応援すると自分も応援されると信じて、努力し続けていきます。
