手塚治虫とのコラボレートを実現したイラストレーターが語る『雑貨屋on my way』の誕生秘話
2005年から派遣社員として働きながら、イラストで独立を目指し始めたとやまきこさん。川越市制100周年を機に、手塚プロダクションとのコラボグッズを販売するという大きなチャンスを掴みました。地元・川越にオープンした雑貨屋『on my way』では、オリジナルグッズの販売や、ワークショップも開催。独自の世界観を持ちながら、自らの手で道を切り開いているとやさんに、これまでの経緯を伺いました。
『手塚治虫×とやまきこ』のコラボグッズを販売
私は現在イラストレーターの活動をしながら、地元の川越で週末だけ雑貨屋さんなどの店舗を借りてオリジナルグッズを販売しています。そこでは自分のイラストを使ったグッズも展開しています。
イラストレーターになる前は、派遣社員として事務仕事をしていました。仕事自体は嫌いではなかったのですが、極端な話、誰でもできる仕事という一面もあると感じていました。
「自分の手で何か形に残るものを作りたい」と考えていた時、たまたまカルチャースクールに通い、イラストレーターの先生の講座を受けました。絵を描くことは元々好きだったので、「もう少し頑張ればイラストレーターとしてやっていけるかもしれない」と思い、挑戦してみることにしたんです。
私は専門的な学校に通ったわけではないので、少し無謀だったかもしれません。長く描いてはいるものの、今のところ自分が目指していたイラストレーター像には、まだ到達できていないというのが現状です。それでも自分からチャンスを掴み取り行動してきた自負はあります。
お店を借りたのは2020年のことで、軌道に乗り始めてきた2022年は川越市が100周年を迎える年でした。そのため、さまざまなコラボが企画されており、私もその流れで手塚プロダクションに自ら働きかけました。
私自身、やりたいことがあれば積極的に問い合わせてみることが多いのですが、通常であれば断られることの方が多いです。最初は「どのくらいの条件でコラボできるのか」「費用がどのくらいかかるのか」などを確認して、目標に向けて努力しようと思っていたのですが、意外にも「やってみましょう」と快諾していただき、本当にラッキーでした。
ただ、このような大きなプロジェクトを私1人でこなすのは本当に大変で、取り組んでみて、さまざまな問題が浮かび上がってきました。私は基本的に人に頼らない性格で、何かを決める時も自分で判断し進めることが多いですが、この時はデザイナーに手伝ってもらったので、精神的には少し楽になりました。
最終的に出来上がったものには満足していますが、そこに至るまでの過程は大変なものでした。通常であれば他の人に任せる部分も多いはずですが、私はイラスト以外の仕事もすべて自分で担当していたので、余計に忙しくなり、今もその状況は変わりません。
オリジナルグッズを販売する雑貨屋『on my way』
雑貨屋『on my way』には、私が普段描いているイラストのTシャツや、陶器の絵付けをして焼成したポーセラーツとしてお皿、ボウル、茶碗、カップなどを置いています。他にも、手提げ袋、原画などを展示・販売していて、まさに私の世界観が詰まった場所です。
店舗のオープンは4年前なので、ちょうどコロナが流行っていた時期でした。外に出てイラストを描いたり、他の仕事を外部から受けていた日々がなくなったため、外出できない状態から精神的に落ち込んできました。それでも、外出せずにも何かできることはないかと探していたら、商店街の店舗が空くという情報が入ってきました。
私は長年働いてきた経験があり、それが「いざという時の準備」になっていたんだと思います。また、自分のお金で、自分がやりたいことに投資するという覚悟があったので、その点でも迷いはありませんでした。自分の目標のために働いてきたというのもありますし、今がそのタイミングだと感じたので、思い切ってお店を出す決断をしたんです。
店舗自体はとても小さく、わずか2坪しかありません。小さなお店なので、全体を1人で管理できるサイズ感です。自分の作りたいものを置きつつ、少し追加で展示するスペースも確保しています。そのため、お店の運営は比較的スムーズに進められました。
もし最初に「大きくしていきたい」という野望があったら、もっと悩んでいたかもしれません。でも、自分のお店を持って作品を置くことがひとつの目標だったので、その点は達成できました。もちろん、悩みがまったくなかったわけではありませんが、自分のやりたいことを発信していけば良いと考えていたので、あまり大きな苦労と感じることはなかったです。
コラボレートで自分の作品を世に広めていきたい
私は自身の作品を通して、憧れのデザイナーや好きなブランドとコラボレートして、何かしらの形に残したいという大きな目標があります。ただ、現時点では自分の実力がまだ足りないと感じているので、もっと活動を続けて、さまざまな場面で結果を出せるようになりたいと思っています。
『on my way』では販売だけでなく、私自身が講師となり、店内でポーセラーツのワークショップも随時開催しています。カップなどに転写紙を貼り付けてオリジナル作品を制作することができます。
今は誰でも簡単に、自分のイラストやデザインした商品を販売できる時代です。ただ作れば良いというわけではなく、やはり売れることが重要です。そのために、自分自身の知名度を上げることが課題のひとつです。今後は、異業種の方々とも積極的にコラボレートして、何か新しいものを作りたいと考えています。