教具がなくてもできるモンテッソーリ教育があることを知ってもらうために~

高橋まゆこ

高橋まゆこ

2025.05.05
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高橋まゆこさんは、モンテッソーリ教育の子育ての経験を生かし、幼児教室を開校しました。全国にモンテッソーリクッキング®講師養成講座をはじめ、教具がなくてもモンテッソーリ教育をあらゆる角度から広めるために全国で積極的に活動されています。モンテッソーリ教育に出会ったきっかけや今後の展望についてお伺いいたしました。

モンテッソーリ教育に出会ったきっかけ

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「モンテッソーリ教育と言えば教具の美しさ」と言われるほど、マリア・モンテッソーリが残してくれた教具たちは内容も見た目もとても素晴らしく、良くできたものです。私自身、今でも教具の勉強は楽しいです。

教具にひかれお仕事をする(モンテッソーリ教育では子どもの遊びを「お仕事」と言います)子どもたちは集中力や思考力を身につけるとも言われており、昨今、モンテッソーリ教育はブームと言っても良いほど有名になりました。

手作りのモンテッソーリ教具も増え、教具に対する興味はどんどん輪を広げています。

そのおかげもあり、モンテッソーリ教育は子育て世代の方々にはよく聞くフレーズにもなってきました。しかし、私が長女を出産した頃(今から約20年ほど前)は、スマホもないので情報を収集するのが難しく、ましてや和歌山の田舎で、周りに教えてくれる人もいない環境でした。そのため、ひたすら図書館で本を探すことしかできませんでした。

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私がなぜ、モンテッソーリ教育に出会うことになったのかというと、長女が2歳のときにチック症になったからです。

チック症という言葉すら知らなかった20代の私。ある日、浅田真央さんのフィギュアスケートを見ていた長女が、不自然な瞬きをしていることに気づいたのが最初だったのを今でも鮮明に覚えています。何も知らなかった私は眼科に連れて行きました。そこで初めてチック症だと診断され、今度は小児精神科へ。

この世のすべてが黒く見えたあのとき、私は病院で泣き崩れました。普通の子育てができていると思っていた未熟な私は受け入れられなかったのです。だから今、そんなママの気持ちが痛いほどわかります。医師に言われる「してはいけないこと」をことごとくしてきていた自分を自分で責め続けました。医師には「お母さん、命を取られたわけではないから。生きているからね、この子。瞬きくらいたいしたことじゃないよ。」と、声をかけられたことも鮮明に覚えています。

ですが、当時の私はそんな人の優しさにすら気づけないくらい自分の殻に閉じこもりました。私がこの子をこうしてしまったんだ。その考え方が、長女自身を否定していることになるなんて無知な当時の私にはわからなかったんです。家族にもお手本となる子育てが身近にいなかった私は、本に頼ることしかできませんでした。

その本こそ、マリア・モンテッソーリの本でした。「子どもには自己教育力がある」。その言葉に衝撃を受けました。子どもとはすべてを教えてあげなければならない存在だと思っていた私は「子どもは自分で自分のことを良く理解している」という理論に一瞬で魅了され、長女をモンテッソーリの幼稚園に入園させました。そこから本格的に、親子でモンテッソーリ教育の人生がスタートしたのです。

自分の好きを見つけるモンテッソーリ教育を台所にも

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モンテッソーリの幼稚園に通いだしてからの長女は毎日、キラキラ輝いて帰ってきました。11カ月後、気づけば不自然な瞬きはしなくなり、偶然の産物だったのかもしれませんが私はこの教育法に救われた1人となりました。

とは言っても、モンテッソーリ教具は高価なものが多く、おうちで教具をそろえることは一般家庭の我が家にとっては現実的ではありませんでした。おうちでどうやってモンテッソーリ教育をすれば良いのか?お金持ちの子どもにしかできない教育法なのか?


いや、そんなわけはない。マリア・モンテッソーリは平和教育を提唱しているのに教育格差を生むための教育法のはずがない。そう考えた私はモンテッソーリ教育の本質を知るために子育ての追っかけになりました。今でいう「推し活」の対象が私にとって、子育て、教育となっていったのです。


私は教育者ではありません。教育者という職業はモンテッソーリ教育の理論だと無くなるべきものだと思っています。私はただの「追っかけ」です。どこにでもいる1人の母親、1人の主婦が子育ての追っかけになったらそれが誰かのためになるお仕事になっていた、というだけの話です。まさに、大人になってから理想のモンテッソーリの環境を手に入れ、好きを仕事にできた実績です。

大人も子どももモンテッソーリの環境があれば、『好き』をお仕事にできる。好きは周りに連鎖していくものです。だから、私の教室に通ってくれる子どもたち、講師の先生たちは必ず、自分の「好き!」を見つけます。

このモンテッソーリの道をたどるのに、私の場合、教具はなくても大丈夫でした。教具に変わるものが日常にはたくさん転がっています。

その一つが台所でできるモンテッソーリ教育。それが10年後に『モンテッソーリクッキング®』へとつながっています。このコラムでは、0歳からでもできるお料理教室という名の教育現場、モンテッソーリクッキングのレシピを順にご紹介していければと思います。


次回からのコラムでは、レシピのご紹介もしていきますのでお楽しみに。