
自然豊かな守り神『鎮守の杜』を再生させるプロジェクトの第2期がスタート
岩手県最古といわれる志賀理和氣(しかりわけ)神社は移転に伴って消滅してしまった旧境内の『鎮守の杜』を復活させるべく、昨年よりクラウドファンディングに挑戦しており、今回、第2期のクラウドファンディングに挑戦中です。本プロジェクトにかける想いを宮司の田村寛仁さん、『鎮守の杜』の守り人である髙橋知明さん、林学博士の西野文貴さんに伺いました。
地域住民の心の支えである『鎮守の杜』を復活させたい
志賀理和氣神社は岩手県を流れる一級河川『北上川』の河岸にあります。大雨や巨大台風が頻繁に起こるようになり、北上川でも甚大な水害の恐れがあったため、志賀理和氣神社の場所に堤防を建設することになりました。
平成30年に国が進める治水事業に協力し、神社は内陸へと全面移転することが決定。令和3年12月に現在の場所に遷座されましたが、旧境内の鎮守の杜は移転できずそのまま消滅してしまったのです。
子どもたちの遊び場であり、地域住民の憩いの場であり、神社を大風や大雨などから守ってくれた『鎮守の杜』の喪失感は想像を超えるものでした。『鎮守の杜』がない新境内は寂しい様相で佇んでいます。
『鎮守』とは、その地域を守ってくださる神々のこと。そして、その神々を守る森が『鎮守の杜』。ここは神々が降りたち、鎮まる場所だと、私たちのご先祖様は考えてきました。
だからこそ、日本人はこの場所に特別な神聖さを感じ、神様に感謝の気持ちを捧げ、この土地での生活の安寧を祈りました。『鎮守の杜』は常に多くの生命が循環していて、みずみずしさ、青々しさを保つことで、神々が降り立つ清浄な空間を生んでいます。
そのため人々は森が荒れないように間伐したり、弱った木を切ったりと協力して手入れをし、森を育ててきました。『鎮守の杜』から出た材木や薪は、お祭りに使われたり、社殿などを建て替える際に使う材木として使われたりと、森の資源を無駄にせず有効活用しています。
何とか『鎮守の杜』を再生できないかと神社関係者が何度も話し合い、再建に向けて一致団結して動き出しました。しかし、再生には巨額の費用がかかるため、神社だけではどうしても十分な修復を行うことができません。そこでこれから千年続く『鎮守の杜』の再生に向けて広くご協力を仰ぐためクラウドファンディングに挑戦することにしました。
生物多様性の観点から昨年に続いて今年も400本の植樹を実施
本プロジェクトでは、令和6年から3カ年計画で合計1200本の広葉樹を中心に植樹し、森の基礎をつくります。
初年度(令和6年)の第1期では、西野博士の『潜在自然植生』に基づく森の設計のもと、計400本を植樹しました。植えた樹種はコナラやケヤキなど20種類以上で、その大半は落葉広葉樹のため、冬場にいったん葉を落としてしまい見た目は寂しくなりがちですが、春に新芽が芽吹き盛んに葉を広げています。現在の段階でおよそ8〜9割が順調に根付いており、一部の樹種では既に樹高3メートルにも達しています(芽が大きく膨らんでいます)。
西野博士による森づくりは、その土地に本来あるべき自然な森の復元を目指しています。そのため、スギやヒノキのような木材生産を目的とした人工林ではなく、その地域に適した樹種を選んで植えているんです。植物が地表面を覆っている状態を『植生』と呼び、森づくりを行う際に専門用語で『潜在自然植生』と言います。
「100年後、200年後、さらには1000年先まで続く森を育てる」という長期的なビジョンのもとで、今年(令和7年)の第2期も400本を植樹。苗木たちが共生しあい、地上だけでなく地下で根を張りめぐらせることで、より豊かな生態系をつくっていきたいと考えています。
今回の第2期の植樹では、生物多様性の観点をしっかり取り入れています。落葉広葉樹は季節ごとに花や実をつけるため、小鳥などの小動物、昆虫が集まりやすくなり、そこをきっかけに食物連鎖が復活し始めます。地域の子どもたちが「昔、森で遊んだおじいちゃん・おばあちゃんのように豊かな自然と共存したい」と願う気持ちに応えたい。この2期目の植樹は、その思いをさらに確かなものにする大きな一歩なのです。
旧境内の鎮守の杜にはフクロウがいました。この土地の本来の植生に戻すことで、生態系が復活して、元々いた動物や微生物が戻ってくる可能性があります。なぜなら、植物は生態系において生産者としての役割を果たし、その存在が食物連鎖の基盤を形成するからです。フクロウが再びこの地に営巣したら本当に素晴らしいことだと思います。
1000年続く森をつくる壮大なプロジェクトに参加できる
移転前の境内には約4000本の木々が生い茂る豊かな鎮守の杜があり、まさしくこの地域のふるさとでした。昨年の植樹祭では多くの方々のご支援により、400本の木々が植えられ、少しずつ鎮守の杜再生へと歩みを進めています。
この植樹において我々が希望を抱いているのは、森の再生だけではなく、木を植えることで、「人々の心にもふるさとの苗木を植えること」です。生まれ故郷を離れ、新しい地域に移り住むことが当たり前となった現代において、心安らかなる憩いの場『心のふるさと』となる森を皆様と育てていきたいと思います。
また、生物多様性も森の一つの重要な側面です。すでに、蝶やキジ、ツグミなどの生き物たちがこの小さな森を訪れています。
3期中の第2期となる今回の植樹祭は、前回植樹された木々の生育状況を踏まえた大事な植樹となります。また、植えられた木々はおおむね順調に成長していますが、手入れ、保守も必要です。そのためには多くの資金が必要となります。
『鎮守の杜』は、何百年以上循環していく森となり、その間に発生する自然災害から神社と境内を守ってくれます。
先日、同じ岩手県の大船渡市で、大規模な山火事が発生しました。山火事に関するいくつかの論文によると、燃えにくい森林は広葉樹林であるとされています。経済循環が困難な山や住宅地に近い区域の森は、比較的燃えにくい広葉樹林帯を創ることが適していると考えています。大切なことは、自然と人間の活動との持続可能な共生バランスを追求することではないでしょうか。
森づくりは人間の都合だけではなく、自然に寄り添って考えなければなりません。人間も動物も植物も未解明なことはたくさんありますが、「この世に必要のない生き物などいない、そしてそれぞれが過去を今に紡ぎ未来へと歩み、いろんな調和の形を生み出している」ということは確かです。まさしくその一つの形が『鎮守の杜』だと思います。その地域に適した樹種を元に、10年先、50年先、100年先、1000年先のことを考えて選定していきます。
皆様のおかげで、昨年植えた木々は順調に成長しており、植樹時に70cm前後の苗木たちは今年には倍以上の4mくらいまで成長する樹種も出てくると予想しています。しかし、千年の森をつくるには、去年植えた木々のケアや土壌改良、モニタリングなど様々な育樹も必要になってきます。
過去の歴史、先人たちの想いを受け、今と向き合い、未来に、次世代に、地球に、自信を持って渡せる『鎮守の杜』を皆様と一緒に創っていきたいと切に願っております。重ね重ねにはなりますが、今年も皆様からの温かく・心強いご声援とご支援をいただければ幸いです。


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