日本ランキング1位になったプレイヤーが語るデフテニスの魅力「スポーツを通じて世界中の人とつながれる」

親松 直人

親松 直人

2024.07.15
column_top_oyamatsunaoto

デフテニスとは、聴覚障がいを持つ人がプレーするテニスのことです。そのデフテニスで日本ランキング1位にまで上り詰めたことがある親松直人(おやまつなおと)さん。どのようにデフテニスに出会ったのか、どうやって技術を磨いてきたのか、これまでの経緯を伺いました。

「補聴器なしでテニスをする」デフテニスとの出会い

見出し1画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_親松直人さん_デフテニス

僕が初めてデフテニスという言葉を聞いたのは、大学生のときです。先輩がデフテニスに関わるイベントに参加しており、僕に「こういうスポーツがあるよ」と教えてくれました。そのときに、初めてデフテニスというスポーツを知ったんです。

大学時代は、部活動などで忙しく、デフテニスに本格的に参加することはありませんでした。でも、卒業後に「デフテニスやってみようかな」と思い、それがきっかけで、僕のデフテニス人生がスタートします。

ほとんど知識もないままスタートしたので、実践でたくさんのことを学びました。そもそも、「テニスを補聴器なしでプレイする」という発想自体が、僕にはなかったです。

これまで補聴器を付けて情報を集めるという状況で生きてきたので、僕にとって大きな衝撃でした。最初は、「これが本当にテニスになるのか?」と不安もありました。

音がない状況で行うデフテニスは、打球が当たったときの感触だけでプレイをしなくてはなりません。最初は大変でしたが、練習を重ねるうちに補聴器を外してテニスをするという環境にも、少しずつ慣れていきました。

そこから努力を重ねて、デフテニスの日本代表に選ばれました。たくさんの人にサポートしていただいたおかげで、日本ランキング1位にまで上り詰めることができました。

デフテニスを通して、世界中の人と友達になれる

見出し2画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_親松直人さん_デフリンピック

僕は今、「デフテニスを多くの人に知ってほしい」と思い、さまざまな活動をしています。そのきっかけとなったのが、2017年にトルコで開催されたデフリンピックに出場したことです。これは、耳が聞こえない人だけが参加する大会で、世界中からさまざまなスポーツ団体が集まります。

「世界中には、耳が聞こえない人たちがこんなにもたくさんいるんだ」ということを、そこで初めて知りました。そして、聞こえない者同士で、お互いの競技を高め合ったり、励ましあっている姿を目の当たりにしました。

そこから発展して友達ができたり、つながりが増えたり、どんどん交流が広がっていく光景に感動しましたね。「スポーツを通じて、世界中の人と友達になれるんだ」というのが、本当に衝撃的でした。

この経験から、僕はもっと多くの人にデフテニスやデフスポーツの素晴らしさを知ってもらいたいと思うようになりました。

そうすれば、デフテニスを始めたいと思っている子どもたちが増えて、有望な選手が生まれるかもしれません。デフテニスやデフスポーツを知るきっかけは人それぞれですが、幼稚園や小学校の頃から知ることができれば、子どもたちにも違った未来が開けるんじゃないかと僕は思っています。

デフスポーツの魅力のひとつは、手話を通じてたくさんの人々とつながれることです。通常のテニスや他のスポーツでは、言葉でコミュニケーションを取りますが、デフスポーツでは手話がその役割を果たします。手話を見ているだけでも、自分の知識が増えますし、視野が広がりますね。

デフリンピックをオリンピックと同じ時期に開催したい

見出し3画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_親松直人さん_デフテニス選手

現在、デフリンピックはオリンピックやパラリンピックの翌年に行われています。でも、僕はこれらの大会を同じタイミングで開催することに大きな意味があると考えています。

そのためには、デフリンピックの認知度を高める必要がありますし、デフテニスだけでなく、他のデフスポーツの普及も重要です。そこで講演会やイベントなどで自分の顔を見せ、デフスポーツの魅力を伝えながら、認知を広げていきたいと思っています。

他のデフテニス選手やデフスポーツ選手たちも、素晴らしい方々です。そういった選手たちが、実際に競技を教える機会などをつくって、交流の輪も広げていけたらと考えています。

また今年の1月には、全豪オープンのデフテニス部門で、日本の女子選手が1位から4位まで独占しました。今はとくに女子選手たちが強いので、彼女たちの活躍も知ってもらえたらうれしいですね。

これからもデフスポーツの素晴らしさや魅力を、たくさんの人に知っていただけるために、頑張っていきたいと思います。