大学に眠る“お宝”を掘り起こす!?特許技術と企業をつなぐ新しい取り組みとは

長山 良夢

長山 良夢

2024.12.26
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板金屋を引き継いだのをきっかけに、人と人をつなぐ活動をスタートさせた長山良夢(ながやまらむ)さん。経営者の悩みをヒアリングし、つながりを生かして解決へ導く独自のスタイルを築きました。現在は千葉大学と協力し、大学に眠る特許を企業と結びつけ、社会実装を推進しています。その柔軟な発想と行動力で人と人をつなげる長山さんに、現在に至るまでのお話しを伺いました。

人と人をつなぐ「架け橋」になる

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私が起業したのは、2年前に主人を亡くしたことがきっかけで、板金屋を引き継いだことからです。一時期は気持ちが塞ぎ込んでしまったのですが、昨年の5月頃から気持ちを切り替え、板金屋の名刺1枚を持って都内に出向くようになりました。その中で、私の元に集まった人々の悩みや要望を聞くことが、自分にできることの第一歩だと気づきました。

最初は社長さんの愚痴を聞いたり、簡単なカウンセリングのような形で活動をスタートしました。そうした活動が広がる中で、周りの方々が「とりあえずラムちゃんに相談してみて」と、多くの方を紹介してくださいました。さまざまな交流会に参加する機会をいただき、約半年間で、1,200人ほどと名刺交換をしました。

いろいろな社長さんの情報が私のところに集まってくるので、それを生かして人と人をつなぐ仕事をしています。「皆さんをおつなぎします」と言って、お話を伺いながら、顧問のような形でサポートをしています。

ただ、それだけでは本業として成り立たないので、前職のお客さんの紹介で、千葉大学の予防医学センターというところで、月に4回ほど働かせていただく機会がありました。

大学の方からは、私が普段どんなことをしているのか興味を持っていただき、「社長さん同士をつなぐ仕事をしています」とお話ししたところ、「その社長さんたちを千葉大学にも連れてこられないか」とお声がけいただくようになりました。

大学には眠っている特許がたくさんあり、それが社会実装されないままになっているようで、この流れで、中小企業の社長さん方と大学の眠れる特許技術をつなぐ仕事へと発展したのです。

大学の教授たちは外部での業務に携わることが難しく、営業活動やその先の進行管理が大学の外で行われる業務になると制約が多いとのことでした。そうした背景から、大学の外で動く役割を私に任せたいという話をいただき、今回の会社を設立することになったのです。

大学に眠る特許を社会実装するために

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弊社はすでに大学と契約を結んでおり、仲介として打ち合わせやサポートをさせていただいています。「弊社を通して特許を使ってください」という形ではなく、大学と企業が直接やり取りを行う仕組みになっています。その際、大学のブランド価値を企業のブランディングに活用していただければと考えています。

千葉大学だけでも約800もの特許があり、農業、工業、福祉、介護、環境、ドローン技術など、さまざまな分野で社会に実装されることなく眠っています。それらが活用されていない現状は非常にもったいなく感じています。

たとえば、最近話題に上がったのは「見えないものを見える化する技術」です。果物を切らずに中身の状態を把握したり、光が届かない部分でも画像化できる技術があります。他にも、ストレスを検知する技術や、廃棄物を最小限に抑え、再資源化する技術など、社会に大きく貢献できる特許が多数あります。

特許内容は非常に専門的で、企業側が活用方法をイメージしづらいことが大きな課題です。私たちの役割は、このような未活用の特許を企業とつなぎ、社会実装につなげることです。眠っている技術を生かし、企業と大学双方にとって価値ある形にするため、これからも活動を続けていきます。

特許技術を「地産地消」する取り組み

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今後のビジョンは、全国の国立大学が持つ特許技術を「地産地消」の形で社会に広めることです。その地域の大学で生まれた特許は、その地域の産業や特性に根ざしたものが多いです。

たとえば、千葉ならお米や果物の栽培に関わる特許が多いですが、他の地域の大学も同様に、地元の産業に関連する特許がたくさん眠っています。こうした特許を地域の企業が活用すれば、新たな雇用が生まれ、人が集まり、地域活性化や地方創生につながると考えています。

国立大学は全国にあり、国費で運営されています。教授も多く、千葉大学だけでも約1,300人が在籍していて、特許はこれからも生まれ続けます。特許の更新も大学が負担しているため、特許が衰退することはありません。そこで、企業にこれらの特許を活用してもらい、売り上げ向上の一助となるような取り組みを進めています。

大学の特許は社会貢献性が高いものが多く、世の中をより良くする可能性を秘めています。こうした技術を「お宝」と考え、全国の中小企業の社長さんたちに「お宝探し」に来てほしいと思っています。

この取り組みによって、企業が盛り上がり、大学に資金が入る仕組みができれば、新たな研究が進み、さらに新しい技術が生まれます。そして、その技術を企業が活用し、売り上げを立てる。この循環が生まれれば、全体が発展していくと確信しています。


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