日本の伝統文化を守るプロデューサーが神社の復興に懸ける思い

峯山 政宏

峯山 政宏

2024.05.01
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峯山政宏(みねやままさひろ)さんは、大学卒業後にシンガポールへ渡航しました。海外で10年以上勤務した後に帰国し、自身の体験をもとにした本を出版。その後、日本の伝統文化を復興するクラウドファンディングプロデューサーとして日本に大きく貢献しています。現在は、神社の復興に向けて精力的に活動する峯山さんに、海外に行った経緯や今後の展望を伺いました。

「強い人間になる」と決めた大学時代

見出し1画像_嶋村吉洋社長が主催するワクセルのコラム_ 峯山さん

私が現在に至るまでの経緯を遡ると、北海道大学に進学して1週間で講座に通う気力がなくなったところから始まります。大学を辞めようとまでは思いませんでしたが、自分の居場所は大学の図書館になりました。数多くの本を読むなかで出会ったのが、長沼伸一郎著書の『現代経済学の直観的方法』です。

難解な数式をわかりやすく図解した本で、わずか数ページを読んだだけで、大学の講義を受ける必要性を疑問に感じるほどの衝撃を受けました。本の中では、「資本主義経済が数学のシステム上破綻する」と記載があり、戦争や飢饉、病原菌による世界の滅亡を示唆していました。

著者である長沼さんに会うため、私は北海道から東京まで足を運びました。長沼さんの考えを知るうちに、世界が大変なことになる状況のなかで単に就職や出世を目指すのではなく、世の中の根本的な問題にどう向き合うべきか、自分の役割は何なのかを真剣に考える必要性を感じました。

ある意味、夢が無くなった状態ではありましたが、「もっと強くなる必要がある」という思いから、当時の自分が考えていた人類最強の存在である、陸軍中野学校の軍人を見習うことにしたのです。

陸軍中野学校はいわゆるスパイ養成所であり、潜入先の国で生き延びるために、3つ以上の職と2カ国語以上の言語を習得していました。先の見えない世の中で生き抜くために、強い人間になることを決意し、大学時代に私はその人物像を描いたのです。

10年以上の海外生活をもとに本を執筆

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出世を目指す一般的なキャリアパスに価値を見出せなくなり、私は就職活動を行わない選択をしました。しかしご縁があって、シンガポールに事業を展開する方に声をかけていただき、現地での職を得ることになりました。日本が困難な状況に陥った際にも、海外から支援できる存在になろうと決意し、渡航を決めたのです。

最初は英語を話せず不安はありましたが、住んでみると居心地の良さを感じました。アジア、アメリカ、ヨーロッパからの多様な人々が共生するこの国では、さまざまな文化を受け入れる柔軟性があり、多様な宗教・言語が混じっているので閉塞感はありません。シンガポール以外には、北マリアナ連邦諸島やアラブ首長国連邦にも住んでいたことがあります。

海外での主な仕事は商品のプロデュースで、自分が関わった商品が何億円もの価値を生み出す経験をしました。10年以上の海外経験を経て、日本のある企業から役員のポジションをオファーされて日本に帰国しました。

帰国後、これまでの経験を友人に話したところ、「今まで聞いた話で一番面白い!」と反応があったので、体験談をもとに本を書くことにしました。不幸な経験もありましたが、心配されるよりも興味深いと思われることの方が多いのだと実感しています。

日本の根幹を支える神社を盛り上げる

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私が仕事で大切にしているのは、表面的な課題ではなく本質に目を向けることです。何かを売り出すときには、アピールするポイントを外さないことが大事だと考えています。本質をきちんと捉えて、できるだけわかりやすく伝えることで、多くの人々の興味を引き付けることができます。当時はウェブデザインスクールのキャンペーンなど、教育系のコンテンツに多く関わっていました。

一方で、モノを売ることには永続性がなく、日本のために本質的な取り組みをしたいと考えるようになりました。そして行き着いたのが、「神社の復興」でした。海外で長く過ごした経験からこそ、日本の文化の深さと歴史の長さに改めて愛着を感じたのです。地域の活性化を考えるなかで、伝統や文化を守ることの重要性を感じ、最終的には古くからある神社の復興が必要不可欠だと結論付けました。

日本の生命線とも言える神社ですが、20年後には4割から5割が消失すると言われています。これは、1人の神職が複数の神社を管理しており、人手不足と資金不足に陥っているためです。私は、神社のシステムそのものを変革する必要性を感じ、クラウドファンディングを通じて神社を支援する取り組みを始めました。

私はビジネスとして取り組むよりも、日本の根幹を支える課題の解決に強いモチベーションを持っています。現在は、日本の伝統を存続させるためのシステム作りに専念しています。

日本人は、震災になっても皆で助け合ったり、励まし合うことができる素晴らしい国民性があります。地域の重要文化財である神社が無くなってしまうのは、二度と取り戻すことのできない価値が失われてしまうのです。

地元の人たちは気づいていないかもしれませんが、神社は観光資源としても大切ですし、何より今後生まれてくる次世代の子共にとって重要な財産になります。神社の素晴らしさを多くの人々に知ってもらい、既にあるものを生かすことで、地域の活性化につなげていくことができると確信しています。