「通わせない整体院」をコンセプトに持つ理学療法士が推進する予防医療の取り組み
北嶋秀悟(きたじましゅうご)さんは、理学療法士、出張整体師、そして栄養アドバイザーとして活躍し、医療職の方向けに予防や臨床知識の情報発信も行っています。「通わせない整体院」をコンセプトに、運動と栄養を組み合わせた予防分野での独立を目指しています。予防医療や健康増進の分野で積極的に活動する北嶋さんに、現在の活動の原点や今後のビジョンについて伺いました。
理学療法士の理想と現実に思い悩む日々
僕は理学療法士の国家資格を持っており、デイサービスの会社に務めながら、個人事業主として栄養指導の事業と出張専門事業に携わっています。月曜日から金曜日は正社員として働いていますが、平日が終わった後や土日を使って個人の方を対象に事業を行っています。
小中高でサッカーをやっていたのですが、高校で怪我をしたときにお世話になった理学療法士の方との出会いが、理学療法士を目指すきっかけです。リハビリやテーピングの方法、トレーニング方法を教わり、その方に憧れて理学療法士の道を志すことにしました。
地元の専門学校で勉強し、新卒で整形外科クリニックに勤めました。しかし、労働環境が整っていたとは言えず、自分の意見も言えずに働く毎日でした。結局、1年半で退職したのですが、他の職場も同じような環境だと勝手に思い込んでしまい、再就職ができずに4週間フリーターをしていました。
その間、考える時間がたくさんあったので、理学療法士とIT系の事業で何か面白いことができないかと思い始めました。動画編集やプログラミングスキルを独学で学びながら小遣い稼ぎをし、プログラミング会社の就職面接も受けることにしました。
最終面接で「本当にここでいいですか?」と聞かれたとき、ふと我に返り、自分が本当にやりたかったことを思い出しました。独立して治療院を持つ目標を再確認し、その会社は辞退させていただきました。
その後、秋田にある施設で10ヶ月ほど勤めたのですが、先輩から「一緒に横浜で働かないか」と誘われ、翌日に退職届を提出しました。先輩が以前お世話になっていた経営者が横浜にいたため、2人とも横浜に引っ越すことになりました。
医療系の職種に就いたばかりの新人を対象に情報を発信
今はインスタグラムで、臨床知識について情報発信をしています。これは、医療系の職種に就いたばかりの新人さんを対象にしています。始めようと思ったのは、国家試験で勉強してきたことと、現場での医療知識の内容が異なるため、新卒で働き始める理学療法士が最初につまずくことが多いと感じていたからです。
自分自身も苦労してきたので、学生さんや働き始めたばかりの方々の役に立つような情報を発信することを心がけています。今後は臨床知識だけでなく、栄養や運動、予防知識についても情報発信していきたいと考えています。
整体の施術は通常、問題が発生した後に行われますが、予防には3つの種類があります。
<1次予防>
病気や怪我を未然に防ぐための予防です。たとえば、ワクチン接種などがこれに該当します。
<2次予防>
早期発見や検査による予防です。人間ドックや定期健康診断が代表的な例です。
<3次予防>
病気や怪我をした後の再発防止を目的とした予防です。たとえば、ぎっくり腰を治療した後に、再発を防ぐための指導を行うことが含まれます。
僕はこれら3つの予防すべてを考慮し、施術を行っています。1次予防や2次予防に関しては、栄養指導や運動指導を通じてサポートしています。「治療院に通って欲しくない」というコンセプトで、自分で予防できる方法を身に付けてもらうことを重視しています。
僕が指導しているお客様は、難病を抱えている方から、肩こりや頭痛に悩む方、パフォーマンスを向上させたいアスリート、子育て中のママさんなど幅広い層にわたります。健康上の悩みは大小さまざまですが、予防の必要性を伝え、適切なサポートを提供しています。
予防意識を高めて健康寿命を延ばしていく
一説では、日本の栄養学はアメリカに比べて30年遅れていると言われています。日本では医療保険が充実しているため、病気になってから病院に行くという考え方が一般的です。一方、海外では医療費の自己負担が大きいため、予防意識が非常に高いのです。
日本は長寿国として知られていますが、長生きすることが必ずしも幸せとは限りません。平均寿命と健康寿命を一致させるためには、予防が重要だと感じています。現在、国家予算の大部分は医療費や介護費に使われています。予防を推進することで、健康な高齢者が増え、生産性や仕事ができる仕組みが整えば、国にも貢献できると思っています。
僕は予防に特化した整体院を開業し、予防の重要性や平均寿命と健康寿命の差を縮めることを目指しています。多くの先輩や経営者から幅広い考え方を学んできた経験や、自分自身の行動を通じて「何でもできる」というメッセージを伝えていきたいです。若い世代が率先して予防の考え方を広め、民間からこの流れを作り出すことができれば、日本はもっと良い方向に進んで行くと思います。